本記事では、2016/9/28発売の米津玄師の新曲「LOSER」のコード譜と、音楽的な解説、および楽曲を聴いた感想を記していきます。
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「LOSER」の概要
米津玄師(よねづけんし)は、元々「ハチ」という名義でVOCALOID楽曲を多く作曲して活躍してきましたが、2012年より本名の米津玄師で自身の歌唱によるCDを発売。2015年に出したシングル2枚のシングルは、それぞれオリコン3位と4位を記録するなど、VOCALOIDに詳しくない層にも幅広く受け入られ、「アイネクライネ」等の楽曲はカラオケでよく歌われる大人気の楽曲となっています。
今作は昨年の「アンビリーバーズ」に続く5作目のシングルで、これまでの楽曲の例にもれず、歌い回しもギターの演奏も、非常に細かい高度な作品となっております。
「LOSER」のコード進行
●イントロ
|F#m|A|Bm|C#|F#m|A|Bm|C#|
|(N.C.)|(N.C.)|
●Aメロ
|F#m|A|Bm|C#|F#m|A|Bm|C#|
●Bメロ
|D E|F#m A|Bm C#|F#m|
|D E|F#m A|Bm|C#|
●サビ
|D#m B|C# F#|D#m B|C# F#|
|D#m B|C# F#|D#m B|C# F#|
●間奏1
|F#m|A|Bm|C#|
※Aメロ繰り返し
●2コーラス固有の部分
|F#m|A|Bm|C#|F#m|A|Bm|C#|
|F#m|A|Bm|C#|F#m|A|Bm|C#|
※Bメロ、サビ繰り返し
●Cメロ
|D#m B|F# C#|D#m B|F# C#|
|D#m B|F# C#|D#m B|F# C#|
|B C#|D#m F#|B C#|D#m F#|
|B C#|D#m F#|B|C#|
※サビ繰り返し
●ラスサビ後のメロディー
|D#m B|C# F#|D#m B|C# F#|
|D#m B|C# F#|D#m B|C# F#|
●後奏
|F#m|A|Bm|C#|(N.C.)|(N.C.)|
※2016/10/10 サビの小節の区切り位置が間違っていたので修正しました。コード自体に修正はありません。
イントロ
イントロではストリングの部分が数秒入り、突然音程が急降下するような演出の後、エレキによる伴奏が入ります。ストリングの部分(およびそのあとの音程急降下の部分)はコードと調性の判断が難しかったので、コード表記はエレキの部分からになります。
コードはⅥm→Ⅰ→Ⅱm→Ⅲと進むパターンで、ロック系のかっこいいイメージの楽曲で多く使われるコード進行です。キー(調)はF#マイナーで、楽譜で書けば#が3つある調性となります。
Aメロ
Aメロのコード進行はイントロと同じですが、ディストーションギターの音はいったん止み、シンセ系のベースと、ミュート系のギターの音のみでヴォーカルを強調する構成になります。
ボーカルは、同時に1オクターブ下のユニゾンが入って特徴的な響きを出しています。
メロディーが非常に細かいため、この曲を歌いこなすのはもちろん、単に覚えるだけでも大変そうですね。
Bメロ
Aメロに引き続き、伴奏は音数が少なく、ヴォーカルが強調される部分です。コード進行はⅣ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅰというパターンに変わります。この進行も非常に多くの楽曲で使われているパターンです。4小節目のⅠ(A)は、曲によってはⅢ(C#)やⅤ(E)が使わていることもあり、どれを使うかは作曲者の好みといってもいいと思います。
Bメロのラストでは「ダン・ダン・ダダ」というリズムが強調されており、この先サビに入る箇所ではこのリズムが使われています。
サビ
サビではD#マイナー(E♭マイナー)の調に転調します。この転調は、直前のC#というコードが、「F#マイナー調におけるⅢ」と「D#マイナー調におけるⅤ」という2つの役割を持つことから、双方のキーの架け橋的な存在となり、スムーズに調性が移行しています。前後の調は「同主調」の関係(厳密には「同主調の平行調」)で、#が3つ増える転調です。おそらく最近のJ-POPにおける転調の中では一番多く使われているパターンではないかと思います(ラスサビで半音上がる転調は除く)。
コード進行はⅥm→Ⅳの「小室進行」というパターンで、非常に多くの楽曲に使われる定番コードです。前作の「アンビリーバーズ」のイントロもこの進行でした。
途中2回ほど「fu!」という掛け声が入っており、いい味を出しています。ヴォーカルの最高音は「ラ#」。かなり高音ですし、譜割りも非常に細かいため、この曲を歌いこなすのはかなり難しいと思われます。
2コーラス
2コーラスではAメロとBメロの間に、1コーラスでは存在しなかったパートが入ります(コード進行で「2コーラス固有の部分」と表現した部分です)。ここのヴォーカルも相当難しいです。音符がずっと詰まっていて、「どこで息継ぎをすればいいの?」と思われるのではないでしょうか。歌われる方はとにかく頑張ってくださいとしか言いようがありません(笑)。
前半部分は楽器がギターのアルペジオしかなく、コードなしとしても良かったのですが、他の部分から類推できる部分が多いため、コードは全て表記しております。
Cメロ
Cメロは「パ~パッパラッパパパ」というコーラスの後にヴォーカルが続くというパターンが何度か繰り返されます。「パ~パッパラッパパパ」の部分はいずれもメロディーが同じですが、実は前半と後半でコード進行が違います。同じメロディーでもコード進行だけ変えて変化を出す、というのは作曲においては必須テクニックなので覚えておいて損はありません。
ラスサビ~最後
ラスサビの後にもCメロと同じく「パ~パッパラッパパパ」というコーラスとその後に続くヴォーカルのパートがありますが、この部分のコード進行は、Cメロで使われたものとはまた違います(D#m→Bは同じですが、そのあとのC#とF#の順番が違います)。つまり、同じCメロと最後で、同じようなメロディーのところで3種類のコード進行を使い分けているわけです。