本記事では、2016/9/14発売のFlowerのベストアルバム「THIS IS Flower THIS IS BEST」に収録されている楽曲「他の誰かより悲しい恋をしただけ」のコード進行と、音楽的な解説、および簡単な感想を書いていきます。
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「他の誰かより悲しい恋をしただけ」の概要
本曲は、Flowerの3枚組ベストアルバム「THIS IS Flower THIS IS BEST」の3枚目のCDに収録される新曲です。ピアノによる伴奏が印象的で、キャッチーな旋律の中に切なさも感じるFlowerらしい楽曲と言えます。
上に載せている動画は公式チャンネルのものですが、実際に音源に収録されている音楽は、同がの1:50あたりからになります。動画ではCメロの入り口あたりまでとなっていますが、コード採譜はフルコーラスで行います。
「他の誰かより悲しい恋をしただけ」のコード進行
イントロ
イントロは、ピアノでサビと同様のメロディーを奏でた旋律から始まります。あえて最初の数小節だけラジオボイスのように音質を劣化したようなミキシングがされており、徐々に音質がクリアになっていくのが実感できます。
イコライザか何かで、徐々にブースト音域を広げているのでしょうか。細かいところですがどのように行っているのか気になるところです。
コード進行はⅣ→Ⅴ→Ⅲm→Ⅵmの典型的な王道進行です。調(キー)はGメジャー(Eマイナー)であり、本曲のCメロ以外ではこの調となっています。イントロの最後ではⅠ7(G7)という非ダイアトニックなセブンスコードが使われていますが、このコードはトニックにもかかわらず完結感を持たず、「セカンドドミナントモーション」という進行によりⅣ(C)を強く欲する性質があります。
Aメロ
Aメロはピアノ、アコースティックベースと打楽器による伴奏でアレンジされたおとなしい部分です。コード進行では、まず6小節目のⅢ7/Ⅴ#(B7/D#)という非ダイアトニックなコードが切ない印象を出すのに役立っています。
また、最終小節にⅣ#m7-5(C#m7-5)というコードが登場しますが、これはうっかりすると聞き流してしまうほどの一瞬しか鳴っていませんが、何度も繰り返し聞くと、確かに特殊な響きの和音が鳴っているのが確認できるかと思います。Ⅳ#がルート音であるコードは、メジャー、マイナーに関係なく、登場する頻度は非常に少なく、一瞬しか鳴っていないからこそ違和感も少なく、次のコードに自然に遷移しているのかもしれません。
Bメロ
Bメロは王道進行の3小節目がⅢになった、王道進行の変形ともいえるパターンです。また、最後の2小節ではⅦm7-5→Ⅲ7(F#m7-5→B7)という定番の進行が登場します。この進行は、まず、Ⅶm7-5がⅢを強く欲し、更にⅢがⅥmまたはⅣ(本曲の場合は後者)を強く欲するという、2段重ねの強進行と言えます(特に、Ⅶm7-5というコードが登場する場合、ほとんどの楽曲で次にⅢ(7)が来ます)。
単にⅢ7(B)だけ用いるか、Ⅶm7-5を挟むかはどちらが正解というのはありませんが、この場合は直前のコードがBm7であり、もしF#m7-5を使わないとルート音がBであるコードが3小節も続いてしまうため、F#m7-5を挟んで高低差を出すというのは理に適っているような気がします。Ⅲ7(B7)が多く登場する本曲ですが、そのいずれの箇所も、切ない印象を感じることができます。
サビ
|Am|D|Bm7|Em|Am|G/B|C|D|
※1コーラスのみ
|C|Bm7|Am7 D|GM7|G7|
サビは王道進行のコード進行ですが、2小節目が単にⅤではなく、Ⅴ/Ⅳという分数コードであるところが通常の王道進行と異なっています。構成音だけに注目すれば、Ⅴ/ⅣはⅤ7と全く同じなのですが、あえてベース音がⅣにとどまることで、サブドミナントのⅣとドミナントのⅤのどちらの響きも併せ持ったような不思議な響きを感じます。単にC→D7と弾くパターンと、C→D/Cを弾くパターンは、手元に楽器がある方は弾き比べてみてください。
それから、8小節目では3つのコードが登場していますが(Em→Dm7→G)、これは数字でいうとⅥm→Ⅴm7→Ⅰに相当し、特に、2つ目のⅤm7はスケール外の音を含む非ダイアトニックコードです。このコードは、「次にⅠを強く欲する」という性質はドミナント(Ⅴ)と同じなのですが、非ダイアトニックであるため、Ⅴを使うよりも大きなインパクトを感じることができます。このコードが鳴っているのはたった1拍にすぎないのですが、それでも容易に耳コピができたのは、本コードが発する強いインパクトのためだと思います。
サビの後半は、前半とメロディーこそ似ていますが、コード進行はⅡm→Ⅴ→Ⅲm→Ⅵmと、最初のコードのみ異なります。この進行は王道進行と性質は似ているのですが、両者を聴き比べてみれば、その違いを実感できるのではないかと思います(Ⅱm→Ⅴは、そのルート音の数字を取って、ツーファイブと呼ばれることがあります)。
なお、ヴォーカルの最高音は3小節および11小節目に登場する「レ」です。高音領域が長いこと続くので、女性の方にとっては原曲キーで歌うには結構きついかもしれません。
Cメロ~ラスト
※サビ繰り返し
|C|Bm7|Am7 D|GM7|
2コーラスのサビから、間髪入れずにCメロが始まります。この部分は直前のDというコードを架け橋にしてGマイナー調に転調しています。元がGメジャーだったので、同主調への転調(調号が3つ変わる転調)です。E♭→F→Gmという進行は、Gマイナー調におけるⅣ→Ⅴ→Ⅵm進行ということになります。
7小節目のⅦm7(Am7)は普通ならばこの次にはⅢ(D)が来るところですが、ここでB7を入れることで再転調してGメジャーの調に戻しています。Am7は、転調前のⅦm7であると同時に、転調後ではⅡm7として働いているため、大きな違和感がなく転調が成立しているのです。
まとめ
Flowerの「他の誰かより悲しい恋をしただけ」のコード採譜を行いました。Ⅲ7を中心とした非ダイアトニックコードが要所要所に使われ、歌詞もあいまって全体的に切ない印象を与える楽曲だと思いました。王道進行に載ったメロディーもキャッチーで、カラオケでも人気が出そうなナンバーだと思います。