大森靖子「非国民的ヒーロー」のコード進行解析と楽曲の感想


本記事では、2016/10/26発売の大森靖子の楽曲「非国民的ヒーロー」のコード譜と、音楽的な解説、および楽曲を聴いた感想を記していきます。

「非国民的ヒーロー」の概要

本曲「非国民的ヒーロー」は、シンガーソングライター大森靖子の6作目のシングル「POSITIVE STRESS」の、2曲目に収録される楽曲です。当初は9月の発売予定でしたが、諸事情により、発売が延期されました。歌詞は大森本人が担当し、神聖かまってちゃんの「の子」氏が作曲を担当するとともに一部ボーカルでも参加しています。公式によると、歌詞は、「の子を主人公に想定して大森靖子が作詞した」内容とのことです。

「非国民的ヒーロー」のコード進行

●イントロ
|A♭|B♭|Cm|B♭|
|A♭|B♭|E♭|E♭|

●Aメロ
|E♭|B♭|Cm|G|
|A♭|B♭|E♭|B♭|
|E♭|B♭|Cm|G|
|A♭|B♭|E♭|B G7/B|

●Bメロ
|Cm|G|A♭|E♭|
|Cm|G|A♭B♭|G|
|Fm7|B♭|Fm7|B♭|
|Fm7|Fm7|(N.C.)|(N.C.)|

●サビ
|A♭|B♭|Cm|E♭|
|A♭|B♭|E♭|B♭|
|A♭|B♭|Cm|B♭|
|A♭|B♭|E♭|E♭|

●間奏
|Cm|Cm|Cm|Cm|Cm|Cm|Cm|Cm|
|Cm|B♭|Cm|B♭|A♭|B♭|Cm|B♭|
|Cm|B♭|Cm|B♭|A♭|B♭|E♭|(N.C.)|

●Cメロ
|Cm|G|A♭|E♭|
|Cm|G|A♭|B♭|G|
|Fm7|B♭|Fm7|B♭|
|Fm7|Fm7|(N.C.)|(N.C.)|

●ラスサビ
|A♭|B♭|Cm|E♭|
|A♭|B♭|E♭|B♭|
|A♭|B♭|Cm|B♭|
|A♭|B♭|Cm|B♭/D|
|Cm|B♭|Cm|B♭|
|Cm|B♭|A♭|B♭|

●後奏
|Cm|B♭|Cm|B♭|
|Cm|B♭/D|E♭|F G B♭G/B|
|Cm|B♭|Cm|B♭|
|Cm|B♭|A♭|B♭|
|Cm|B♭/D|E♭|F G A♭B♭|
|Cm|B♭/D|E♭|F G A♭B♭|
|(N.C.)|

イントロ

ギターの音以外にも鳴り物やシンセの音をふんだんに使った、楽し気なイントロから楽曲が始まります。本曲のキーはCマイナー(またはE♭)で、楽譜では♭が3つ必要な調です。映像で見る限り、カポを3フレットに付けており、記載したコードよりも3つ下のコード(ハ長調のC,F,Gなど)を弾いているものと思われます。カポ+1でDメジャーのコードを使うのもありでしょう。

コード進行はA♭(Ⅳ)→B♭(Ⅴ)→C(Ⅵ)mとA♭(Ⅳ)→B♭(Ⅴ)→C(Ⅰ)が交互に登場する、短調と長調の中間的なコード進行で、J-POPで多く使われている「王道進行」の仲間と言えます(前者は456進行、後者はSDT進行とも呼ばれます)。大森靖子では、前作の「ピンクメトセラ」がこのコード進行に近いですね(Ⅳ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅴの繰り返し)。

Aメロ~Bメロ

「地球がバグってる」という大変インパクトのあるフレーズからヴォーカルがスタートします。この部分では、E♭(Ⅰ)→B♭(Ⅴ)→C(Ⅵ)mという「カノン進行」が用いられています。4つ目のコードは、通常使われることが多いG(Ⅲ)mではなく、ノンダイアトニックコードのG(Ⅲ)を使用しており、歌詞、コード進行、メロディーともにAメロからインパクトの強い部分が続きます。このG(Ⅲ)はこの後も要所に登場し、楽曲における絶妙なスパイスとして働いています。

AメロからBメロに至る1小節は、本曲のコード耳コピで一番頭を悩ませた部分でした。ベース音はB(シ)っぽいのですが、ハーモニーがかなり特殊な感じがして、何のコードなのか特定するのに時間がかかったのです。

何度も巻き戻して聴いた結果、コード譜ではB→G/Bということにしていますが、もしかしたら、最初からG/Bあるいは、Baugというコードが正解かもしれません。B(Ⅵ♭)やG(Ⅲ)は、それ単独ではそれほど珍しいコードではないのですが、転調するわけでもないのに、この2つのコードが並ぶのは珍しいと思われ、その珍しさゆえに、コードの特定が難しかったのかなぁと思います。

続いて、サビの手前の2小節ですが、この部分はギターの音がいったん止んで、打楽器と電子音のみになります。ハーモニー感をぼかして、あえて奇妙な印象を与えるようなアレンジになっているため、コードを特定するのはほぼ不可能と思いますが、メロディーから無理やりコードを割り当てるとすれば、B♭→B♭か、B♭→Gもしくは、Fm→Gmといったところでしょうか(いずれもどこかしら違和感があり、ここはコード無しの方がよいのかなあと言った感じです)。

サビ

イントロとよく似たコード進行で、大変ノリの良いサビです。の子と大森の「ああ」の掛け合いがとてもキャッチーですね。歌詞についても、Aメロの最初の数フレーズを聴いただけだと、ぶっとんだ歌詞かと思われそうですが、サビまで聴くと、切ない中にも前向きな感情もある、色々深読みしてしまう内容だと思いました。

なお、サビのコード進行は、ノンダイアトニックなものは一切なく、ごくごくオーソドックスなコードばかりが使われています。本曲におけるヴォーカルの最高音は(シャウト等を除いたまともなメロディーでは)「♪ああ」等の部分で使用されている「ド」、最低音は「♪愛する気持ちだけでは」の「は」の音で使用されているオク下の「シ♭」となっております。

Cメロ~ラスト

Cメロは、ギターソロのみのパートで、メロディーもコードもほぼBメロと同じです。最初の「♪だけどね」という部分(そのあとの「二度とね」の部分も)が独特の声の出し方をしており、思わず巻き戻して何度も再生してしまいました(笑)。

後奏については、公式動画で歌詞のテロップが消えた部分からを「後奏」としています。この部分は、ベースラインが激しく動くため、コード進行はややあいまいな部分があり、特に、1小節内に4つのコードを記載したいくつかの部分は、ちょっと耳コピに自信がない部分です。

本曲は、切ないながらも前向きに生きていこうとする歌詞を、典型的なコード進行とノリの良いアレンジをバックに歌う、所謂「売れセン」の楽曲の特徴を持っています。しかし、それだけではなく、歌詞・アレンジ・歌い回しなどに時折登場する、独特でインパクトのある部分が、大森靖子と、の子氏の共作と呼ぶにふさわしい楽曲だと思いました。

それから、ものすごく細かいのですが、タイトルの非国民的ヒーローは、「非」+「国民的ヒーロー」なのか、それとも、「非国民的」+「ヒーロー」なのか、どちらなんだろうという、極めてどうでもいいことを考えてしまいました(コード進行と全然関係ないですが…)。

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