瀧川ありさ 「色褪せない瞳」のコード進行解析と楽曲の感想


本記事では2016年9月7日発売の、瀧川ありさのシングル「色褪せない瞳」のコード進行を耳コピにより解析し、聴き取った限りのコード譜を掲載します。また、楽曲の音楽的な観点からの解説や、簡単な感想も書いていきます。

「色褪せない瞳 」の概要


本作は女性シンガーソングライター・瀧川ありさの5枚目のシングルで、アニメ「七つの大罪  聖戦の予兆」のエンディングテーマとなっています。彼女のデビュー曲の「Season」も「七つの大罪」のエンディングであり、今作は同アニメ作品の2作目のタイアップという事になります。

ギターを演奏しながら、透き通るようなヴォーカルで歌い上げる今回の彼女の新曲は、素直なメロディーとハーモニーで、非常に安心する聴き心地を与えてくれます。

上の動画は公式チャンネルによってYoutubeにアップされたもので、大ラスのサビを除いた部分が視聴できますので、本記事の耳コピもその範囲内で行っていきます。

「色褪せない瞳」のコード進行

イントロ

|D♭|E♭|Fm|Fm|D♭|E♭|Fm|Fm|
|D♭|E♭|Fm|Fm|D♭|E♭|Fm|Fm|

イントロはⅣ→Ⅴ→Ⅵmと進む、いわゆる456進行(当ブログでは「王道進行」の1種とみなしています)。キーはFマイナー(またはA♭メジャー)ですが、ギターのコードの押さえ方は、PVを見る限りでは、C→D→Emのコードを押さえているように見えます。おそらく、全部の弦を半音上にチューニングして、Eマイナーキーのコード進行を弾いているのでしょうか。PVではカポタストは使っていないように見えますが、実際にギターで演奏される場合は、通常通りのチューニングをして、カポを1フレットにつけてもよいでしょう。カポも半音チューニングもなしだと、ギターで演奏するのには難しいコードだらけになりそうです。

イントロではこの456進行が4回ほど続きます。最初の1回はストリングスとアコギの音色のみですが、2回目でベースがストリングスとユニゾンをし、3回目、4回目はドラムやもう1つのギターの音色なども入って本格的な演奏が始まります。そのため、徐々に盛り上がっていくような印象を受けます。

Aメロ

|Fm7|E♭|Cm|D♭|D♭|Cm Fm|D♭|E♭|
|Fm7|E♭|Cm|D♭|D♭|Cm Fm|D♭E♭|A♭|

Aメロの前半は、アコギはいったんお休みで、ベース、ストリングスの低音、ピアノによってハーモニーが感じられる部分となります。後半に入るとアコギが復活し、ドラムもノリの良いリズムを響かせるようになります。

コード進行はⅥm→Ⅴの進行で、マイナートニックから始まる進行としては典型的なものです。特殊なコードは1つもなく、極めて素直なコード進行が続いています。多くの楽曲がそうであるように、Aメロは特別なことはせずに、他の部分に比べてあえて目立たないような構成になっているのだと思います。

Bメロ

|D♭|D♭m|Cm|Fm|B♭m|Cm|D♭|E♭|Csus4 C|

ここの2小節目に、本曲で初めて非ダイアトニックなコードである、D♭m(Ⅳm)が登場します。「サブドミナントマイナー」とも言われ、多くの場合はサブドミナントⅣでも問題がないところで、あえて変化を出すために使われます。

この場合はサブドミナントⅣの直後にⅣmがきており、これらを連続で聴くと、コードの両端の音は変わらず真ん中の音だけが半音下がるため、「同じ高さだけどメジャーからマイナーになった」ということが実感できる進行となります。

非ダイアトニックコードが使われている影響で、ボーカルのメロディーにおいても、臨時調号を使わないと表せない音(Ⅵ♭)が登場するため、Bメロの2小節目はかなりインパクトの強い箇所となっているように思います。

最後のC(Ⅲ)もⅥ♭の音を含む非ダイアトニックコードです。このコードがあることで、サビの最初のコードが更に強調される働きがあります。

サビ

|D♭|E♭|Cm|Fm|D♭|E♭|A♭|Gm7-5 C|
|D♭|E♭|C|Fm|D♭|E♭|Fsus4|F|

サビのコード進行はⅣ→Ⅴ→Ⅲm→Ⅵmと進む、典型的な「王道進行」です。「王道」という名前に恥じないほど、本当に頻繁に耳にするコード進行と言えます。デビュー曲の「Season」もこの進行でした。5小節目から7小節目のⅣ→Ⅴ→Ⅰ(SDT進行)や、そのあとのⅦm7-5→Ⅲという進行も非常によく使われます。

サビ後半は、前半のⅢmを非ダイアトニックなⅢに変えた、王道進行の変形で、Ⅲの部分が非常に深く切ない感情を醸し出すため、これも多くの楽曲で使われます。Ⅲ→Ⅵmは、コード理論でいうところの「マイナーコードへのドミナントモーション」ですね。非常に強い解決感がある進行で、マイナーキーの楽曲に限らず使われています。

最後は、キーがFmの楽曲にも関わらず、Fメジャー(Ⅵ)というコードで終わっています。ずっと切ないコード進行が続いてきましたが、最後の最後で明るく晴れやかにな気持ちになるといったイメージです。ここがもしFmのままだと、ずっと切ない印象のまま次の小節に行くことになります。細かいところではありますが、ここがFmかFかで、楽曲の表情に与える違いは大きいと思います(どちらが正解、不正解かということはありません)。Fが最終コードになっているため、転調をしていると思われるかもしれませんが、すぐあとのAメロがFmで始まるため、あくまで一時的な特殊コードとみるべきでしょう(実際にそのままFメジャーのキーに転調する楽曲もあります)。

なお、ヴォーカルの最高音はド(C)であり、サビとCメロに何か所かずつ登場します。

2コーラス~Cメロ

※2コーラスAメロ、Bメロ、サビは1コーラスと同じ。
(ただし、AメロとBメロの間に|A♭|の1小節挿入。)
※間奏
|D♭|D♭|E♭|E♭|
※Cメロ
|D♭|E♭7|A♭|A♭|D♭|E♭7|B♭m7|Cm|D♭|E♭|C|C|

2コーラスのコード進行は、AメロとBメロの間に1小節挿入されていることを除けば1コーラスとほぼ同じと思われます。しかし、アレンジはところどころ異なっており、最も顕著に異なると感じたのは、サビへの入り方です。

1コーラスでは、3・3・2のリズムにアクセントを置いて、Ⅲsus4→Ⅲというコードを強調するような伴奏でしたが、2コーラスでは、各楽器が音量を徐々に上げながら8ビートを奏でるアレンジになっています。どちらもサビを強調するという意図は同じですが、リズムとしては全く異なり、あえて1コーラスと2コーラスで変化を付けていることがわかります。

僕が曲を作る時は、手抜きで1コーラスと2コーラスを同じアレンジにしてしまうことも多いので、このようにしっかりと別のアレンジで作り込んでいる曲を聴くと、さすがプロの仕事だなと思います。

Cメロは、これまでも出てきたようにD♭→E♭という進行で始まりますが、E♭の部分では、同時にD♭の音もかなり強く聞こえるため、E♭7と判定しました(もしかしたらE♭onD♭かもしれませんが、構成音は同じです)。同じⅣ→Ⅴ進行でも、イントロやサビの出だしとは、若干印象が異なって聞こえるはずです。

それから、Cメロの7小節目からはⅡm→Ⅲm→Ⅳ→Ⅴと、ベース音がⅡ~Ⅴまで1つずつ上がり、徐々に気分が高まってくるような感じを与える進行になっています。このコード進行は、この曲のように、盛り上がる箇所(主にサビ)の直前に使われることが多い印象があります。

Cメロの後はサビが登場すると思われますが、試聴動画はこの部分で終了しております。

まとめ

瀧川ありさの「色褪せない瞳」のコード進行を耳コピにより採譜しました。素直なコード進行が多く、採譜はそれほど苦労しませんでした。カポ等による半音上げを行えば、ギターの演奏も簡単な部類に入るコードばかりだと思います。

たまに登場する非ダイアトニックなコードが与える強いインパクトも素晴らしいです。また、コードだけでなく、ヴォーカル、アコギ、ピアノ、ストリングスなどの音色も聴き心地が抜群で、何度でも聴いていたいと思う楽曲でした。

現時点では一般的な知名度はそれほど大きくない彼女ですが、この曲以外でも素晴らしい楽曲をたくさん出していますので、もっと多くの人に聴いてもらいたいなと思いました。

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