SMAPのシングル曲で最も良く使われたコード進行は?


smapの楽譜の例

はじめに

これまで、AKB48、B’z、Mr.Childrenなど、日本の様々なビッグアーティストの楽曲で、よく使われているコード進行を解析してきましたが、今回はSMAPのシングルの楽曲で使われているコード進行を分類し、どのようなパターンがよく使われているかどうかを解析していきたいと思います。

SMAPは91年にデビューしたジャニーズのグループで、デビュー当初はコミックソングのような楽曲が多く、それほど名前が浸透していたわけではありませんが、90年代後半くらいから人気を集め、出す曲出す曲全てがヒットし、また各メンバーもドラマやバラエティで主役、司会を務めるなど、音楽の分野に限らず芸能界全体を通しても日本を代表するグループの1つとなりました。…等と書いているまさにその時、解散の報道が…(記事を書いているのは8月13日時点です)。タイミングよく狙って記事を書いているわけでなく、次はSMAPで記事を書こうと決めていたため本当に偶然で驚いています。とはいえ、当記事の要点はあくまで音楽理論にもとづいて楽曲を分析していくことにあるので、あくまで音楽的な内容に専念したいと思います。

SMAPのヒットには、音楽以外にも様々な要因が存在するとは思いますが、当ブログでは音楽理論をメインテーマに掲げているため、SMAPの楽曲を音楽理論、とりわけコード進行の観点から解析してみたいと思います。彼らの楽曲には、どのようなコード進行のパターンが頻繁に使われているのでしょうか?また、それは一般によく使われたパターン(カノン進行、王道進行、小室進行等)と一致するのでしょうか?コード進行・音楽理論に興味ある方はもちろん、そうでない方でも、単なる記号の羅列ではなく、それぞれの進行がどういった感覚を持つのかも併記することで、楽しく読んでいただけるように工夫しておりますので、ぜひ読んでいただければ幸いです。

他のアーティストで集計した結果は、こちらのサイトマップ内の「コード進行」のカテゴリの中のリンクからご覧いただけます。

集計対象曲および諸注意

集計する曲は、2016年までにSMAP名義で発売されたシングルのうち、1曲目に収録された全55曲になります。著名な曲であってもアルバム曲は除外しています。これは、アルバム曲を恣意的に選ぶことにより、結果が偏るのを防ぐためです。

コード進行の分類は、僕のブログで行っているオリジナルの方法である「サビの最初の2つのコードのみで、曲を分類する方法」により行っています。詳細は下記の記事で書いています。

ヒット曲のコード進行のパターンを、サビの最初の2つのみで分類
はじめに 音楽のコード進行は、曲の構成を決めるにあたって非常に重要で、メロディーが同じでもコード進行によって全く違った雰囲気の曲になり...

最初の2コードで分類する方法をとるので、他のサイトとパターンの判定が異なることがありえます。また、サビの後半と前半で異なるパターンが使われていても、前半のもののみを集計に含めています。また、各曲のコード進行は、他サイトやバンドスコアからの転載ではなく、全て僕の耳コピによるものです。中には聞き取りが難しく、正しいかどうか自信が持てないものも存在しますが、その点はご了承ください。

SMAPのシングル曲で使われたコード進行ランキング

1位 Ⅳ→Ⅴパターン(王道進行)7曲

  • 笑顔のゲンキ
  • オリジナル スマイル
  • SHAKE
  • この瞬間、きっと夢じゃない
  • そっと きゅっと
  • Moment
  • 華麗なる逆襲

SMAPで一番使われた進行はⅣ→Ⅴと進むコード進行でした。このうち「笑顔のゲンキ」「オリジナルスマイル」「SHAKE」「そっと きゅっと」の4曲は3つ目のコードがⅢmであり、多くのサイトで「王道進行」と呼ばれていてJ-POPで非常によく使われているコード進行です。残りの3曲も3つ目のコードこそ違えど、Ⅳ→Ⅴでサビに入るパターンは非常によく使われています。後述するように、SMAPの楽曲では変わったコードが使われる楽曲が多いのですが、最も多く使われたコードに関しては他のアーティストにおける傾向と大きく変わらない、ということがわかります。

2位 Ⅰ→Ⅴパターン(カノン進行)5曲

  • 負けるなBaby! ~Never give up
  • 君は君だよ
  • 俺たちに明日はある
  • ありがとう
  • This is love

5曲使われたパターンが2つありました。そのうちの1つがⅠ→Ⅴと進むカノン進行で、邦楽・洋楽を問わず非常によく使われている進行です。特殊なコードは使用せず、音楽理論的にも正統派と言えるコード進行で、コードを奏でるだけでも安心した響きを与えるものです。AKB48グループ等のアイドルに比べると、カノン進行の割合は多いとは言えませんが、それでもSMAPの楽曲のうち2番目に多く使われているわけですから、カノン進行が様々な楽曲で好んで使われるという事は間違いないようですね。

2位 Ⅰ→Ⅲmパターン 5曲

  • Can’t Stop!! -LOVING-
  • 朝日を見に行こうよ
  • freebird
  • Triangle
  • Dear WOMAN

もう1つの5曲のパターンがⅠ→Ⅲmと進む進行。こちらはカノン進行と非常に似ており、僕の耳コピにミスがあって、カノン進行のものが混じっているか、カノン進行と判定した楽曲でⅠ→Ⅲmものが混ざったりしてもおかしくありません。いずれにしても、カノン進行を合わせると10曲に上ります。

4位 Ⅱm→Ⅴパターン 4曲

  • 雪が降ってきた
  • 君色思い
  • BANG! BANG! バカンス!
  • JOY!!

4曲のパターンも2つありました。1つは、Ⅱm→Ⅴと進むパターン。このパターンは音楽理論的には王道進行と非常に似ているのですが、ちょっぴりと哀愁を含みつつもポップな響きも感じる進行です。これまで集計したアーティストでは、それほど多く使われてはいなかったのですが、SMAPにおいては4番目に多いものになりました。

4位 Ⅳ→Ⅲmパターン 4曲

  • Hey Hey おおきに毎度あり
  • がんばりましょう
  • しようよ
  • Mistake!

Ⅳ→Ⅲmと進むコード進行は、この時点では非常に不安定な響きを持っており、次にⅥmが来ることで初めて安定感を持ちます。Ⅳの部分ではⅣ→Ⅴと分割させて王道進行を使用することが多いため、この進行は非常に珍しいのですが、SMAPのシングルでは4曲もありました。
更に、これによく似たⅣ→Ⅲと進む曲が2曲、Ⅳ→Ⅲ7が1曲と、ベースラインがⅣ→Ⅲと進むコードが7曲もあり、SMAPの楽曲における傾向の1つとなっているようです。

6位   3曲のパターン

  • Ⅰ→Ⅳパターン・・・「はじめての夏」「たいせつ」「世界に一つだけの花」
  • Ⅰ→Ⅵmパターン・・・「ずっと忘れない」「どんないいこと」「セロリ」
  • Ⅳ→Ⅰパターン・・・「心の鏡」「らいおんハート」「Yes we are」
  • Ⅵm→Ⅱパターン・・・「たぶんオーライ」「Fly」「Smac」

3曲のパターンは4つありましたので、一気に解説していきます。最初のⅠ→ⅣとⅠ→Ⅵmのパターンは、明るい曲調の楽曲でよく使われており、中でもⅠ→Ⅳの進行はミスチルで集計した時は1位になるなど、非常に使われる頻度が高いです。

それを逆にしたⅣ→Ⅰも、Ⅰ→Ⅳほどではありませんがよく使われていると言えるでしょう。最後のⅥm→Ⅱは、B’zで上位に来るなど、どちらかといえばロック系の歌手に多く見られる進行と思っていただけに、SMAPで上位に来たのは意外な感じがしました。

2曲以下のパターン

  • Ⅰ→Ⅱmパターン・・・「友だちへ~Say What You Will~」「そのまま」
  • Ⅰ→Ⅲパターン・・・「正義の味方はあてにならない」「胸さわぎを頼むよ」
  • Ⅳ→Ⅲパターン・・・「青いイナズマ」「夜空ノムコウ」
  • Ⅵm→Ⅰパターン・・・「Top Of The World」「Otherside」
  • Ⅰ→Ⅱパターン・・・「さかさまの空」
  • Ⅰ→Ⅳ7パターン・・・「弾丸ファイター」
  • Ⅱm→Ⅲmパターン・・・「Peace!」
  • Ⅲm→Ⅵmパターン・・・「Let It Be」
  • Ⅳ7→Ⅲパターン・・・「シャレオツ」
  • Ⅳ→Ⅵmパターン・・・「KANSHAして」
  • Ⅵm→Ⅰ7パターン・・・「ダイナマイト」
  • Ⅵm→Ⅱmパターン・・・「僕の半分」
  • Ⅵm→Ⅲmパターン・・・「$10」
  • Ⅵm→Ⅴパターン・・・「はだかの王様 ~シブトクつよく~」

2曲または1曲のみで使われたコード進行は以上の通りです。Ⅵm→Ⅰ7やⅠ→Ⅳ7のように、メジャースケールに含まれないセブンスコードを使うパターンがいくつか見られました。

このようなコードは、ブルース、ロックンロール等において使われることが多いことで知られています。個人的に、SMAPの楽曲を洋楽っぽいと思ったことが何度かあるのですが、もしかしたら使っているコードがそう思わせたのかもしれません(そんなことを思ったのは僕だけかもしれませんが…)。

まとめ

SMAPの楽曲をコード進行のパターン別に分類してみました。全体的に、他のアーティストほど特定のコード進行に集まらず、様々なパターンに分散していた傾向にあったように思います(50曲以上ある割には1位が7曲であるなど)。これは、SMAPの曲を作った作曲家がたくさんいることにも起因しているのかもしれません。Ⅳ→Ⅲmといった比較的珍しいコード進行が上位に来たことも特徴的でした。

王道進行やカノン進行といった進行については他のアーティストの集計結果と同様に上位となり、これらがJ-POPにおいてよく使われている事を裏付ける結果となりましたが、三大コード進行の1つと言われる「小室進行」については1曲も存在ということも特筆すべきことの1つでしょう。

今後は嵐やKinKi Kidsといった、他のジャニーズグループについても集計を行っていきたいと思います。

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