目次
はじめに
これまで、AKB48、B’z、Mr.Children、SMAPなど、日本の様々なビッグアーティストの楽曲で、よく使われているコード進行を解析してきましたが、今回はそのSMAPの事務所後輩にあたる嵐のシングルの楽曲で使われているコード進行を分類し、どのようなパターンがよく使われているかどうかを解析していきたいと思います。
嵐は98年にデビューしたジャニーズのグループで、デビュー曲がいきなり90万枚を超える大ヒット。その後もヒット曲を出し続け、特に2008年~2009年ではオリコンの年間売上ランキングの上位を独占しました。その後も、2016年現在に至るまでシングル曲の大半が週間売り上げランキング1位となっているばかりでなく、バラエティやドラマなどでも、テレビではメンバーの顔を見ない日がないくらい、国民的なグループになっています。
当ブログでは音楽理論をメインテーマとしていますので、前回のSMAPに引き続き嵐の楽曲をコード進行の観点から色々と解析してみたいと思います。彼らの楽曲には、どのようなコード進行のパターンが頻繁に使われているのでしょうか?また、それは一般によく使われたパターン(カノン進行、王道進行、小室進行等)と一致するのでしょうか?SMAPやAKB48等のアイドルグループと同じ傾向になるのでしょうか?
コード進行・音楽理論に興味ある方はもちろん、そうでない方でも、単なる記号の羅列にはならずに、それぞれのコードのフィーリング等も併記しておりますので、ぜひ読んでいただければ幸いです。
他のアーティストで集計した結果は、こちらのサイトマップ内の「コード進行」のカテゴリの中のリンクからご覧いただけます。
集計対象曲および諸注意
集計する曲は、2016年5月までに嵐の名義で発売されたシングルのうち、1曲目に収録された全49曲になります。著名な曲であってもアルバム曲は除外しています。これは、アルバム曲を恣意的に選ぶことにより、結果が偏るのを防ぐためです。
コード進行の分類は、僕のブログで行っているオリジナルの方法である「サビの最初の2つのコードのみで、曲を分類する方法」により行っています。詳細は下記の記事で書いています。
最初の2コードで分類する方法をとるので、他のサイトとパターンの判定が異なることがありえます。また、サビの後半と前半で異なるパターンが使われていても、前半のもののみを集計に含めています。また、各曲のコード進行は、他サイトやバンドスコアからの転載ではなく、全て僕の耳コピによるものです。中には聞き取りが難しく、正しいかどうか自信が持てないものも存在しますが、その点はご了承ください。
嵐のシングル曲で使われたコード進行ランキング
1位 Ⅳ→Ⅴパターン(王道進行) 14曲
- PIKA★★NCHI DOUBLE
- Love so sweet
- Step and Go
- One Love
- Everything
- Troublemaker
- Løve Rainbow
- Dear Snow
- Lotus
- 迷宮ラブソング
- Calling
- GUTS !
- Sakura
- I seek
嵐の楽曲で一番使われたコード進行は、Ⅳ→Ⅴと進む王道進行でした。2位に6曲差をつけてダントツです。とはいえ、これらの楽曲はいずれも2004年以降の曲であり、それ以前は1曲もなかったため、時代によってかなりの偏りがあります。
彼らが特にCDの売上を上げていったのが2000年代後半です。その頃から王道進行が増えたのと、CDセールスの増加と何か関係があるのでしょうか。楽曲のヒットはコードのみが要因ではないので、単なる偶然かもしれませんが…。
2位 Ⅰ→Ⅴパターン(カノン進行)8曲
- 感謝カンゲキ雨嵐
- PIKA☆NCHI
- ハダシの未来
- サクラ咲ケ
- アオゾラペダル
- We can make it!
- マイガール
- 青空の下、キミのとなり
2位はⅠ→Ⅴのカノン進行でした。こちらは王道進行と逆に、初期の楽曲に多い印象です。「マイガール」から「青空の下、キミのとなり」の間は約6年間。王道進行が多数発売される中、カノン進行のシングルが発売されなかったことになります。
曲数だけを見ると他のアーティストと大きく変わらない傾向であっても、その発売時期に注目すると、このような顕著な傾向が出るというのは面白いですね。先述したように偶然の可能性も高いですが。
3位 Ⅵm→Ⅳパターン(小室進行)4曲
- Believe
- Your Eyes
- 誰も知らない
- 復活LOVE
3位は同率で2パターンありましたが、そのうち1つがⅥm→Ⅴパターンの小室進行。SMAPでは全く存在しなかったパターンですが、嵐では「三大コード進行」と呼ばれるものが上位を独占する結果となりました。内訳をみると後期の楽曲が多いですね。
3位 Ⅰ→Ⅳパターン 4曲
- A・RA・SHI
- 君のために僕がいる
- 瞳の中のGalaxy
- 果てない空
もう一つの3位がⅠ→Ⅳパターン。このパターンに特別な名前がついていないのが不思議に思うほど様々なヒット曲に使われている進行です。他のアーティストにおいても上位に登場し、特にミスチルのシングルでは最も使われたコード進行でした。
このコード進行の楽曲は、デビュー曲のA・RA・SHIをはじめ、明るくスッキリとした感じの楽曲が多いのが特徴です。
5位 Ⅰ→Ⅱパターン 3曲
- SUNRISE日本
- ナイスな心意気
- ワイルド アット ハート
Ⅰ→Ⅱと進むパターンが3曲ありました。このコード進行は、胸を打つような感動を与えるといったよりは、明るく砕けた感じを出す進行です。Ⅱというコードはサビの2つ目として使われるコードとしては比較的珍しいのですが、この進行が嵐の楽曲において5番目に多いというのは意外でした。以下のパターンにももっと頻繁に使われてそうなものがたくさんあるからです。
2曲以下のパターン
- Ⅱm→Ⅴパターン・・・「a Day in Our Life」「Bittersweet」
- Ⅳ→Ⅲパターン・・・「Happiness」「truth」
- Ⅳ→Ⅲmパターン・・・「とまどいながら」「きっと大丈夫」
- Ⅵm→Ⅴパターン・・・「Face Down」「Endless Game」
- Ⅰ→Ⅰaug5パターン・・・「台風ジェネレーション -Typhoon Generation」
- Ⅰ→Ⅲ♭パターン・・・「Monster」
- Ⅰ→Ⅲパターン・・・「Beautiful days」
- Ⅰ→Ⅲmパターン・・・「愛を叫べ」
- Ⅰ→Ⅵmパターン・・・「WISH」
- Ⅳ→Ⅵmパターン・・・「To be free」
- Ⅵm→Ⅰパターン・・・「時代」
- Ⅵm→Ⅱmパターン・・・「明日の記憶」
2曲以下のパターンは以上の通りです。他のアーティストではよく使われるⅠ→ⅢmやⅠ→Ⅵmといった進行が少なかったのは意外です。
最も珍しいコードは「MONSTER」のⅠ→Ⅲ♭でしょう。この進行を持つ楽曲を他に探すのも難しいほど大変珍しいコード進行です。この曲はドラマ「怪物くん」の主題歌で、歌詞、PV、アレンジなどに不気味さがにじみ出ている楽曲ですが、コードにおいても、滅多に使われない不思議な進行を用いることで、不気味さを強調する工夫がされているのではないかと思います。
まとめ
今回は、嵐の楽曲をコード進行のパターン別に分類しました。上位3パターンは「三大コード進行」と呼ばれ、数字だけを見ればおおかたのアーティストと傾向は変わらないのですが、各パターンの出現分布については、作品の発売時期によりかなりの偏りがありました。これが偶然なのか、何か意味があることなのかはわかりませんが、興味深い傾向だと思いました。
また、Ⅰ→Ⅱという珍しいコード進行が5位に来たのも他のアーティストでは見られなかった特徴でした。今回のような集計は6回目の記事になりますが、カノン進行が多いなどの点はどのアーティストも共通しているものの、細かいところでアーティストごとに傾向が異なり、毎回発見があって面白いです。
4回連続で男性ボーカルのアーティストで集計をしましたので、次回は女性アーティストで同様の解析を行ってみようかなと思います。