AKB48「LOVE TRIP」のコード進行解析・楽曲の感想


本記事では2016年8月31日発売の、AKB48「LOVE TRIP」のコード進行を耳コピで解析し、コード譜とともに音楽的な解説、感想も記していきたいと思います。

AKB48「LOVE TRIP」の概要


※上の動画は権利者がYoutubeに投稿している公式の動画です。
本作はAKB48の45作目のシングルで、日本テレビのドラマ「時をかける少女」の主題歌となっております。6月に行われたシングル選抜総選挙において、驚きの24万票を集めダントツの首位となった指原莉乃がセンターを務めています。前作のゆったりとしたナンバーである「翼はいらない」や、明るく王道路線のアイドル楽曲である前々作の「君はメロディー」とはうって変わり、カッコいいビートが効いた楽曲となっております。作曲者の「春行」氏はこれまでAKB48のアルバム曲に携わっていますが、シングル表題曲の作曲は今作が初となります。

「LOVE TRIP」のコード進行

イントロ

|C|C7|
Dm|Dm|F|F|C|C|Dm|Dm|
Dm|Dm|F|F|C|C|Dm|Dm|

Cコードから始まりますが、この楽曲のキーはDマイナー(またはFメジャー)であるため、最初の2小節はドミナントに相当します。あえて不安定なコードからはじめることで、次のトニックコードが印象付けられるようになっています。

イントロのメイン部分は3小節目からで、こちらはこの楽曲のサビと同様のⅥm→Ⅰという進行。サビがこの進行で始まる楽曲はAKB48のシングルでは他に「UZA」1作のみであり、アイドルソングとしてはやや珍しいパターンと言えます。コードがDmからFに遷移する中、旋律は3~4小節と5~6小節ではほぼ同じメロディーを奏でており、同じメロディーを繰り返す中でコードだけ変える手法は多くの楽曲で使われています(上記の「UZA」もそのパターンですね)。これは本曲のサビについても言えます。

Aメロ

|B♭|B♭|F|F|C|C|Dm|Dm|×2

コードはサブドミナントから始まります。伴奏をよく聴くと、アコギの音で、「・・ジャ・ジャジャ」という演奏がずっと続いているのが聞こえると思います。これは、イントロでも使われていますが、サビの「♪LOVE TRIP」のフレーズと全く同じなのです。本楽曲を通してBメロを除くほとんどの箇所で、この旋律か、この旋律とリズムが同じで音程が少しだけ異なる旋律が繰り返し演奏されています。この楽曲の特徴の1つと言えます。Aメロの前半はそのフレーズに同時に使われている音は、おそらく2音くらいですが、後半はその音も4音以上くらいに増えており、徐々に盛り上がっていくように工夫がなされています。

Bメロ

|C|Dm|B♭|F|C|Dm|E♭6|E♭6|C Csus4|C|

ストリングスが追加され、いよいよサビが近づいていることがわかります。コードはイントロと同じくドミナント(Ⅴ)からスタート。この部分だけ見ると、キーはDmというよりはFですが、平行調の関係なので、転調しているわけではありません。

途中のE♭6の部分は耳コピに苦労した部分です。ここではストリングスのDの音が聞こえるため、E♭M7か、E♭M7 add9である可能性もあります。一応E♭6でもほとんど違和感を感じなかったので上記のように記載させていただきました。E♭は数字で書くとⅦ♭の音であり、当然ながらダイアトニックなコードではありません。理論的にはやや不安定な響きを持つコードのはずですが、次のドミナントコード(C)を強調するための前段階となっているため自然に推移しているように感じるのです。

サビ

|Dm|Dm|F|F|C|C|Dsus4|D Dm|
|Dm|Dm|F|F|C|C|Dsus4|D|
|Gm7|Am7|B♭m7|F C/E|Dm|Am7|B♭m7|B♭m7|C|C|
|E♭M7|E♭M7|

イントロのところでも説明しましたように、AKB48では比較的珍しいⅥm→Ⅰという進行のサビです。7~8小節目は単にDmとせずにあえてDを使うことで単調にならないようにしていますね。

サビの後半部分では珍しい進行がいくつか登場します。まず、B♭m7の部分ですが、これは数字で表すとⅣm7であり、このコードの3音目、7音目がダイアトニックの音ではありません。1つのコードの中に2つも非ダイアトニックな音が混じっているため(ピアノでCのキーの楽曲を弾いた時に、黒鍵盤になるような音の事を言います)かなり強い印象を受ける部分です。

また、最後の「♪空の下」の部分で使われているコード(E♭M7と記載しましたが、自信はありません)もBメロで出てきたE♭6と同じく、Ⅶ♭をベース音とするコードで、このコードでサビが終わるという楽曲は全アーティストの楽曲を見渡してみても非常に珍しいと思います。なぜなら、非常に不安定な響きを持ったままメロディーが終了してしまうからです。しかし、聴いてみるとそこまで違和感がなく次の間奏へ推移しており、作曲者、編曲者の高い技術を感じます。

2コーラス~Cメロ前の感想

Aメロ、Bメロ、サビは1コーラスと同じ
|N.C.|×16
|Dm|Dm|C|C|B♭|B♭|A7|A|

2コーラスのサビが終わると、ストリングスやシンセの音が鳴りやみ、16小節ほどは、アコギの音と、最低限のドラム音、そして「LOVE TRIP」という機械音声のような音だけの部分が続きます。この部分にあえてコードを割り当てるとすればDmなのでしょうが、和音を奏でている楽器が存在しないため、ノンコード(N.C.)とさせていただきました。ここで使われているギターのフレーズは、Aメロのところで説明したフレーズと同じものと思われます。

その部分の後は全ての楽器が登場して8小節ほど感想が演奏されます。この部分のコード進行はⅥm→Ⅴ→Ⅳ→Ⅲとベースラインが半音ないしは1音ずつ下がる、頻繁に使われる進行となっています。

Cメロ~ラスサビ

|Gm7|C|FM7|Am7-5/E♭|Gm7|C|FM7|Am7-5/E♭|
|B♭|B♭|A/C#|Dm|D♭|D♭|E♭|C|C|
ラスサビは1コーラスのサビと同じ

この部分も色々なコードが使われています。まずは、4小節目と8小節目のAm7-5/E♭。これはもしかしたらF7/E♭かもしれませんが、E♭の音がベース音であり、その前の進行から考えるとやや珍しいパターンと言えます(この部分はDmやB♭が使われることが多いです)。Cメロ後半のD♭→E♭(Ⅵ♭→Ⅶ♭)は、一瞬転調したような響きを与えますが、次にⅠかⅤを導くために使われることが多い進行で、実質的には転調はしていません。

後奏

Dm|Dm|F|F|C|C|Dm|Dm|
Dm|Dm|F/D|F/D|C/D|C/D|Dm|Dm|Dm(add9)

後奏はイントロと同じになるかと思いきや、後半の8小節は前半とは明らかに異なる印象を受けます。聞きなれない響きであり、耳コピに苦労したのですが、おそらくコード自体は変化しているもののベース音は全てDになっているのではないかと思われます。そのため、Dmのコードと別のコードが混ざったような響きになり、耳コピが難しかったのではないかと思いました。

まとめ

AKB48「LOVE TRIP」をフルコーラスにわたって耳コピを行いました。アイドルソングとしては珍しく、特殊なパターンのコードが多く、耳コピに自信がない部分も複数ありました。細かい部分で複数のテクニックが使われていることがよくわかりました。Bメロ以外のほとんどの部分で、アコギの音が同じフレーズ(=サビの最初のフレーズ)を繰り返し鳴らしており、本曲をのメロディーを聴く人に強く印象付けていると言えるでしょう。アイドルの楽曲ではありますが、全体的に非常に高い音楽性を感じた楽曲でした。

※AKB48グループ全体でコード進行の傾向をまとめた記事も作成しております。こちらもご覧いただけると嬉しいです。

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