本記事では2016年9月14日発売のAqoursのシングル「夢で夜空を照らしたい」について、コード進行を耳コピで解析し、その解説や感想を述べていきます。
「夢で夜空を照らしたい」の概要
本曲はアニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の第6話で使用された楽曲で、Aqoursの9名のうち3年生を除く6名が歌唱しています。
作曲者は、Aqoursの数曲の他、水樹奈々の「Angel Blossom」なども手掛けている光増ハジメ氏。今回はこれまでの楽曲とは違い、ゆったりとしたテンポのバラード的な曲調に仕上がっています。
上の動画はLantisの公式チャンネルがYoutubeにアップしているもので、ショートバージョンのため、サビの部分しか視聴することはできませんが、著作権的に問題のない動画が他に見つけられませんでしたので、ご了承下さい。
「夢で夜空を照らしたい」のコード進行
イントロ
|CM7 C7|Fm7(add9) B♭|
|C|F|C/E Cm/E♭|Dm7 G|
※2016/9/17 最初の4小節追記しました。ここはかなり特殊コードを多く用いています。2小節目は5つのコードが含まれているようです。非ダイアトニックのコードも使われており、大変細かいですね。アニメ版ではこの4小節は省略されています。
後半はストリングス系の楽器がメインの旋律を奏でる綺麗なイントロで、コード進行はⅠ→Ⅳと進むパターン。楽曲のキーはCメジャー(楽譜では#も♭もつかない調性)であることがわかります。
7小節目でCm/E♭(Ⅰm/Ⅲ♭)というやや珍しいコードが登場しますが、ベースがE→E♭→Dと自然に推移しているため、それほど不自然には聞こえないようになっています。このあたりは分数コードのベース音も非常に重要で、同じ構成音であっても単にC→F→C→Cmと弾くのではだいぶ違った印象になるでしょう。
最後のGの小節では、今までストリングス系の楽器に埋もれてあまり聞こえてこなかった、キラキラ系のシンセの音色が鳴っていることが意識できます。
Aメロ
|C|Em|Am G|F G C・|
本曲のサビ以外の部分は、通常の楽曲のようにAメロやBメロと2種類のメロディーがあるような構成ではなく、大きく分けて3つの部分に分けられます。したがって、当記事ではそれらをAメロ、Bメロ、Cメロと呼ばせていただきます。通常の楽曲でBメロにあたる部分がこの曲ではCメロという事になります。
Aメロは前半4小節は、ピアノとわずかにシンセ系(パッド?)の音が聞こえるだけの、非常に静かな部分で、後半の4小節はベース音も加わります。
コード進行は、3小節目の途中まではⅠ→Ⅲm→Ⅵmのよくあるパターンですが、次のⅠ7が良い味を出しています。Ⅰ自体はトニックのコードですが、短7度のセブンス音が非ダイアトニックなⅦ♭にあたるため、セブンスを付けるのとつけないのではかなり異なる印象で聞こえます。非ダイアトニックなセブンスコードの特徴については以下の記事でも書いていますので、音楽理論に興味がある方は覗いてみてください。
4小節目は1音ごとにコードが変わり、最後のGからベース音が登場します。後半ではI7(C7)を使わず、代わりにⅤ(G)を使って、次の小節でいったんコード進行が完結するようになっています。逆にここでもⅠ7を使っていたら、8小節目の進行が無理やり完結させたような印象を与えた可能性もあり、3小節目がⅠ7で、7小節目がⅤであるのはちゃんと意味があってのことと思いました。
Bメロ
|F・Em E|Am D7|Dm7 C/E|F G C・|
カノン進行から始まるメロディーで、Aメロに比べるとリズムに若干のノリ(跳ね)が含まれます。通常の楽曲における異なるAメロが2つ続くため、割合珍しい構成の楽曲であると言えます。コード進行について見れば、4小節目のⅤm(Gm)が非ダイアトニックコードのため、ちょっとした変化を出しています(通常は代わりにⅤやⅢmが使わることが多い箇所です)。
Cメロ
|Em F|C7/B♭ F/A|F D/F#|G|
各小節の前半で、ヴォーカルメロディーが、ベースとともに8分音符×4のリズムを強調する作りになっていて、しかもそれが繰り返されるため非常にインパクトの強くすぐに覚えてしまいそうなメロディーです。コード進行はⅢm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅵmと、ルート音が徐々に上がりながらⅢmからⅥmに移行する進行です。
6小節目に非常に聴きなれない珍しい響きを持った部分が登場します。それまでと同様Ⅴ→Ⅵm(G→Am)と進むのかと思いきや、ベース音がいきなりⅦ♭(B♭)から始まり、なんじゃこりゃ~といった感じでした。
本曲の耳コピ採譜において、一番自信がない箇所となっています。構成音や聴いた感覚からⅠ7 on Ⅶ♭(C7 on B♭)と判定しましたが、どうでしょうか。このタイミングでⅠ7(C7)が来るような楽曲は他に聴いた記憶がなく、とてもハッとする部分でした(単にⅠ7→Ⅳだけならあるかもしれませんが、ベース音がⅢ→Ⅳと来た後にⅦ♭が聞こえたので驚きました)。
サビ
|C E7|F・G E/G#|Am G|D7|
|F G|Am Em|F G|Am D7|
|F|B♭7 G・・|
サビはⅠ→Ⅲ7→Ⅵmと進むパターンで、非ダイアトニックなⅢ7を含むにもかかわらず、J-POP全体を含めても非常に多くの楽曲で使われたコード進行です(特に、この進行から始まるサビが多いアーティストは、僕のブログで集計した中ではミスチルやいきものがかり等が挙げられます)。Ⅲ7→Ⅵmの進行がドミナントモーションと呼ばれる進行で、非常に強い解決感が得られる上、非ダイアトニックなⅢ7が、切なく深い感情を出すため、バラード調の楽曲で使いやすいのだと思います。
ただ、この曲でちょっと珍しい点は、ヴォーカルの音がⅤの音を出しているのにⅢ7というコードを使っているという点です。Ⅲ7の構成音であるⅤ#と、ヴォーカルのⅤの音は半音のみの違いですが、このように、コードの3度にあたる音が他の楽器と半音だけ違う場合、不協和音に聞こえることが多いため、注意が必要です。
この曲の場合は、おそらくそれらの音がオクターブ以上離れた位置にあるためか、不協和音による不快感はあまり感じず、うまくできているなあと思いました。他にも、8小節目もD7というコードがバックで鳴っている中、ヴォーカルではFという音が登場するなど、半音のみの違いの音が同時になる箇所が見られましたが、やはり不協和音のような感じはせず、うまくアレンジがされていると感心します。
話は変わって、2段目の6小節目のところは、最後のⅠ(C)を導出するための部分なので、ドミナントのⅤ(G)を用いるのが普通ですが、あえてその前に1拍だけ、Ⅶ♭7(B♭7)というコードを使って、変化を出しているところが細かい芸だと思いました。このコードは非ダイアトニックな音を2つも含んでいるコードでかなり際立つ存在なのですが、すぐに通常のⅤ(G)に変わってしまうため、一瞬だけ「はっ」とさせるような進行になっています。
2コーラス
※2016/9/17 フルコーラスを聴いたので以下を追記します。
|C|F|C/E Cm/E♭|Dm7 G|
※Aメロ~サビ繰り返し
※2コーラス後の間奏
|A♭M7|B♭|C|C|
|A♭M7|B♭|Fm7 Gm7|A♭m7|B♭|G|
※サビ繰り返し
2コーラスの後の間奏では、Cマイナーの調に一時的に転調しているとみて良いでしょう。
後奏
|F|C/E Cm/E♭|Dm C/E|Fm G|
|C C7|F C/E Dm G|G|CM7|
※アニメ版以下の通り
|C|F|C/E Cm/E♭|Dm7 G|
|C C7|F C/E Dm B♭G|
|C C7|F C/E Dm G|CM7|
※2016/9/17 ここも追記しました。アニメ版とCD版で大きく異なります。
最後はⅠ(C)ではなく、あえてⅠ△7(CM7)で終わることで、余韻を残す感じになっています。
まとめ
Aqoursのシングル「夢で夜空を照らしたい」のコード譜を耳コピで解析しました。平凡なバラード曲と思われるかもしれませんが、細かい部分で独特なコード進行を使っており、特にCメロの6小節目の部分は斬新な響きに聞こえました。サビでも不協和音になるかどうかのギリギリを攻めたアレンジは素晴らしいと思いました。
カップリングの「未熟DREAMER」についても以下の記事で解説を行っています。
他にも、ラブライブ!やラブライブ!サンシャイン!!関連としては以下の記事でもコード解析を行っておりますので、興味があればご覧ください。