本記事では2016年8月24日発売の、Aqours「ユメ語るよりユメ歌おう」のコード進行を耳コピによって解析したものを掲載し、楽曲に関しての音楽的な解説や感想を述べていこうと思います。
※8/25追記 当初は1コーラスのみの採譜でしたが、フルコーラスを聴くことができたため、2コーラス以降も追加しました。
※10/10追記 サビのコード譜で、小節区切りの位置が大幅に間違っていたので修正しました。本記事を参考にされた方には、大変ご迷惑をおかけしました。また、ご指摘くださった方には感謝いたします。
目次
Aqours「ユメ語るよりユメ歌おう」の概要
本作はアニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」のエンディングテーマとしてオンエアされている楽曲で、Aqoursのシングルとしては5作目になります。アニメで使われた楽曲としては「青空Jumping Heart」「決めたよHand in Hand」に続く3作目で、非常に短い間隔での連続リリースとなっています。Aqours名義でリリースされたシングルはいずれもCDランキングの上位にランクインしており、本作もヒットが期待されています。本作はこれまでの4作やμ’sの楽曲と同様に、明るくアップテンポな楽曲となっています。
上の動画は楽曲の権利者によりYoutubeに投稿された公式の動画です。動画は60秒間のバージョンですが、耳コピはフルコーラスで行います。
「ユメ語るよりユメ歌おう」のコード進行
イントロ
|B♭C|A/C# Dm|Gm7 Am B♭|C |
イントロはⅣ→Ⅴ→Ⅲm7→Ⅵmの典型的な「王道進行」です。また、キーはDマイナー(またはFメジャー)であることがわかります。イントロの4小節目はベースラインが半音ずつ下がりつつ、リズムを全楽器揃えるテクニックが使われます。5~6小節目では王道進行の3つ目のコードがⅢm7の代わりにⅢになっており、この方法によって、同じようなメロディーであっても1回目と2回目で響きに変化を持たせることができ、非常によく使われる手法です。7~8小節目では4小節目とは逆に1音ずつ上がる展開になっていますね。
イントロの主旋律はシンセブラスのような音で、アップテンポなリズムの中にこのような楽器で主旋律を奏でる構成は、AKB48グループやラブライブ関連の楽曲の典型とも言えるイントロになっています。
Aメロ
|F C|B♭・・C|Dm C|B♭A|
イントロよりもやや楽器の数が減ります。Ⅰ→Ⅴ→Ⅳ→Ⅰのダイアトニックなメジャーコードのみで構成された進行が基本となりますが、最後の4小節だけベースラインがD→C→B♭→Aと下がる展開で、次のBメロへの自然な導入部分となっています。
Bメロ
|Gm7 C|A/C# Dm|Bm7-5|G7|B♭m|C7|
ストリングスが追加され、また、これまで単純な8ビートを叩いていたドラムが、いかにもPPPH(アニソン・アイドルソング特有のライブのノリの事)向きのリズムに代わります。Bメロ後半からは裏ノリのリズムに変わり、最後の4小節はやや特殊なコード進行。数字で表すと#Ⅳm7-5→Ⅱ7→Ⅳmと、いずれもダイアトニックなコードではないため、この部分だけ聴くととても不安定な響きになりますが、次のⅤ7からサビのⅠに至るまでの流れで、その不自然さが解決されるという流れになっています。
サビ
|F|C/E A7/C#|Dm |Cm F|B♭|Am7 Dm|Gm G7|C A7|
|Dm|A/C#|F/C|Bm7-5|Gm Am B♭|B♭|Gm Am B♭|C|Fsus4|F|
カノン進行のⅠ→ⅤのⅤの部分を、ⅤとⅢで分割したパターンで、このようなパターンはμ’sの「MOMENT RING」にも見られます(サビの3小節目まではこの2曲は全く同じコード進行ですね)2小節目のA7、4小節目のCm、7小節目のG7が非ダイアトニックなコードであり、この部分の響きは実際に弾いてみるか楽曲を聴くかして味わってみてください。それぞれ違った味わいが得られると思います。
サビ後半はベースラインが半音ずつ下がる部分が2小節続いた後、リズムが変わり、今度はベースラインを上げる進行が続きます。この辺に一瞬無音になる部分があり、ライブイベントなどでは観客が合いの手を入れるのでしょうか。
間奏~Aメロ(2コーラス)
|B♭C|A/C# Dm|Gm7 F/A B♭m|D♭・E♭C |
※Aメロは1コーラスと同じ
1コーラス~2コーラス間の間は、イントロと同じようで、最後の2小節が異なります。B♭m(Ⅳm)、D♭(Ⅵ♭)、E♭(Ⅶ♭)といった、ダイアトニックではないコードが複数登場し、リズムもやや複雑になります。これらのコードはA♭メジャー(Fマイナー)のキーの曲におけるダイアトニックコードであり、本曲のキーであるFから見ると、「同主調」のコードにあたります。ダイアトニックコードでないコードがいっぱい使われている場合は、このような関係調のコードであることが多く、この部分から同主調へ転調することもあるのですが、本曲の場合は転調せずそのままFメジャーキーを保ってAメロに移行しています。
2コーラスのAメロは、メロディーやコードは1コーラスと同じですが、リズムがハンドクラップによるアレンジになっています。
Bメロ(2コーラス)
|Gm7|Am7|B♭M7|Am7|
|Gm7 C|A/C# Dm|Bm7-5|G7|B♭m|B♭m|Gm7|C7|
2コーラスのBメロは、Aメロと比べると最後の方に2小節挿入されており、メロディーも若干異なります。このようにBメロが1コーラスと2コーラスで違うのは、μ’sの「それは僕たちの奇跡」にも見られました。本曲はイントロ、Aメロ、Bメロともに、何らかの形でAメロとは変化がある、ということになります。
サビ(2コーラス)~サビ後の間奏
|F|C/E A7/C#|Dm |Cm F|B♭|Am7 Dm|Gm G7|C A7|
|Dm|A/C#|F/C |Bm7-5|Gm Am B♭|B♭|Gm Am B♭|C|E♭|Dm|
|B♭m/D♭|F/C|G/B|B♭m7|F/Am B♭|C|Asus4|A|
サビは、ほとんどの部分で1コーラスと同じですが、最後のフレーズのみ、1コーラスがFsus4→Fとなっていた部分がE♭→Dmという進行に代わっていて、変化を出しています。そしてそのまま間奏に突入しますが、この部分はE♭からF/Amまで、ベースラインが半音ずつ下がるおなじみの展開になっています。
Cメロ
|Dm7|A/C#|F/C|G/B|Gm7(add9)|F/A|B♭M7|C|C|C|
Cメロはいったんリズムがゆったりになって、イントロと同じ「王道進行」で始まります。Cメロの後半はコード進行がDm→A/C#…と、ベースラインが半音ずつ下がる中で、メロディーラインは逆に上がっていき、サビと同じかそれ以上の見せ場となっています。A/C#のコードが奏でる不思議な感覚がメロディーを引き立てていますね。個人的にはこの個所はかなり好みです。
ラスサビ
|F|C/E A7/C#|Dm |Cm F|B♭|Am7 Dm|Gm G7|C A7|
|Dm|A/C#|F/C |Bm7-5|Bm7-5|
|Csus4|F C/E|F/E♭ B♭/D|D♭|E♭|
多くのアニソン、アイドルソングがそうであるように、ラスサビの出だしは、リズムが止まって、ボーカルを強調する構成になっております。また、「♪つながりだよね」の部分では、1,2コーラスに比べて、1小節分多く伸ばされています。
しかし、なんといってもラスサビの特徴は、そのあとの部分でしょう。1,2コーラスにはないEm7-5→A→DとGm→F→E♭というちょっぴり変わったコード進行で締めくくられています。特にGm→F→E♭という進行(Ⅱm→Ⅰ→Ⅶ♭)は、それ自体も珍しいのですが、この状態でメロディーが終わるというのもさらに珍しいですね。
ボーカルが歌い終わった直後のピアノのみの静かな部分も、ダイアトニックではないコードで構成されていますが、後奏の王道進行へ非常に綺麗に移行しています。
後奏
|B♭C|A/C# Dm|Gm7 Am B♭|C |Fsus4|F|
後奏はイントロとほぼ同じ王道進行から始まるパートです。ラストのⅠsus4→Ⅰの進行は単にⅠのみで奏でるのとほとんど同じ響きですが、主旋律にB♭(Ⅳ)の音が含まれていたため、sus4と判定しています。
まとめ
Aqours「ユメ語るよりユメ歌おう」を音楽理論の観点から解説しました。フルコーラスを聴いたわけではありませんが、これまでのμ’sやAqoursの楽曲を初めとする売れセンのアニソン、アイドルソングと共通点が多くみられる楽曲と言えるでしょう(語弊があるかもしれませんが、「メロディーが似ている」という意味ではなく、「楽曲の構成が似ている」という意味です。悪い意味で言っているわけではないですよ)。アップテンポで明るくキャッチーな楽曲で、このような曲は、聴くだけでなくライブやアニソンイベント等で盛り上がるのにも非常に向いていますので、CDが発売されてフルコーラスを聴くのが楽しみです。
以上が1コーラスのみ聴いた時点での感想でしたが、フルコーラスを聴いたので、改めて書かせていただきます。2コーラス以降では1コーラスと細かい部分で変化を出しているところがたくさんありました。更に、Cメロやラスサビではかなり珍しいコード進行が使われていたため、上で述べた「多くの売れセンのアニソンと共通点が多い」という感想は必ずしも正しくないかもしれません。とにかく、1コーラスと、それ以降でかなり印象が異なる楽曲であると感じました。
ラブライブ!関連のコード進行については、以下の記事も書いております。興味があればご覧ください。