目次
- 1 はじめに
- 2 なぜ最初の2つで分類するのか?
- 3 既存の分類方法に反しないのか?
- 4 具体的な手法
- 5 これだけは知っておくべき、主要3パターン
- 6 主要3パターン以外のコード進行
- 6.1 Ⅰ→Ⅳパターン
- 6.2 Ⅰ→Ⅵmパターン
- 6.3 Ⅰ→Ⅲmパターン
- 6.4 Ⅰ→Ⅱmパターン
- 6.5 Ⅰ→Ⅶm7-5パターン
- 6.6 Ⅵm→Ⅱmパターン
- 6.7 Ⅵm→Ⅴパターン
- 6.8 Ⅵm→Ⅲmパターン
- 6.9 Ⅳ→Ⅰパターン
- 6.10 Ⅳ→Ⅱmパターン
- 6.11 Ⅳ→Ⅲmパターン
- 6.12 Ⅵm→Ⅰパターン
- 6.13 Ⅱm→Ⅴパターン
- 6.14 Ⅱm→Ⅵmパターン
- 6.15 Ⅴ→Ⅰパターン
- 6.16 Ⅲm→Ⅵmパターン
- 6.17 Ⅰ→Ⅲパターン
- 6.18 Ⅰ→Ⅰaug5パターン
- 6.19 Ⅵm→Ⅲパターン
- 6.20 Ⅳ→Ⅲパターン
- 6.21 Ⅱm→Ⅲパターン
- 6.22 Ⅵ→Ⅱmパターン
- 6.23 Ⅰ→Ⅱパターン
- 6.24 Ⅵm→Ⅱパターン
- 6.25 Ⅰ7→Ⅳ7パターン
- 6.26 Ⅰ→Ⅰ7(またはⅢdim)パターン
- 6.27 その他のコード進行
- 7 まとめ
はじめに
音楽のコード進行は、曲の構成を決めるにあたって非常に重要で、メロディーが同じでもコード進行によって全く違った雰囲気の曲になります。コード進行は無限の可能性があり、様々なサイトが様々な方法でパターン化して紹介しています。
たとえば、「カノン進行」「王道進行」「小室進行」などの3パターンは、最近の日本のヒット曲の大半を占め、作曲に悩む人はまずこのコードを弾いてからメロディーを作成するという人も多いようです。
今回、僕の目的としていることは、様々な楽曲を、コード進行によって分類するという試みであり、その方法として「サビの最初の2つのコードのみで分類する」ということを思いつきました。
本記事ではコード進行が多数登場します。ピアノやギターが手元にある人は、ぜひそのコード進行を演奏しながら読んでいただけるとより理解が深まるかと思います。
ただし、「コード進行など全く知らない」という方でも、知識を提供できる内容になっております。そういった方は、途中は読み飛ばしてしまっても結構ですので、曲名をたくさん挙げられているところだけでも読んでみてください。そこでは、似たようなコード進行を持つ曲を分類してありますので、「この曲とこの曲が同じコード進行なんだ!」などと感動していただけるだけでも、僕としては大満足です。
なぜ最初の2つで分類するのか?
なぜサビの最初の2つのコードで分類しようと考えたのでしょうか?
これには主に3つの理由があります。順に説明していきましょう。
コードを最初の2つで分類すると、パターンが少なくて済む
これは数学的に考えても明らかなことです。たとえばCメジャースケールにおいて使われるダイアトニックコードで考えてみましょう。Cメジャースケールとは、いわゆるドレミファソラシドの事で、Cメジャーのダイアトニックコードとは、簡単にいえばピアノの黒鍵盤を使わずに出せる和音という意味です。
これらの音で作成できるコードは、セブンスコードなどの特殊なものを除けば、以下の6つがあります。
C,Dm,Em,F,G,Am
それらを2つ並べることでできる組み合わせは、6×5=30通りあります。つまり、最初の2つのコードに限ってみれば、たかだか30個のパターンで表せることになるのです。
(実際には、その中にもほとんど表れない並びもあるので、もっと少ないです)
もちろん、これはある意味では暴論であり、Cメジャースケールの曲でも、上に述べた以外のコードを使ってはいけないという決まりはありません。後で例を挙げますが、C→Eとか、A→Dmといったコード進行もよく使われます。だから、全ての曲の最初の2つのコードが、上記の6コードの組み合わせのみで表せる、というわけではありません。ただ、それらの特殊な例を考慮したとしても、頻繁に使われるコード進行はせいぜい20前後くらいの範疇に収まり、それ以外のコード進行はどのパターンにも類しない特殊なケースと考えることができるでしょう。
もし、これを最初の4コードにまで広げてパターン分けしたら、どうなるでしょうか?厳密な計算ではないですが、おおよそ700通り以上のパターンを考えないといけません。8コードになったら、10万パターンを超えてしまいます。ここまで行くと、パターン分けなど全く意味をなしません。
1つの曲のパターンを1つに絞れる
サイトによっては、サビの出だしは王道進行の曲なのに、カノン進行がいかに多いかを説明するために、Aメロだけにカノンコードが使われていても、「この曲はカノン進行の曲だ」などと紹介していることがあります。決して間違いではないのですが、そのような分類をすると、ある曲がカノン進行にも王道進行にも該当してしまうということが多発してしまいます。
本ブログでは年代ごとやアーティストごとの曲でパターン別のランキング等も行おうと考えているので、1つの曲に対して1つだけのパターンを定義することが大事なのです。
これはあくまで分類のための理由であり、実際に作曲を行おうと考えている人は、1つのパターンに縛られる必要は全くありません。むしろ色んなパターンを組み合わせていい曲を作っていく方が大事でしょう。サビの前半が王道進行で後半がカノン進行といったヒット曲も多くありますからね。
サビの最初の2つのコードが特に重要
この点に関しては異論はあるかもしれませんので、あくまで僕個人の考えとして流し読みしていただければ結構です。
コード進行は、最初から最後まで全て重要ではありますが、曲の雰囲気を決めるのに特に重要なのは、サビ(あるいはイントロ)の最初の2つのコードであると考えています。
たとえば、C→Gや、C→Amといった進行であれば明るいイメージを持ちますし、Am→Emや、Am→Dmといった進行から始まる曲は、ちょっぴり哀愁漂う曲調であることが多いでしょう。
もちろん、3つ目以降のコードの違いで曲の展開が異なることもあるでしょうし、3つ目以降のコードの部分に、楽曲の一番の見せどころがやってくることはあります。しかし、1つ目、2つ目のコードがサビの骨組みを決定しているからこそ、3つ目以降に自然に見せ場がやってくることが多く、最初の2つのコードが違っていたら、全く別の曲になってしまうことがほとんどなのです。
もっと極論を言えば、最初の1つのコードで決まると言う人もいるかもしれませんが、それだとあまりにもパターンが少なすぎるので、2つくらいがちょうどいいのではないでしょうか。
既存の分類方法に反しないのか?
さて、これまでサビの最初の2つのコードだけで、全ての曲を分類するということを説明してきましたが、勝手にそんな分類をしてもよいのでしょうか?
僕は一応、ある程度楽器の経験もあり、音楽理論も勉強はしてますが、音楽のプロでもなく、2つのコードで分類するというのは完全に僕のオリジナルの方法です。過去の音楽家が行ってきた分類方法に従わない方法を行っても問題はないのでしょうか?
実は、コード進行というのは、ある程度のパターンこそあれ、ルールというのは全くありません。たとえば、C→F#→A#mといっためちゃくちゃなコード進行(もしそういう曲があったらすいません・・・)等でも、違和感は持たれるかもしれませんが、それで曲を作ってはいけないという決まりはありません。あくまで、「こういうパターンで作ると、聴きやすい曲ができるよ」、という指針でしかないのです。曲の良さだって、人の主観で決めるもので、どれが正解というのはありません。
コードを付ける方法が自由である以上、コード進行のパターン分けについても特にルールはありません。先に挙げた「カノン進行」「小室進行」「王道進行」といった用語についても、音楽家や音楽団体によって定められた厳密な音楽用語、というわけではありません。カノン進行はともかくとして、残りの2つは日本でしか使われていない用語です(それらが指し示すコード進行そのものは海外でも使われていますが)。
それに加え、カノンコードについてみても、よく紹介されているのはC→G→Am→Em→F→C→F→Gという8コードの連続ですが、じゃあこのうち最後の2つがDm→Gとなったらカノン進行と言わないか、といったらそんなことはありません。それなら、どこまで変化したらカノン進行ではないのか?と聞いたら、たぶん誰にも答えられないでしょう。それほど既存の分類は曖昧なものなのです。
主要な3パターンですら曖昧なものですから、それ以外のパターンなど、更に曖昧です。僕も色々調べてみましたが、上記3パターン以外は、個々のサイトが「パターン1」などと名をつけていたり、個々のパターンの代表的な曲名をとって「○○進行」などと名をつけているなど、分類方法は十人十色でした。したがって、僕が最初の2つのコードだけで分類を作ったとしても、(それが有用であるかはさておき)嘘を書いてしまう、という危険性はほとんどないのです。
具体的な手法
具体的に、「サビの最初の2つでコードを分類する方法」のやり方について、説明します。といっても、その言葉の意味がそのまま手法になっているので、特に難しいことはありません。
まずは、「最初の2つ」というのは、「異なるコード2つ」という意味で分類します。どういう意味かというと、たとえば|Ⅰ|Ⅰ|Ⅰ|Ⅴ|というように、ずっと同じコードが続いて、しばらくしてからコードが変わるというパターンであっても、小節単位で考えるのではなく、異なるコードが登場したタイミングで初めて「2つ目」とカウントします。よってこの例だと「Ⅰ→Ⅴパターン」となります。
また、セブンスなどのテンションコードは、それらの構成音がメジャースケールに含まれる音の場合無視します。たとえば、Ⅰ→Ⅴ7という進行はよく使われますが、Ⅴ7のセブンスの音はⅦであり、メジャースケール上の音です。したがって、セブンスは無視してⅠ→Ⅴパターンとします。
一方、Ⅰ→Ⅰ7という進行では、セブンスの音はスケール上にはなく、Ⅰ7は非ダイアトニックコードとなります。この場合、セブンスがあるのとないのとでは無視できないレベルの響きの差がありますので、別のパターンとします。
分数コードについても同様の考え方を行います。たとえば、Ⅰ→Ⅰ/Ⅲ→Ⅳの2つ目のⅢの音は、Ⅰのコードの構成音として含んでいるため、分母を無視すればⅠ→Ⅰ→Ⅳとなり、1つ目と2つ目が同じになるので、「Ⅰ→Ⅳパターン」とみなします。
しかし、Ⅰ→Ⅰ/Ⅶ♭のように、コードの構成音でない(しかもダイアトニックですらない)ようなベース音と一緒になっている場合は、構成音が同じであるⅠ→Ⅰ7コードとみなします。
Ⅰ→Ⅰ/ⅢはⅠ→Ⅰとするのと響きが多少異なるので、本当は別パターンとみなしたがいいのかもしれませんが、セブンスや分数コードまで全部パターン分けしていたら、パターンの数が膨大になってしまうための、ひとまずその方法でやらせていただきます。
これだけは知っておくべき、主要3パターン
これから主要なコード進行を最初の2つによって分類していきますが、ここまで何度も挙げてきた「カノン進行」「王道進行」「小室進行」については、巷でよく使われている言葉なので、僕の分類でも名前をそのまま使わせていただきます。もしかしたら批判があるかもしれませんが、カノン進行をⅠ→Ⅴ、王道進行をⅣ→Ⅴ、小室進行をⅥm→Ⅳと定義することで、主要3パターンの用語はほとんど意味を変えずに使用できるからです。
なお、これ以降はCメジャースケールの具体的なコード名ではなく、ローマ数字を使ったコード表記をさせていただきます。理由は、Cメジャースケール以外のコードもこの方法なら一律で表すことができるからです。ローマ数字の表記がよくわからない、という場合は、以下のように読み替えてください。
Ⅰ→C
Ⅱ→D
Ⅲ→E
Ⅳ→F
Ⅴ→G
Ⅵ→A
Ⅶ→B
カノン進行(Ⅰ→Ⅴパターン)
元々はパッヘルベル(ドイツの作曲家)の「カノン」というクラシックの名曲に使われたコードで、このコードがヒット曲の多くに使われていたことから、この名前が付けられました。とてもすっきりする進行であり、聴いていても全く違和感が感じられないのが特徴です。
Ⅰ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅲm→Ⅳ→Ⅰ→Ⅳ→Ⅴという8コードもしくは、最初の4コードでカノン進行と呼ぶことが多いですが、僕のブログでは最初のⅠ→Ⅴをもって「カノン進行」と呼ばせていただきます。上記の進行の他に、Ⅰ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅳ(「Let It Be進行」あるいは「Let It Go進行」とも呼ばれることがある)や、Ⅰ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵmや、Ⅰ→Ⅴ→Ⅳ→Ⅴ、Ⅰ→Ⅴ/Ⅶ→Ⅴm/Ⅶ♭→Ⅵなどのバリエーションがあります。
例)
- 翼をください/赤い鳥
- 愛は勝つ/KAN
- 恋するフォーチュンクッキー/AKB48
- 糸/中島みゆき
- 島唄/THE BOOM
- いつかのメリークリスマス/B’z
- 桜坂/福山雅治
- HOWEVER/GLAY
王道進行(Ⅳ→Ⅴパターン)
J-POP進行などと呼んでいる人もいます。王道パターンとしてよく紹介されているのは、Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm→Ⅵmという4コードの繰り返しです。「王道進行」では、3つ目のコードであるⅢmを重要視されている人が多く、したがって、Ⅳ→Ⅴという進行だけで「王道」と表現するのはかなり強引かもしれませんが、僕のサイトでは2コードによる分類を目的としているので、批判は覚悟ながらこの進行を「王道」と呼ばせていただきます。
Ⅳ→Ⅴ→Ⅵmや、Ⅳ→Ⅴ→Ⅰといったコード進行(それぞれ456進行、SDT進行などとも呼ばれることがあります)も、このパターンになります(実際、これらのコード進行も本当によく耳にしますので、「王道」と呼んでも何の問題もないと思うのですが・・・)
以下の例で、Rusty Nailより下に書いた曲は、456かSDTのパターンであるため、「王道進行」ではないとみなす人もいるかもしれません。どうしても違和感があるという方は、「Ⅳ→Ⅴパターン」という名前で考えていただければ、間違いはありません。
例)
- 愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない/B’z
- Love so sweet/嵐
- ズルい女/シャ乱Q
- WHITE LOVE/SPEED
- みっくみくにしてやんよ(VOCALOID)
- 瞳をとじて/平井堅
- LOVEマシーン/モーニング娘。
- ロビンソン/スピッツ
- Rusty Nail/X JAPAN
- FACE/globe
- TRUE LOVE/藤井フミヤ
- Time Goes By/Every Little Thing
小室進行(Ⅵm→Ⅳパターン)
小室哲哉がこのコード進行の曲でヒット曲を量産したことから小室進行という名称で呼ばれることが多いですが、実際には小室哲哉が登場する以前にもこのコード進行を持った曲はたくさんありましたし、小室哲哉自身もこのコード進行以外でたくさんヒット曲を出しています。しかし、慣習的にこのパターンを小室進行と呼ぶことが多いようです。
Ⅵm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰと進むパターンが多いですが、他にもⅥm→Ⅳ→Ⅰ→Ⅴや、Ⅵm→Ⅳ→Ⅱm→Ⅲ、Ⅵm→Ⅳ→Ⅲ→Ⅵmなど、さまざまなバリエーションが考えられます。
マイナーコードから始まりますが、悲しい曲といった感じよりは、かっこいい系の曲の例が多いですね。もちろん、小室ソングも多く含まれています。
例)
- Get Wild/TMN
- masqurade/trf
- Don’t wanna cry/安室奈美恵
- DEPERTURES/globe
- 紅蓮の弓矢/Linked Horizon
- ETERNAL BLAZE/水樹奈々
- 誘惑/GLAY
- 千本桜(VOCALOID)
- KISS ME/氷室京介
主要3パターン以外のコード進行
上記の主要3パターン以外はサクサクっと紹介していこうと思います。
Ⅰ→Ⅳパターン
個人的には、これも主要パターンに含めてもいいんではないかと思うほど、よく使われているコードです。このあとはⅤ→Ⅰや、Ⅵm→Ⅴ、Ⅴ→Ⅲなどと推移することが多いです。最初のはTSDTの典型的な完結型ですね。この進行から始まるものは、明るい曲調の曲が多いです。
例)
- 世界に一つだけの花/SMAP
- ひまわりの約束/秦基博
- シーソーゲーム/Mr.Children
- 乾杯/長淵剛
Ⅰ→Ⅵmパターン
これも非常に多い進行で、カノン進行の奇数番目のコードを続けてⅠ→Ⅵm→Ⅳ→Ⅴ(3つめはⅡmも多い)と推移することが多いです。ポップでキャッチーな曲や、アイドルソング等で使われることが多いです。
例)
- My Revolution/渡辺美里
- 踊るポンポコリン/B.B.クイーンズ
- 愛を語るより口づけをかわそう/WANDS
- 夏色/ゆず
- 花/ORANGE RANGE
Ⅰ→Ⅲmパターン
Ⅲmは音楽的にはⅤと非常に近いコード(平行調の主コード)であるため、Ⅰ→Ⅴのカノン進行と非常に近いコード進行です。この後はⅥm→Ⅲmと続くことが多く、この場合は2つ目を除けばカノン進行と全く同じです。特に、Ⅰ→Ⅲm/Ⅶと進む進行は、Ⅰ→Ⅴ/Ⅶと進むカノン進行とほとんど同じように聴こえます。実際、このパターンの楽曲が他のサイトでカノン進行とみなされているのをよく見かけます。なお、Ⅰ→Ⅰ△7/Ⅶという進行も良く見られますが、これもⅠ→Ⅲmと同等に扱われます。
例)
- 世界が終わるまでは/WANDS
- 名もなき詩/Mr.Children
- ヘビーローテーション/AKB48
Ⅰ→Ⅱmパターン
ⅠからⅥmやⅢmに移行するコード進行は非常によく登場する一方、Ⅰ→Ⅱmという進行は、ベースラインを1度挙げただけの単純な進行にもかかわらず、サビの先頭で使われる曲はほとんど見かけません。サビ以外、たとえばイントロやAメロの入りとしては頻繁に使われますので、コードのパターンを載せているサイト等では普通によく見かける進行でしょう。「導入部」や「前書き」のような響きがあり、それが一番盛り上がるべきサビで使われることが少ない理由なのかもしれません。
例)
- CROSS ROAD/Mr.Children
- カブトムシ/aiko
Ⅰ→Ⅶm7-5パターン
Ⅶで始まるコードはどちらかというとサビの直前などで使われることが多いのですが、このようにⅠ→Ⅶm7-5→Ⅲといったコード進行が登場することもあります。
例)
- 世界中の誰よりきっと/中山美穂 & WANDS
- 未来予想図Ⅱ/DREAMS COME TRUE
- PIECES OF A DREAM/CHEMISTRY
Ⅵm→Ⅱmパターン
マイナーコードが2つ続くため、どちらかと言えば暗く、哀愁漂うようなニュアンスを持っています。昭和の名曲ではこの進行が使用されている曲が非常に多いです。この後はⅤ→Ⅰと続くパターンがよく見られます。
例)
- セーラー服と機関銃/薬師丸ひろ子
- 硝子の少年/KinKi Kids
- 残酷な天使のテーゼ/高橋洋子
- 青春アミーゴ/修二と彰
- 片想いFinally/SKE48
Ⅵm→Ⅴパターン
この後はⅣ→Ⅴと続くパターンが多いです。その場合、2つ目のⅤを抜かせば小室進行と同じになるため、小室進行の派生とみなす人もいます。マイナートニックコードカラ始まる進行としては、小室進行の次くらいに多いと思われます。
例)
- 紅/X
- DESIRE/中森明菜
- R.Y.U.S.E.I/三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE
- energy flow/坂本龍一
- 羞恥心/羞恥心
- 月光花/ジャンヌダルク
Ⅵm→Ⅲmパターン
歌謡曲から最新曲まで、よく使われているコード進行です。こちらもこの次のコードはⅣであることが多く、小室進行の派生とみなす人もいます。Ⅵm→Ⅲm→Ⅳ→Ⅰ(あるいはⅤ)と進むのが典型的。
例)
- 愛しさとせつなさと心強さと/篠原涼子 with t.komuro
- 地上の星/中島みゆき
- チェリー/スピッツ
- ツバサ/アンダーグラフ
- Automatic/宇多田ヒカル
Ⅳ→Ⅰパターン
単独では不安定なⅣコードで始まり、Ⅰによって安心感を出します。Ⅳ→Ⅰ→Ⅴ→Ⅵmや、Ⅳ→Ⅰ→Ⅱなどのバリエーションがあります。
例)
- フレンズ/レベッカ
- Love ,Day After tommorow/倉木麻衣
- ギブス/椎名林檎
- innocent world/Mr.Children
Ⅳ→Ⅱmパターン
サブドミナントのメジャーコードとマイナーコードを連続した進行です。この2つだけでは完結感は得られず、この後にⅢm→Ⅵm等と続くことで、王道進行と似た響きを与えることが多いです。
例)
- 真夏のSound Good!/AKB48
Ⅳ→Ⅲmパターン
王道コードⅣ→Ⅴの2つめをその平行マイナーコードに置き換えたものです。この2つだけでは完結せず、この次にⅥmやⅠに至る流れができて落ち着くことが多いです。
Ⅳ→Ⅳ→Ⅲm→Ⅵmという進行は2つ目をⅤで置き換えて王道進行にしても違和感がないことが多いため、王道進行の一種とみなすこともあるようです。
J-POPではそれほど多くないですが、VOCALOIDの楽曲では好んで使用される傾向があります。
例)
- らいおんハート/SMAP
Ⅵm→Ⅰパターン
ロックな感じを醸し出すコードです。この次に来るコードとしてはⅣ、Ⅴ、Ⅱm、Ⅲ、など比較的多くのパターンがあります。
例)
- いいわけ/シャ乱Q
- 恋のダンスサイト/モーニング娘。
- アポロ/ポルノグラフィティ
Ⅱm→Ⅴパターン
ルート音の数字を取って「ツーファイブ」と呼ばれることがあります。このあとⅢm→ⅥmやⅠ→Ⅵmと推移することが多いです。ⅡmはⅣの平行コードであるため、この進行は王道進行と酷似しており、このパターンも王道進行と呼んでいるところも見かけました。サビの前半は王道進行、後半はこの進行という楽曲も多く見られます。
例)
- 君がいるだけで/米米CLUB
- HONEY/L’arc~en~Ciel
- ラブ・ストーリーは突然に/小田和正
Ⅱm→Ⅵmパターン
不安定なⅡmコードから、暗いⅥmコードに落ち着くため、暗めの曲や歌謡曲で使われていることが多いです。近年のポップスで使われるのは非常に稀です。
例)
- バレッタ/乃木坂46
- 青春時代/森田公一とトップギャラン
Ⅴ→Ⅰパターン
よく使われているコード進行の大半は、主音(トニック)のⅠ、Ⅵmもしくは従属音(サブドミナント)のⅣ、Ⅱmのいずれかで始まり、属音(ドミナント)であるⅤやⅢmで始まるサビは比較的珍しいです。カノン進行を逆にしただけなのに、それだけでほとんど使われないというのも不思議な感じですね。
誤解のないように言いますと、珍しいというのは「最初の2つとして使われる場合」であり、Ⅴ→Ⅰ自体が部分的に登場するのはごくごくありふれたことです。なぜなら、「ドミナントモーション」とも言われ、Ⅰの登場によってつよい完結感を与えるからです。完結感を与えてしまうからこそ、出だしのコード進行としてはあまり使われないのだと思います。ちなみに、Ⅴにはセブンスがつくことが非常に多いです。
例)
- あなたに会えてよかった/小泉今日子
Ⅲm→Ⅵmパターン
上記と同じドミナント→トニックですが、こちらはマイナーコードです。こちらもサビの先頭としては珍しいですが、Bメロなどではむしろ定番の進行です。
例)
- 家へ帰ろう/竹内まりや
Ⅰ→Ⅲパターン
ここからは、ダイアトニックコードに含まれていないコードを使用する例を挙げていきます(どういう意味かというと、たとえばCメジャーの曲であれば、ピアノの黒鍵盤を使わないと演奏できないコードという意味です)。
Ⅰ→Ⅲのコード進行はⅠ→Ⅲmと1音だけしか違いませんが、Ⅲに含まれるⅤ#の音が、独特の深みや切なさを感じさせます。スケールに含まれないコードを使う割には、使用例は比較的多い方だと思います。
Ⅲの次はⅥmが来ることが多いです(セカンダリードミナントモーション)が、Ⅳが来ることもあります。ベースコードを使用してⅠ→Ⅲ/Ⅶ→Ⅵmと、徐々にベース音を下げるテクニックも良く用いられます。
例)
- 揺れる想い/ZARD
- しるし/Mr.Children
- TSUNAMI/サザンオールスターズ
- ありがとう/いきものがかり
Ⅰ→Ⅰaug5パターン
Ⅰ→Ⅲパターンと響きは非常に似ているのですが、2つ目のコードにⅦの音を含むか、Ⅰの音を含むかが異なります。このあとはI6→Ⅰ7と、ベースラインと真ん中の音が変わらず、最高音のみが1つずつずれていくパターンが、多くの曲で使われています。
例)
- 台風ジェネレーション/嵐
Ⅵm→Ⅲパターン
Ⅵm→Ⅲmパターンと似ていますが、こちらも独特な深みや切なさを感じる進行です。歌謡曲でも多く使われています。ベースコードを用いてⅥm→Ⅲ/Ⅴ#という進行もよく使われます。
例)
- 愛の言霊/サザンオールスターズ
- 愛のままで・・・/秋元順子
- 愛されるより愛したい/KinKi Kids
- VALENTI/BoA
Ⅳ→Ⅲパターン
不安定なⅣで始まり、不思議な感覚のⅢが続きます。この次に来るのはⅥmが圧倒的に多く、Ⅳ→Ⅲ→Ⅵmでワンセットと考えるべきかもしれません。Ⅳ→Ⅲmパターンと同じくVOCALOID楽曲で多い傾向にあります。
例)
- サマーナイトタウン/モーニング娘。
- 夜空ノムコウ/SMAP
Ⅱm→Ⅲパターン
Ⅳ→Ⅲと似た進行ですが、こちらがサビの先頭に登場するのはかなり珍しいでしょう。やはりこの後にはⅥmがくることが圧倒的に多いです。
例)
- 制服が邪魔をする/AKB48
Ⅵ→Ⅱmパターン
Ⅱmへのセカンダリードミナントモーションです。Ⅵ→Ⅱmという進行自体は珍しくはないのですが、どちらかと言えば、サビがⅡmから始まる曲で、その導入としてⅥが使われることが多いです(ラルクの「HEAVEN’S DRIVE」など)。しかし、いきなりⅥコードから始まる進行も、ないわけではありません。
例)
- メリッサ/ポルノグラフィティ
Ⅰ→Ⅱパターン
サビの2番目でⅡのメジャーコードが登場することは珍しいのですが、ちょっと変化を出すために使われることが多いです。ロックな曲だとこの後はⅣ→Ⅰと進むことが多く、ハイテンポなダンスチューンだと、Ⅳm→Ⅰと進んで完結する進行がよく見られます。
例)
- Blowin’/B’z
Ⅵm→Ⅱパターン
Ⅵm→Ⅱmの進行は哀愁漂う、悲しい感じの響きでしたが、2つ目のコードが半音変わっただけのこの進行は逆に明るさも感じる進行になっています。
例)
- うわさのキッス/TOKIO
Ⅰ7→Ⅳ7パターン
Ⅰ7とⅣ7のセブンスの音はスケール上には存在しない音なのでポップスでは珍しい進行ですが、ロックンロールの音楽においてはむしろこの進行が典型的なパターンとなっています。単にⅠ→Ⅳという進行とは大きく異なる響きを持つので、それとはパターンを分けさせてもらいました。
例)
- ロックン・オムレツ/森高千里
Ⅰ→Ⅰ7(またはⅢdim)パターン
Ⅰ→Ⅰでも良いところを、あえて2つ目をⅠ7にするところで、大きな変化を出すことができます。この次のコードはⅣであることが多いです。
単にC→Fとするのと、C→C7→Fとするのと、どう響きが異なるのか、楽器が手元にある方はぜひ弾いてみてください。
例)
- 贈る言葉/海援隊
その他のコード進行
ここまで30弱のパターンを挙げてきました。実証したわけではないのですが、ここまでのコードパターンで、日本でヒットしているほとんどの曲を分類できると思います。ただし、もし、これ以外にも多くの曲で使われているパターンが漏れていたら、随時追加していきたいと思います。
まとめ
かなり長くなってしまいました。最初の方でも書きましたが、これはあくまで僕が独断と偏見により分類しただけのものです。ここで得た知識が直接何かの役に立つことはないかもしれません。
しかし、例えば作曲を目指している人が、上で挙げたコードを演奏することで、何かひらめくかもしれません。また、この曲とこの曲が同じコード進行なのだという豆知識を持っていただけるかもしれません。それらのちょっとしたひらめきや知識を持っていただいただけでも、僕としては長文を書いた甲斐があるというものです。