コード進行に著作権はあるか?


コピーライトマークとコード進行

本記事では、音楽のコード進行に著作権が発生するかについて語っていきたいと思います。

内容としては大きく分けて2つあり、1つは「既存の曲とコード進行が同じオリジナル曲を作曲して、発表しても良いか」という点、もう1つは「既存の曲のコード進行を、自分のブログなどに載せても問題ないか」という点です。

特に、後者は僕のブログのメインコンテンツに関わる部分なので、推測に頼らず、実際にJASRACに問い合わせた結果を基に記事を書きました。

既存の曲と同じコード進行の自作曲を、公開しても良い?

これに関しては、もちろん答えはYesです。たとえば、有名なコード進行として「カノン進行」「王道進行」といったものがあります。これらのコード進行を持った楽曲はJ-POPでも洋楽でも毎年のように多数のヒット曲を出しています。もしコード進行に著作権があるのならば、世の中の楽曲は盗作だらけで、作曲家のほぼ全員が違反をしており、それを避けるために、奇抜なコード進行の曲を作るしかない、という事態になってしまいます。

もちろん実際にはそんなことはありませんし、コード進行が同じで裁判となった事例もありません。過去に盗作がらみで問題になったケースというのは、ほとんどが歌詞かメロディーが似通っていた場合なのです。

コード進行を2小節、あるいは4小節程度なら、既存曲を参考にして同じコードを使う、ということは、作曲においてむしろ推奨すべきことだと思います。逆に、今までに聴いたことがないようなオリジナルのコード進行など、プロでもなかなか作れるものではないでしょう。楽曲を聞いて、良いと思ったコード進行はどんどん書き溜めておいて、自分の楽曲にも積極的に使っていくことは、何の問題もありません。

他の曲を真似しないように意識していても、「このコード進行いいかも」と自分で思いついた(つもりになっている)コード進行というのは、たいていは他の曲でも使われていることがほとんどでしょう。

実際に、僕は様々なアーティストの新曲を毎日のように聴いていますが、「このコード進行は初耳だ」と思った経験はほとんどありません。アレンジやメロディで目新しいものはあっても、コード進行は使い古されたものがほとんどなのです。

とはいえ、著作権云々の前に、1曲を通してコード進行を丸ごと真似するような作曲はよろしくないでしょう。なぜなら、そのような行為をすることは「私は作曲のセンスがありません」と言っているようなものだからです。数小節がコードが同じという事は頻繁におこりますが、1曲全部のコード進行がたまたま全く同じという事態は、確率的にもほぼありえないはずです。

既存の曲のコード進行を、自分のブログに載せても良い?

前節の問題は、あくまで曲はオリジナルで、コード進行だけ既存曲と同じというケースだったので、ちょっと考えれば問題などあるはずないということが分かったかと思います。しかし今度は、実際に発売されている楽曲のコード進行を載せるということで、上で述べたことよりも厳密な議論が必要になります。

たとえば、自分のサイトに既存曲の情報を掲載する方法の中で、一番極端な例を挙げてみます。「既存の曲をmp3ファイルなどに取り込んで、自分のブログでその音源を流す」という行為はOKでしょうか?

答えはもちろん「NO」です。これは誰でもわかりますね。人様の著作物(知的財産)である楽曲を、権利者に無断で、誰でも聴けるような状態にするのはダメなのです。

(話は少しそれますが、僕のブログで、音楽PVがYoutubeで再生できる記事がありますが、あれはどうなんだ?と思われるかもしれませんので一応説明しておきます。一見すると、ブログに動画を貼っているように見えるかもしれませんが、実質的には、「動画をアップしている」わけではなく「動画へのリンクを作成している」であり、これはYoutubeでも公式に許可されている方法です。)

では、音楽ファイルをそのまま公開するのがダメとしたら、「楽譜」を公開するのはどうでしょうか。これはちょっと考えてしまうかもしれません。「楽譜は楽曲そのものじゃないんだし、自分で耳コピした楽譜ならいいんじゃないの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、これも結論から言うとアウトです。楽譜は確かに音源そのものではありませんが、楽譜の通りに楽器を演奏すれば(あるいは歌えば)、原曲を再現できるものと言えます。もちろん、100%CDの音源通りに忠実に再現することはできませんが、その曲を特定できる程度には再現できるでしょう。楽曲を再現できる以上は、人様の知的財産を勝手に使ったということに等しいのです。

また、「歌詞」を載せることも当然ダメです。歌詞は「音楽」としての作品を演奏するためのものではありませんが、その作品に特有の知的財産であるからです。

では、コード進行(コード譜)はどうなのでしょうか?僕の記事では、コード進行を
|C|G|Am|Em|
のように、小説の記号と、コードの記号のみで表しています。これがOKかどうかは、コード進行を使ってオリジナルソングを作ることに比べると、必ずしも明らかではありません。

そこで、あれこれ考えるよりも実際に問い合わせてみるのが早いと思い、JASRAC(日本音楽著作権協会)のお問い合わせフォームから問い合わせてみました。

質問内容は、「流通している音楽について、|C|G|Am|Em|のような記号でコード進行を記載したものを、曲名とともに自分のブログに掲載しても良いでしょうか?ただし、メロディーがわかる譜面や歌詞などは掲載しません」といった内容です。これに対しては1日程度で以下の回答を頂きました。

お世話になります。JASRACネットワーク課の○○と申します。譜面の利用につきましては、その譜面のみを見て、楽曲の再現(演奏)が可能な場合に、お手続き(使用料のお支払い)を頂戴しております。

今回のお問い合わせの件につきましては、歌詞・楽譜は伴わずコードネームのみが記載されており、楽曲の再現(演奏)が不可能であることから、現状お手続き(使用料のお支払い)はいただいておりません。

担当者名の所は伏せたり、太字の設定をしたりはしていますが、それ以外は原文をそのまま掲載しております。

上記の返答から、既存曲の楽譜に著作権の発生するか否かは、「その譜面だけを見て楽曲の再現(演奏)が可能かどうか」によって決まり、僕のブログにあるようなコード記号の羅列だけでは楽曲を再現することは不可能だから、著作権的に問題はない、ということがわかります。

日本において音楽の著作権を取り扱う会社であるJASRAC様からこのようなご回答を直々にいただけたことにより、僕のブログのコンテンツが違法でないことが明らかになったわけで、僕自身も安心しています。

ただし、逆にいえば、「歌詞」や「楽譜(メロディーラインやTAB譜)」が含まれていたらアウトの可能性が高いので、その点は注意してコンテンツを投稿していきたいと思います(TAB譜は微妙なところで、コード進行を機械的にTAB譜に直しただけなら、単なる言語の置き換えみたいなものなのでOKでしょうが、原曲で弾いている実際の弦の位置に忠実なTAB譜を書くのはアウトだと思われます)。

また、「現状~の必要はありません」と表現をされているように、あくまでこれは「現状」(2016年8月現在)の話です。今は問題なくても、今後法令が変わって、コード進行だけでもアウトになる、という可能性は0ではありません(そうならないのを祈るばかりですが…)。あくまでこの記事は2016年8月の時点で正しい文章である、ということは頭に入れて読んでいただきたいと思います。

実は、2005年くらいに書かれた記事で、ほとんど同じような回答をJASRACから得ていたという実例があることは知っていたのですが、10年経てば法令も考え方も変わるので、念のために今回のようなお問い合わせをさせていただいたのでした。前例と同じ内容の回答で正直ほっとしています。

まとめ

今回、コード進行の著作権について書かせていただきました。結論としては、既存曲のコード進行と同じオリジナルソングを作ることに関しても、既存曲のコード進行を掲載することについても、著作権的には問題がないということになります。

ただし、それはあくまでコード進行だけについての話です。メロディーや歌詞などについてはいずれも「知的財産」(あるいは「著作物」)であり、これらを流用・無断掲載などをしたら違反になる可能性が高いでしょう。

コード進行が問題ないとは言っても、楽曲の作成時や、楽曲に関する記事の作成時には、著作権について十分注意しなければいけない、ということは言うまでもありません。

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