欅坂46「サイレントマジョリティー」「山手線」のコード進行解析


本記事では、欅坂46のデビュー曲「サイレントマジョリティー」および、そのシングルTYPEAに収録されている「山手線」のコード譜と、簡単な解説を書いていきます。コード譜は耳コピで行っておりますので、必ずしも正確である保証はありませんがご理解いただければ幸いです。

発売から日が過ぎていますが、何故今になってこの作品を紹介するかというと、当ページの読者の方より、「山手線」のコード進行を解説してほしいというリクエストをいただいたからです。この曲は初耳だったのですが、表題曲の「サイレントマジョリティー」は特徴的なコード進行を持った楽曲で、いつか記事にしたいと思っていたので、リクエストに便乗する形で、表題曲の「サイレントマジョリティー」と、リクエストいただいた「山手線」の2曲のコード進行を可能な限り解説させていただきます。

「サイレントマジョリティー」のコード進行

●イントロ
|G#m7|EM7|B|F#|
|G#m7|EM7|B|F#|
|E|F#|

●Aメロ(1コーラス)
|G#m|F#|E|F#|
|G#m|F#|E F#|G#m|
|G#m|F#|E|F#|
|G#m|F#|E F#|G#m|

●Bメロ
|EM7|F#/E|D#m7|G#m|
|C#m7|D#m7|A|C#sus4・C# Bsus4|Bsus4 B G#(3拍)|

●サビ
|Fm D♭|E♭ A♭|Fm D♭|E♭ A♭|
|Fm D♭|E♭ A♭|Fm D♭|E♭ A♭|
|Fm D♭|E♭ A♭|Fm D♭|E♭ A♭|
|Fm D♭|E♭ A♭|Fm D♭|E♭ A♭|

●間奏1
|D♭|E♭|

●Aメロ(2コーラス)
|G#m|F#|E|F#|
|G#m|F#|E F#|G#m|

※Bメロ、サビ繰り返し

●間奏2
|D♭ E♭|Fm|D♭ E♭|Fm|
|D♭ E♭|Fm|D♭ E♭|Fm|

●Cメロ
|D♭ E♭|Fm|D♭ E♭|Fm|
|D♭ Cm7|Fm B♭7|D♭|C7|C7|

※サビ繰り返し

●後奏
|D♭|E♭ A♭|
|Fm D♭|E♭ A♭|Fm D♭|E♭ A♭|
|Fm D♭|E♭ A♭|Fm D♭|E♭ A♭|
|Fm D♭|G♭ A♭|

イントロとサビで使われているコード進行は、Ⅵm→Ⅳという「小室進行」で、カッコいい系の楽曲で多く使われるコード進行。また、Bメロでは「王道進行」という非常にポピュラーなコード進行が使われていますが、本曲のコード進行における特徴は、なんといってもBメロからサビに至る転調の部分と言えるでしょう。

転調そのものは、G#マイナーからFマイナーへの転調となるので、キーが3つ下がる「同主調」(厳密には「平行調の同主調」)への転調という事になります。その転調自体はが特に珍しいという事ではなく、むしろ、転調の中では最もポピュラーなものと言ってもいいのですが、この曲では転調の直前に変わったコード進行が使われているため、他で聴いたことがないような響きを持っているのです。

まず、A(Ⅶ♭)というノンダイアトニックコードが登場します。「次にF#(Ⅴ)が来て無難に落ち着くのかな」、と思いきや、更にC#(Ⅱ)sus4→B(Ⅰ)sus4という変化球。この時点でもはや調性がどうなっているのかわからなくなります。このコード進行だけ見ると、Bsus4から誘導されるのは、Eメジャー(またはC#マイナー)の調であるように思えます。しかし、実際にはBsus4とは関連の薄いFマイナーの調が来ています(なお、コード譜ではBsus4のあとにG#というコードが1拍だけ鳴っているように聴こえますが、大手のコード譜掲載サイトでは、いずれもこのコードは掲載されていませんでした。Bsus4は、Bsus4としているサイトと単にBとしているサイトがあり、大手サイトでもこの部分の耳コピには苦労されたのだろうなという感じが伝わってきます)。

普通、転調の直前に変わったコードを使用するのは、転調後の調においてよく使われるコードを橋渡しにする役割が多いのですが、この曲の場合は、Csus4→Bsus4という、転調前から見ても転調後から見ても、直接的につながりがないコード進行であり、そのために、二段階の転調が行われているように聴こえました。3音下げというありふれた転調ですが、間に挟むコードによってここまで印象が変わるのかという感じですね。ものすごいインパクトがあるように感じました。

更に言うと、この部分は、リズムに注目しても面白い特徴を持っており、Bメロの最後の小節(もしくはその前の小節かもしれませんが)は、拍を数えてみると、4拍子ではなく3拍子になっていることがわかります。本曲のサビの直前は、コード進行的にもリズム的にも超変則的なテクニックが使われていることがわかります。

他にも本曲は特徴的なことがあり、ヴォーカルのキーに着目すると最高音は「レ♭」、最低音は「ソ」で、音域は1オクターブ+6音の、平均よりはちょっと音域が広いかなあ程度の数字に思いますが、本曲の大部分は最低音から1オクターブ以内の低音域にまとまっており、最高音やその周りの音が使われる部分はほんのわずかです。したがって、本曲は最近のJ-POPの中においては極めて低音域が多く使われている楽曲であることが言えます。声が高めの女性にとっては、低すぎて苦しいという方もいらっしゃるかもしれませんね。

また、音楽的なことではありませんが、本曲の歌詞は恋愛を歌ったものではなく、政治的なメッセージも見え隠れする楽曲で、AKB48を中心とするアイドル曲のこれまでの路線とは、色々な意味で異色の存在であり、デビュー曲としては冒険をしたなあという感想を抱きました(結果的には大ヒットになりました)。

「山手線」のコード進行

●イントロ
|Gm|Cm|F|B♭M7|
|Am7|D/F#|Gm|Gm|Gm|Gm|

●Aメロ
|Em|D|C D|G|
|Am7|Em|F#|B7|
|Em|D|C D|G|
|Am7|Em|Am7 B7|Em|

●Bメロ
|C|D|B/D#|Em G/D|C#m7-5|
|F#m7-5|B7|B7|B7|

●サビ
|Gm|Cm|F|B♭M7|
|E♭|Cm|Am7-5|D|
|Gm|Cm|F|B♭M7|
|E♭|Dm7|Cm7 D7|

●間奏1
|Gm|Cm|F|D B7|

※Aメロ、Bメロ、サビ繰り返し

●間奏2
|Gm|Cm|F|B♭M7|
|Am7-5|D7|D7|D7|D7|(N.C.)|

●Cメロ
|Cm7|F|B♭M7|E♭|
|Am7-5|D7|Gm|G|
|Cm7|F|B♭M7|E♭|
|Am7-5|D7|E♭|D7|(N.C.)|

●ラスサビ
|G#m|C#m|F#|BM7|
|E|C#m|A#m7-5|D#|
|G#m|C#m|F#|BM7|
|E|D#m7|C#m7 D#7|G#m|
|E|D#m7|C#m7 D#7|

●後奏
|G#m|C#m|F#|BM7|
|A#m7|D#/G|G#m|G#m|G#m|G#m|

いわゆる「昭和歌謡」と呼ばれるジャンルに属する、哀愁漂う楽曲で、70年代~80年代頃に流行った楽曲で多く使われたコード進行やアレンジが多数使われています。

たとえば、イントロやサビで使われるⅥm→Ⅱm→Ⅴ→Ⅰというコード進行は、昭和歌謡でも人気ナンバーワンと思われる典型的なコード進行であり、また、AメロのF#(Ⅶ)→B(Ⅲ)7という部分も、近年のポップスでは使われることが少なくなった、強いインパクト・切なさを感じるコード進行です。

ただ、昭和時代の楽曲ではあまり用いられていなかった手法も使われており、それが、イントロからAメロに至る部分とBメロからサビに至る部分で使われている転調です。

まず、イントロからAメロにかけてですが、ここでは特に橋渡しのコード等は存在せず、GマイナーからEマイナーに突然転調しています。キーが3つ下がっているので、前述の「サイレントマジョリティー」と同じタイプの転調なのですが、ちょっと聞いただけでは、この2曲が同じタイプの転調が使われているとはとても思えないのではないでしょうか。

「サイレントマジョリティー」では間に複数の変わったコード進行が挟まれることにより、二段階の転調のようになっているのに対し、「山手線」は、間に何のコードもなく突然転調が完了する、これ以上ないシンプルな転調であり、同じタイプの転調ではあってもその手法は両極端ですね。

また、Bメロからサビに至る部分では、B(Ⅲ)7というコードからGmに転調(キーが3つ上がる転調)しています。転調前がEmで、転調後がGmなのだから、橋渡しとしてはDというコードを挟むのが最も自然なのですが、あえて転調後のキーでは不自然さを感じるB7を間に挟んでいます(B7とGmは関連性が薄く、DならばGmともEmとも関連性が濃い、という意味です)。ということは、どちらかといえば、自然に転調するというよりは、転調そのものによってインパクトを出す意図があったのではないかと感じました。Aメロに入る部分も、サビに入る部分も、新しい小節に入って初めて「転調したこと」が確定しており、これは、「サイレントマジョリティー」が、サビの直前から「いかにも転調しそう」という雰囲気を醸し出していたのとは大きく異なる点です。

Cメロからラスサビに至る部分でも転調が使われていますが、これは、キーが1つだけ上がる転調で、サビの盛り上がる部分では多くの楽曲で使われているタイプです。間のコードは、コードを同定するのが難しく(N.C.)と記載しましたが、あえて書くとすればD→E♭という表記になるでしょう。この部分の伴奏によって半音上げの転調が不自然にならないように工夫されているように思います。

メロディーや伴奏はよくありがちな昭和歌謡的な構成ながら、随所に現れる転調が近年のオシャレなJ-POPらしさも出しており、新旧の両方の味が出た楽曲だと思います。

今後もたくさんの楽曲のコードを掲載していきたいと思いますので、当ページをよろしくお願いいたします。

欅坂46の楽曲については以下の記事でもコード進行を解説しております。

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