本記事では、2016/11/09発売の乃木坂46の楽曲「サヨナラの意味」のコード譜と、音楽的な解説、および楽曲を聴いた感想を記していきます。
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「サヨナラの意味」の概要
本曲は、乃木坂46の16枚目のシングル曲です。乃木坂46では「制服のマネキン」「君の名は希望」等を担当した杉山勝彦氏が作曲、作詞はおなじみの秋元康氏です。
「サヨナラの意味」のコード進行
●イントロ
|E♭|B♭/D|G G/B|Cm|
|A♭|E♭/G|Fm|B♭|
|E♭|B♭/D|G G/B|Cm|
|A♭|E♭/G|Fm|B♭sus4 B♭|
●Aメロ
|E♭|B♭/D|G G/B|Cm|
|A♭|E♭/G|Fm|B♭|
|E♭|B♭/D|G G/B|Cm|
|A♭|E♭/G|Fm|B♭G/B|
●Bメロ
|Cm|A♭|B♭|E♭B♭/D|
|Cm|A♭|B♭|B♭|Csus4|C|
●サビ
|F|B♭|C A/C#|Dm F/C|
|B♭|F/A|G G/B|C|
|F|B♭|C A/C#|Dm F/C|
|B♭|F/A Dm|Gm F/A|B♭ C|
●間奏1
|F|A♭B♭|
※Aメロ~サビ繰り返し
●間奏2
|F|C|
●Cメロ
|B♭|C/B♭|Am7|B♭|
|B♭|C|F|Am7/E|
|Dm7|B♭|C|F C/E|
|Dm7|B♭|Csus4|C|Csus4|C|
●ラスサビ
|F|B♭|C A/C#|Dm F/C|
|B♭|F/A|G G/B|C|C|C#7|
|F#|B|C# A#/D|D#m F#/C#|
|B|F#/A#|G# G#/C|C#|
|F#|B|C# A#/D|D#m F#/C#|
|B|F#/A# D#m|G#m F#/A#|B C#|
|G#m F#/A#|B C#|G#m F#/A#|B C#|
|F#sus4|F#|
イントロ
本曲のキーは、イントロからBメロまではE♭メジャーで、楽譜だとミ、ラ、シの3音に♭がつく調です。サビで転調していますが、それについては後述します。
イントロの前半8小節はピアノオンリーの演奏。コード進行は、E♭(Ⅰ)→B♭(Ⅴ)のカノン進行系ですが、3~4小節目で、G(Ⅲ)→C(Ⅵ)mという、Ⅲからマイナートニックへのモーションが使われており、ノンダイアトニックコード独特の切なさとインパクトを感じる箇所になっています。更に、3小節目では同じGというコードが、前半と後半で異なるルート音によって弾かれることで、同じコードなのに少しだけ変化したような印象も与えてくれます。
後半8小節目では、ストリングスも入りますが、よくよく耳を澄ませて聞くと、打楽器系の音も徐々に入っており、16ビートを奏でていることがわかります。バラードのようなピアノ・ストリングスメインの伴奏でいて、かすかに聞こえるノリの良いリズムが、先を聴くのを楽しみにさせてくれます。
Aメロ~Bメロ
Aメロは、イントロのコード進行と主旋律をほぼ踏襲したパートになっています。ここに来ると打楽器の音はハッキリと聞こえます。
Bメロは、C(Ⅵ)m→A♭(Ⅳ)の、典型的な「小室進行」というコードのパターンに、輪唱が行われてヴォーカルの音が絶えないようになっています。最後の小節ではCsus4→Cというコードが使われており、この進行により、ほぼ間違いなく次のパートから転調するだろう、ということが推測できます。
サビ
キーがE♭からFに転調します。この転調は、Bメロ最後のCsus4→Cというコードが、ドミナントモーションで自然な形でFを誘導したことにより、違和感がなく行われています。キーが2つ上がる(♭が2つ減る)転調で、乃木坂46では「何度目の青空か?」が同じように♭が2つ減る転調です(ちなみに、このタイプの転調に限らず、Bメロからサビに移行するときに転調が行われるシングル曲は、乃木坂46では「何度目の青空か?」以来となります)。
サビのコード進行は、F(Ⅰ)→B♭(Ⅳ)と進むⅠ→Ⅳパターン。このパターンは、名前は特に付けられていませんが、非常に多くの楽曲で使用されており、AKB48関連のシングル曲のサビを集計した際には、使用率は第5位のコード進行でした(以下の記事参照)。
上記の記事ではAKB48系統のシングル曲で、この進行の楽曲を6つ挙げていますが、特に本曲と似ているコード進行の楽曲はNMB48の「北川謙二」です。曲調は全然違うので、本当かと思う方も多いかと思いますが、コード進行としては(キーをそろえれば)サビの最初から5つまでは共通しています。
サビから2コーラスのAメロに至る短い間奏では、キーをE♭に「戻す」ためのA♭→B♭というコード進行が使われています。この2つのコードを先に出すことで、Aメロで唐突に転調したという印象は受けず、転調による違和感を、直前のパートに移すことができるのです。
Cメロ、ラスサビ
2コーラス明けのCメロは、B♭(Ⅳ)→C(Ⅴ)→A(Ⅲ)m7という「王道進行」。当曲は、「カノン進行」(イントロとAメロ)、「王道進行」(Cメロ)、「小室進行」(Bメロ)、「Ⅰ→Ⅳパターン」(サビ)と言った具合に(変形もありますが)、多くのアーティストで上位の使用率を誇るコード進行が贅沢に(?)使用されているのが1つの特徴と言えるでしょう。
ラスサビでは、C#7というコードを橋渡しにして、F#キーへの転調が行われています。この転調は、古くから多くの楽曲の一番盛り上がる部分で行われてきた「半音上げ」のテクニックです。
本曲のヴォーカルの最高音はラスサビで何度か使われている「ド#」、最低音はAメロで「♪誰が誰に」という部分で一瞬だけ登場する「ソ」、音域は1オクターブ+6音です。
本曲は、出だしから音が綺麗で、イントロの時点では静かな伴奏にもかかわらず、音圧による迫力を感じました(このような感想は、「何度目の青空か?」を初めて聴いた時も感じました)。また、バラードのようなイントロから、徐々にリズムを入れていって、サビではノリの良いアイドルソングになっているという構成も大変すばらしいと思います。乃木坂46のシングル曲はどれも素晴らしいと思いますが、本曲は音楽的に見ても、これまでの楽曲に引けを取らない名曲だと思いました。