本記事では、Poppin’ Partyの楽曲「Returns」のコード譜と、簡単な解説を書いていきます。コード譜は管理人の耳コピによるもので、必ず正しいという保証はできかねますのでご了承ください。
また、本記事では、コードについて全く分からない方でも楽しめるように、最後の方に少しだけアニメ的な考察も入れています。そこだけでも興味があれば読んでいただけたらうれしいです。
「Returns」の概要
本楽曲は、アニメ「BanG Dream!」の第11話と第12話で挿入歌として使用されたもので、また、同名のスマホアプリにおける選曲可能な楽曲としても配信されています。
CD等の発売情報は、2019/3/25現在未定です。本曲はまだ公式動画等もありませんので、普通なら記事を書くこともないのですが、管理人が個人的にとても気に入ったため、動画無しでの記事投稿となりました(笑)。全員バージョンのコード譜を記載していますが、花園たえバージョンは、全てのコードを3音下げれば演奏できます。ただし、後述するように、一カ所だけバージョンによりコードが異なる部分があります。
「Returns」のコード進行
●イントロ
|Am7|F|G|C G/B|
|Am7|F|G|C G/B|
●Aメロ(♪生まれた場所から少し離れて)
|Am|F|G|C G/B|
|Am|F|G|C G/B|
|Am|F|G|C G/B|
|Am|F|G|C|
●Bメロ(♪遠く離れれば離れるほど)
|Em|C|G|D B/D#|
|Em|C|D|B/D# B|※たえのソロとコードが違う。本文参照。
|Em|C|G|D B|
|C|C|D|D|
|Esus4|Esus4|E|E|
●サビ(♪どんなに空がまぶしくても)
|Am|F|G|C G/B|
|Am|F|G|C G/B|
|Am|F|G|C G/B|
|Am|F|G|C|
|Am|F|G|C G/B|
|Am|F|G|E/G#|
|Am|F|G|E/G#|
|Am Em|F C|B♭Bm7-5|E|
●間奏
|Am|F|G|C G/B|
|Am|F|G|C G/B|
●ラスト(♪ありがとう)
|Am|F|G|C G/B|
|Am|F|G|C G/B|
|Am|F|G|C G/B|
|Am|F|G|C G/B|
|FM7|
| ←この記号は小節の区切りを表します。
・ ←この記号は一拍分だけ直前と同じコードを鳴らすことを意味します。A・・BならAを3拍、Bを1拍です。
/ ←この記号で区切ったものは分数コードです。分母にある音を最低音にして演奏してください。多くの場合、分子のコードよりも最低音が分母の音であることの方が重要です。
※文中のローマ数字は、マイナー調楽曲の場合でも平行調のメジャー調における記載としています(例:マイナートニック=Ⅵm)。
アニメ作中において、Poppin’ Partyのメンバーの花園たえが、バンドの掛け持ちをした事に端を発して、メンバー内の関係が一時ぎくしゃくしました。紆余曲折あって、結局掛け持ちをやめてPoppin’ Partyに戻ることを決意したのですが、その際に今の気持ちを表す曲として、たえが他の4人のメンバーの前で披露した…と言う設定の楽曲です。現実の作詞者は中村航氏、作曲は上松範康氏、編曲が藤田淳平氏です。
楽曲のキーはサビがAマイナー(Cメジャー)。11話のたえのソロではF#マイナー(Aメジャー)での披露でしたが、戸山香澄ヴォーカルの全員バージョンでは、3キー上がってAマイナーとなりました(この際、コードが一部変更になっている部分があり、後述します)。
本曲では、イントロ、Aメロ、Bメロ、サビとすべてのパートで、Ⅵm→Ⅳの「小室進行」から始まっています。Poppin’ Partyでは「Time Lapse」や「走り始めたばかりのキミに」等と同じパターンです。しかし、Aメロ、サビ等ではAm→Fとなっているのに、BメロだけEm→Cという異なるコードが使われています。これは、Bメロだけ転調しているためです。
Bメロの調はEマイナー(Gメジャー)調で、Aメロ等がAマイナー(Cメジャー)調だったので、これは、「属調」への転調(#が1つ増え、キーが5つ下がる)であることがわかります。この転調は何の前触れもなく、突然行われていますが、それにしてはそれほど不自然な感じは受けなかったのではないかと思います。これは、「属調」への転調は、使用される音(あるいはダイアトニックコード)が多く共通しているため、転調にともなう違和感がそれほどではない、という特徴があるためと思われます。
次に、その転調を「元に戻す転調」(Bメロ終り~サビにかけて)を見てみましょう。属調から元のコードへの転調なので、言い換えればこれは「下属調」への転調となります。Bメロからサビに至るところ(♪前を向いて歌う君に会いたい)では、C(Ⅳ)→D(Ⅴ)→E(Ⅵ)sus4→E(Ⅵ)というコード進行が使用されています。最後のE(Ⅵ)というのは、Am(Ⅱm)を強く誘導する性質があるのですが、このAmを、Eマイナー調のⅡmとしてではなく、Aマイナー調のⅥmとして働かせることで、見事に自然な転調が成し遂げられています。この部分はドラムのフィルインもあり、テンポも徐々に遅くしながら、ファルセットでのヴォーカルも相まって、本楽曲の見せ場の1つとなっていますね。
それから、もう一カ所、コード進行的に面白いのが、サビの「♪永遠と未来が混ざり合ってた」の部分の、A(Ⅵ)→E(Ⅲ)m→F(Ⅳ)→C(Ⅰ)→B♭(Ⅶ♭)→B(Ⅶ)m7-5→E(Ⅲ)という進行です。特に、最後のⅦ♭→Ⅶm7-5→Ⅲという並びはあまり見慣れないのですが、実際聴いてみると新鮮でハッとするような印象を受けました。Ⅶ♭は下属調(Fメジャー)からの借用コードであり、Ⅶ♭の後は下属調で使用されるコード(C, F, Am等)が来ることが多いのですが、それに該当しないBm7-5を入れてくるところが、作曲者(または編曲者)のセンスを感じられます(一瞬しか鳴っていないので、本当にBm7-5で合ってるのかの自信はないのですが、ルート音がBであることは間違いなく、下属調で使われないコードという記述は正しいはずです)。
ヴォーカルのキーは最高音がHi-F、最低音がMid2-B、音域は1オクターブ+6音。ポピパの他の楽曲と同様に、非常に高音域の音が多い楽曲となっております。たえのソロバージョンがMid-1G#~Hi-Dで、これでやっと標準的な女性アーティストの音域かなと言った感じです(それでもまだ高いと思われるかもしれません)。
ソロバージョンと全員バージョンの違い
以上で考察を終えてもいいのですが、11話の花園たえのソロバージョンと、12話の全員バージョンで、Bメロのコード進行が明らかに異なる部分があったので、それについて触れたいと思います。11話、12話を両方録画している方はぜひ観ながら読んでいただきたいです。
ちなみに、前述したように、たえバージョンと全員バージョンはキーが違うので、コードが違うのは当然と思われるかもしれませんが、キーは合わせた上での違いについてを述べるつもりです。
該当箇所は、Bメロの5小節目~8小節目の、「♪いとおしくて」の部分です。たえバージョンではアルペジオになっていますが、コードはC#m→A→E→B G#/C であることがわかります。これを、全員バージョンのキーに合わせて表記すると、Em→C→G→D B/D#となります。このコード進行は、その直前の「♪遠く離れれば~」の部分と全く同じであることがわかります。
一方、全員バージョンのコード譜(上に記載したもの)では、Em→C→D→B/D# Bとなっております。
まとめると、以下のようになります。
1小節目~4小節目(たえ・全員バージョンともに)|Em|C|G|D B/D#|
5小節目~8小節目(たえバージョン)|Em|C|G|D B/D#|
5小節目~8小節目(全員バージョン)|Em|C|D|B/D# B|
この違い(|G|D B/D#|と、|D|B/D# B|の違い)は、テンションコードの違いとかの耳コピで判別できないような微妙なものではなく、1回聴いただけでハッキリわかるレベルで、明らかに別のコードを奏でています。
何故このような違いが出たのかはわかりませんが、自分なりに妄想してみました(以下は、音楽的な考察よいうよりも、アニメ作品としての考察になりますので、興味がない方はご注意ください)。
当初のたえバージョンは、ストーリー上、曲が完成してほとんど間もなく全員の前に披露されています。また、たえ本人の精神状態も落ち着いているとは言い難い状態でした。よって、詞、曲、コードをつけるのが精いっぱいで、各パートの推敲をする余裕は回らなかったのだと推測されます。
しかし、この曲をバンドの楽曲としてアレンジする際に、おそらくメンバーの誰かが「この部分、同じパターンが続くから、少し変化つけた方がよくない?」という趣旨の発言をしたのではないでしょうか。ストーリー上で語られているのは、サビの最後に歌詞を追加したことくらいですが、それ以外にも語られていないところで色々な改良が加えられていることは間違いないでしょう。その改良によって、たえバージョンと全員バージョンでコードが変化した…等と勝手に妄想しました。この妄想が正しいか見当はずれか、明らかになる日は来るのでしょうか(笑)。
詞と曲だけの楽曲が、どのようにしてバンドの楽曲として編曲されていくかの過程を、アニメでもアプリでもいいので表現していただけたら嬉しいなあと、常日頃から思っています。歌詞が完成する過程は色んなアニメでもよく流れるんですけどね^^;
今回の記事は以上となります。音楽的な話から少しそれてしまったところが多かったですが、その分、バンドリファンの方にも読んでいただけたら幸いです。
今後もたくさんの楽曲のコードを掲載していきたいと思いますので、当ページをよろしくお願いいたします。