本記事では、斉藤和義の楽曲「アレ」のコード譜と、簡単な解説を書いていきます。コード譜は管理人の耳コピによって行っております。
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「アレ」の概要
本作はシンガーソングライター・斉藤和義の53枚目のシングル表題曲(2019/2/20発売)で、ドラマ「家売るオンナの逆襲」の主題歌となっています。
「アレ」のコード進行
●イントロ
|A|F|C|G|A|F|C|G|
●Aメロ(♪夕暮れ電車に)
|A|F|C|G|A|F|C|G|
●Bメロ(♪僕はそれを)
|F|F|A|A|F|F|E|E|
●サビ(♪タイムマシンは)
|A|F|C|G|A|F|C|G|
|A|F|C|G|A|F|C|G|
●間奏1
|A|A|A|A|
※Aメロ、Bメロ、サビ繰り返し
●間奏2
|A|A|A|A|
|F|F|A|A|F|F|E|E|
| ←この記号は小節の区切りを表します。
・ ←この記号は一拍分だけ直前と同じコードを鳴らすことを意味します。A・・BならAを3拍、Bを1拍です。
/ ←この記号で区切ったものは分数コードです。分母にある音を最低音にして演奏してください。多くの場合、分子のコードよりも最低音が分母の音であることの方が重要です。
本曲はリズムが打ち込みで作成されており、公式では「Roland TR-707」というリズムマシンを使用している、とあります。これは1980年代に使用されたもので、現在でも、DTMソフト等の音源プリセットに含まれていることがよくあります。現代の感覚からすると、「古臭い」ということになるのでしょうが、その古臭さがまたいい味を出しているように聴こえます。斉藤和義、というとフォークギターによるアコースティックな楽曲を勝手にイメージしていたので、打ち込みメインのこういった楽曲はとても新鮮でした。
さて、コードの話ですが、本曲のキーはAマイナー(Cメジャー)です。にも関わらず、マイナートニックであるAmは一度も使われず、代わりにA(Ⅵ)というノンダイアトニックコードがトニックのように使われています。Am→Fとすれば典型的な「小室進行」になりますが、ここをあえてA→Fとすることで、Aメジャーの明かるい感じの響きから、突然小室進行のような暗めの響きに変わるところのインパクトが出ています。
何故このような進行によってインパクトを感じるか推測してみました。コードAの構成音は「ラ・ド#・ミ」であり、このうち「ド#」の音がAメジャースケールには存在するが、Aマイナー(Cメジャー)スケール内に存在しない音であるため、最初の小節では人間の耳は無意識に「Aメジャーの楽曲である」と認識するのだと思います(Aメジャーなんて用語を知らない人も含めて、無意識にです)。
しかし、そこにFというコードがやってきます。このコードは逆に、Aメジャーにおいては「異物」で(「ファ」や「ド」といった構成音があるため)、本来ならばAマイナー(Cメジャー)の曲に含まれるコードです。
すると、人間の耳(あるいは脳)は、「さっきはAメジャーと思ってたのに、今度はAマイナーなの?あれれ?」となるわけです。この混乱こそが、「ノンダイアトニックコードが登場した時のインパクト」と言えるのではないでしょうか。この曲に関して言えば、後から出てきたFではなく、先に出ていたAこそがノンダイアトニックだったという点においては他の曲とは違いますが、本質は同じだと思っています。
殆どの人は「スケール」だの「ノンダイアトニック」だのを意識して曲を聴いてるわけはありませんが、無意識のうちに「異物」(ノンダイアトニックコード/スケール外の音)を感じ取って、それをインパクトとか感情とかにおきかえる、ということを人間の脳はやっているのだと考えています(以上、あくまで勝手な推測であることに注意してください)。
これはコードでの話であり、メロディーはBメロを除き、「ド#」という音を奏でてはいません。つまり、「コードがA(ラド#ミ)なのに、メロディーが『ド』」という箇所が数か所あることになり、「ド#」と「ド」が共存することによる不協和音感が出てもおかしくはないですが、音域や音色が異なっているためか、あまり気になりませんでした。
ヴォーカルのキーは、最高音がMid2-E、最低音がMid1-G、音域は9音となります。今回は本曲の解説というより、ノンダイアトニックの一般論(それも、僕による勝手な推測メイン)になってしまいましたね。
今後もたくさんの楽曲のコードを掲載していきたいと思いますので、当ページをよろしくお願いいたします。