当ブログでは、コード進行の耳コピ記事や、色々な楽曲をコードごとに分類する記事を書いてきましたが、その中で、あえてあまり触れていなかったことがありました。セブンスコードに関することです。
セブンスコードとは、C7、Cm7、CM7(またはC△7)と言った具合に、メジャーコードやマイナーコードの3音に加えて、長7度か短7度にある位置の音を加えた和音のことを言います。
本記事ではそれらの分類や特徴および、耳コピにおけるコツなどを語っていきたいと思います。
目次
セブンスコードの分類
セブンスコードの分類は、多くの音楽理論の教科書やサイトが、以下の4つで分類していると思います。すなわち、「セブンス」「メジャーセブンス」「マイナーセブンス」「マイナーメジャーセブンス」という分類です。これらは、1音目と2音目、および、3音目と4音目の長短度の場合わけによる分類です。最後の「マイナーメジャーセブンス」についてはほとんど使われないため残りの3つのみ紹介していることも多いのですが、いずれにせよ、この分類は長短だけによる分類のため、コード進行の流れの中でどういった響きがあるかの分類にはなっていません。
上記の分類も音楽理論においては非常に大切であり、当ページで解説してもいいのですが、あまりコテコテの音楽理論に走るのも好きではありませんし、これらの解説をするだけなら他にもっと素晴らしいサイトや書籍がありますので、この記事では、別の視点に立った分類を行っていこうと思います。
すなわち、「ダイアトニックのセブンスコード」か「ダイアトニックではない(ノンダイアトニック)セブンスコード」かです。
なぜこのような分類をするのかというと、それらのどちらの分類に属するかによって、曲を聴いた時の感覚が大きく異なるからです。例えば、同じメジャーコードでもトニック、ドミナント、サブドミナント、および、ダイアトニック以外のメジャーコードでは響きが異なって聞こえることがありますが、それと同じようなイメージです。
では、そもそも、ダイアトニックなセブンスコードやそうでないものとはどういった意味なのでしょうか。まずは「ダイアトニック」の意味から説明していきましょう。「ダイアトニックコード」とは、あるキーの楽曲に置いて、臨時調号を使わずに演奏できるコードのことを意味します。例えば、ピアノでCメジャーの曲を奏でる場合は、黒鍵盤を使わないコードという意味です。
このようなものは、メジャー、マイナーコードに限ると、Ⅰ、Ⅱm、Ⅲm、Ⅳ、Ⅴ、Ⅵmの6つあります(Ⅶdimもダイアトニックコードなのですが、話を簡潔にするため、今回は省きます)。
では、これらにセブンスを付けるとどうなるでしょうか?セブンスの付け方は、長7度でつけるか、短7度でつけるかの2通りありますが、臨時調号を使わない、すなわち、ダイアトニックであることを維持するような付け方は、各コードについて1通りずつしかありません。すなわち、以下のようになります。
Ⅰ△7、Ⅱm7、Ⅲm7、Ⅳ△7、Ⅴ7、Ⅵm7
トニックのⅠとサブドミナントのⅣの2つは長7度でセブンスを付けましたが、それ以外は短7度でつけていることが分かります。なぜこのようになるかを、例えばキーをCの場合で考えてみます。
キーがCの場合、トニック(Ⅰ)も当然Cです。これにセブンスを付ける場合、ドミソの後に7度の音を追加することになりますが、「ド」に対して短7度の音は「シ♭」で、長7度の音は「シ」です。黒鍵盤を使わないのは「シ」の方なので、トニックには「シ」すなわち、△7を付けた場合のみ、ダイアトニックコードになるというわけです。トニック以外のセブンスコードも、全て同じような考え方で特定することができます。
「ノンダイアトニックなセブンスコード」は上記以外のセブンスコードということになりますので、セブンスの長7度と短7度を逆にすれば得ることができます。
Ⅰ7、Ⅱm△7、Ⅲm△7、Ⅳ7、Ⅴ△7、Ⅵm△7
m△7という記号は見慣れないかもしれませんが、上記で述べたセブンスコードの通常の4分類のうちの1つで、「マイナーメジャーセブンス」等と呼ばれます。マイナーメジャーセブンスコードは、ベース音がどれであっても、必ずノンダイアトニックコードになります。
分類ができたところで、それぞれの特徴を述べていきたいと思います。
ダイアトニックなセブンスコードの特徴
ダイアトニックなセブンスコードは、臨時調号を使わずに構成できる、きわめて自然な響きを持ったコードになります。その自然な響きにより、セブンスがついていないメジャーコードまたはマイナーコードと、それほど変わらない響きに聞こえます。このような事を書くと、音楽をまともにやっている人に怒られてしまうかもしれません。実際には全く変わらないわけではなく、音楽に表情を付けるのに一役買っているのは間違いありません。しかし、これらのセブンスコードを使っている曲で、実際に演奏する時にセブンスを省いて演奏したとしても、聴いている人が物足りなさを感じることはあるかもしれませんが、原曲と明らかに違う、とまで思うことはほとんどないでしょう。つまり、ダイアトニックなセブンスコードは、「セブンスがなくてもそれほど不自然には感じない」ということが言えると思います。
たとえば、Ⅰ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅲmといういわゆる「カノン進行」がありますが、これにセブンスを付けてⅠ→Ⅴ→Ⅵm7→Ⅲm7としたら「カノン進行」と呼ばないか?といったら、そういうことはないと思います。セブンスがついてもつかなくても、「カノン進行」に変わりはありません。もしこれらを別のパターンとみなしてしまうと、似たような響きなのに多数のパターンが存在することになってしまうのです。よって、僕のブログでコード進行をパターン分けするような記事においては、このような場合はセブンスを無視した形でパターン分けしているというわけです。
しかし、セブンスは全て無視しているかというと、そういうわけではありません。「ある場合とない場合で、はっきり異なるセブンス」も存在するからです。それこそが、次の「ノンダイアトニックなセブンスコード」になります。
ノンダイアトニックなセブンスコードの特徴
ノンダイアトニックなコードを使用すると、ダイアトニックのコードを使っている場所に比べて、聴いている人には大きな印象を与えます。たとえば、Ⅰ→Ⅲと進んだ場合のⅢや、Ⅵm→Ⅱと進んだ場合のⅡなどです。大きな印象とは、違和感であったり、感動であったり、不協和音であったりと、使い方によって色々ありえるのですが、曲の盛り上がる箇所で使われていることが多いです(もっとも、いくら感動を与えるとはいえ、このようなものを使いすぎると、曲の構成がめちゃくちゃになってしまうので、プロの作曲家は適度に必要な箇所にだけ使用しているのです)。
それはセブンスコードでも例外ではありません。たとえば、Ⅰ7のセブンスの音(最高音)は、Ⅶ♭という、メジャースケール上には存在しない音です。純粋な音楽理論から言えばルール違反とも言える音です。しかし、そのルール外の音が存在するからこそ、良い意味でも悪い意味でも人間の耳に強い印象を与えるのです。
例えば、海援隊の「贈る言葉」という楽曲を例に出してみたいと思います。その出だしである「♪暮れなずむ町の~」という部分では、F→F7→B♭というコード進行が使われています(F7の代わりにFonE♭と書かれているサイトもありますが、構成音は同じですので、F7で話を進めさせていただきます)。
この楽曲のキーはFであるため、F7というコード(Ⅰ7)はノンダイアトニックなセブンスコードになります。しかし、このコードを使うことによって、独特の切なさや哀愁を感じさせるフレーズになっているのです。もし、この部分が平凡にF→F→B♭と進行していたら、「贈る言葉」はあれだけ大ヒットしていなかったかもしれません(言い過ぎかもしれませんが)。それほど全く別の響きになるのです。
実際に楽器が手元にある方は、2つのパターン(F→F7→B♭と、F→F→B♭)を弾き比べてみてください。たった1音の違いなのに、全く別の印象に聞こえるのではないでしょうか?
セブンスコードの耳コピ
ダイアトニックなセブンスコードは、必ずしも重要ではない
セブンスコードを、そうでないコードと聞きわけるコツについて説明します。といっても、「ダイアトニックなセブンスコード」と、セブンスがついていないコードの聞きわけは至難の業です。何故ならば、上で説明したように、セブンスがついていてもついてなくても、響きが大きく変わらないからです。
ただし、難しいからと言って悲観的になることはありません。響きが大きく変わらないということは、無理してセブンスかそうでないかを聞き分ける必要は、必ずしもないからです。耳を凝らして聞いてみてもセブンスかそうでないかわからず、両方のコードで演奏しても違和感を持たないのであれば、どちらでも正解ということになるでしょう。それが実際のコードと実は異なっていたとしても、違和感を持つ人はほとんどいないと思います。
コードの耳コピにおいては、コードのルート音や、メジャーorマイナーの聴き取りの方がはるかに重要であり、ダイアトニックなセブンスについては、なんとなく「ここはセブンスだな」「ここはセブンスではないな」といった程度でも十分だと思います。いろんな楽器が鳴ってる楽曲を、1音1音完璧に耳コピするなどと言うことは、よほどの天才でない限り不可能なので、その点はあまり気にする必要はないと思います。
ノンダイアトニックなセブンスの耳コピは重要
しかし、セブンスを付けることでノンダイアトニックコードになる場合は話は別です。上で述べたように、この場合は、セブンスがあるかないかでは曲の表情がまるっきりかわってしまうからです。ですので、もし普通のメジャーコードやマイナーコードを弾いて、「不協和音ではないけど何か物足りない」という感覚になったら、セブンスコードを足して弾いてみる癖をつけるといいかもしれません。
まとめ
本記事では、楽曲の中で使われるセブンスコードは、ダイアトニックスケールかそうでないかによって、特徴が大きく異なることを説明しました。これはセブンスに限ったことではなく、ナインスなどのテンションコードでも同じようなことが言えます。曲を作る時も、耳コピをするときも、何の意味も分からずに適当にセブンスを付けるのではなく、音楽理論に基づいた考え方でセブンス等のコードも考えられるようになると、作曲や聴き取りの技術も一段と上がるかもしれません。
ダイアトニックと非ダイアトニックについて、より詳しく書いた記事を追加しました。