中島美嘉「Forget Me Not」のコード進行解析と楽曲の感想


本記事では、2016/10/22発売の中島美嘉の楽曲「Forget Me Not」のコード譜と、音楽的な解説、および楽曲を聴いた感想を記していきます。

「Forget Me Not」の概要

本曲は中島美嘉の41作目のシングル曲で、映画「ボクの妻と結婚してください。」の主題歌。この映画は、中島が歌手・女優としてデビューするきっかけになったドラマ「傷だらけのラブソング」(その主題歌がデビュー曲「STARS」)と同じく、三宅喜重氏が監督を務めています。

楽曲の作曲、編曲は、いずれも中島のシングル曲に関わった実績のある百田留衣氏と武部聡志氏。

「Forget Me Not」のコード進行

●Aメロ(1コーラス)
|D♭ G♭m/D♭|D♭・・A♭/C|
|B♭m7 D♭/A♭|E♭/G|
|G♭ A♭|Fm7 B♭7|
|E♭m7|A♭|
|D♭ G♭m/D♭|D♭・・A♭/C|
|B♭m7 D♭/A♭|E♭/G|
|G♭・ A♭ A♭/G♭|Fm7 ・B♭(add♭9) B♭7|
|E♭m7 A♭|D♭ D♭7|

●Bメロ
|G♭M7|G♭m6|Fm7|B♭m7 D♭/A♭|
|E♭m7|A♭sus4 F(#9)|

●サビ
|G♭M7・ A♭ G♭|Fm7・B♭7 B♭7/D|
|E♭m7 A♭7|D♭・B Gm7-5|
|G♭M7・ A♭ G♭|Fm7 F7 B♭m7 D♭/A♭|
|E♭m7|G♭m6 A♭|

●間奏
|D♭ G♭m/D♭|D♭ G♭m/D♭|

●Aコーラス(2コーラス)
|D♭ G♭m/D♭|D♭・・A♭/C|
|B♭m7 D♭/A♭|E♭/G|
|G♭ A♭/G♭|Fm7 B♭7|
|E♭m7|A♭ A(♭5)|
(以下は後日追記予定)

Aメロ

本曲のキーは、D♭メジャー(B♭マイナー)で、楽譜だと♭が5つ必要な調です。ギターの弾き語りをされる場合は、カポ+1で、表記したよりも1つ下のコードを弾くと、演奏がしやすいかと思います。

Aメロの前半は、伴奏がアコギのみの静かなパートです。最初の4小節は、分数コードを多数使い、ルート音がD♭~Gまで滑らかに下降するテクニックが使われています。途中、G♭(Ⅳ)mや、E♭(Ⅱ)はノンダイアトニックコードで、それぞれ平凡なG♭、E♭mを使うよりもオシャレな感じが出ている部分です。

5小節目から6小節目にかけてのG♭→A♭→Fm7→B♭7は、いわゆる「王道進行」です。これについてはサビでも登場しますので後述します。

9小節目からはピアノの音も入ります。コード譜では、なるべく聞こえた音を全て反映させるつもりで書いていたら、やけに煩雑な表記になってしまいました。大変だと思われる方は前半部分と同じコードで弾いていただいてもそこまで違和感はないと思います。

特に、珍しいコードと言えるのは、14小節目の3拍目のB♭(add♭9)でしょう。このコードは、「シ♭・レ・ファ」(B♭)の上に「シ」の音が乗ったコードで、B♭(Ⅵ)だけでもノンダイアトニックなのですが、「シ」の音が乗ったことで、更にインパクトを感じるようになっています。

また、最後のD♭(Ⅰ)→D♭7の進行は、トニックにセブンスを付けることで、次にサブドミナントG♭(Ⅳ)を強く誘導する働きがあるため、Ⅳの手前でよく使われるコード進行の1つです。

なお、2コーラスではアコギ以外の楽器が登場するためか、1コーラスとは若干響きが違う部分がいくつかあるように思われました(たとえば8小節目の最後とか)。これに関しても、ギターの弾き語りならばそこまで再現せずとも、1コーラスと同じように弾くだけで十分かと思います(当ブログのコード譜は、ギターのタブ譜を載せることを目的としているわけではなく、様々な楽器によってなされるハーモニーを、全てコード譜に反映させたいと考えているから、どうしても変わったコードの表記になってしまうことが多いのです)。

Bメロ

G♭M7→G♭m6と、同じルート音のメジャーコードとマイナーコードが連続します。後者の方がノンダイアトニックコード(サブドミナントマイナー)で、絶妙な響きを持った部分です。サブドミナントマイナーはAメロの冒頭にも登場していますね。

また、サビ直前の6小節目で、F(#9)という、これもまた見慣れないコードが登場します。構成音を示すと、「ファ・ラ・ド・ミ♭・ラ♭」で、F7にラ♭が乗ったテンションコードになります。通常はF(Ⅲ)7やA♭が使われることが多いと思いますが、F(#9)は、その2つのコードを同時に鳴らしたような響きです。「ラ」と「ラ♭」という半音だけ異なる音が同時になりますが、オクターブ以上離れているためか、そこまでの不協和音性は感じられないようになっています。この部分も、とても不思議な感じのするハーモニーの響きになっています。この感覚は、単にF7やA♭のどちらかだけを聴くだけでは味わえないものだと思います。

サビ

Aメロでも登場した「王道進行」に近いコード進行となっています。中島美嘉の楽曲で王道進行のサビを持つものは、同じ作曲者の「ORION」「ALWAYS」等が挙げられ、他のアーティストでも多く使われています。「王道進行」は、厳密にはⅣ→Ⅴ→Ⅲm→Ⅵmのパターンの事を指すことが多いのですが、本曲のようにⅤの部分がⅤ→Ⅳになっていたり、Ⅵmの部分がⅥになっていたりしても、「王道進行」の一種とみなして差支えはないでしょう(僕のブログはⅣ→Ⅴから始まるものは、全て王道進行の仲間と見なしていますw)。

続いて、4小節目ではD♭(Ⅰ)→B(Ⅶ♭)→G(Ⅴ♭)m7-5という、ちょっと変わったコード進行が使われていますが、全く使われていないというわけではなく、最近だとRADWIMPSの「なんでもないや」のサビに、これと全く同じパターンのテクニックが用いられています(本曲と同様、サビの前半から後半に移る部分です)。Ⅶ♭→Ⅴm7-5という進行は、そこまで語られることが多いパターンではありませんが、ノンダイアトニック独特のインパクトを持つため、楽曲のちょっとしたスパイスには非常に有用だと思います(ちなみに、この進行はサブドミナントⅣを強く誘導する働きがあります)。

本曲のヴォーカルの最高音は、サビの「♪ただ守りたいから」の部分で使用される「レ♭」で、最低音は、Bメロの「♪何度も紡いだ」の部分で登場する「ラ♭」。音域は1オクターブ+5音となります。

ゆったりした楽曲ですが、1拍ごとにコードやルート音が代わり、あまり耳慣れないコードを1拍だけ演奏している箇所が多く見られ、細かい部分で色々な工夫があることを感じさせらる楽曲でした。

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