当ブログでは様々なアーティストについて、楽曲のサビのコード進行でよく使われているパターンを集計してきました。今回は田村ゆかりのシングル曲でその集計を行っていきたいと思います。
田村ゆかりは90年代に声優としてデビュー。その後しばらくは無名の状態が続きますが、2000年代からは徐々に有名なアニメに出演するようになり、2008年には単独の武道館ライブを開催、2010年以降は出す曲が次々とCDランキング上位を取得するなど、大物声優、アニソン歌手としての地位を確立しました。
田村ゆかりのライブは非常に特徴的で、「王国民」と呼ばれるファンによるコールや合いの手は、演出の一部と思えるほど一体化しており、ライブの楽しさから田村ゆかりの魅力に取りつかれてしまう人も少なくありません。
そんな中、2015年に突如、全活動を停止する旨の発表がなされ、2016年には事務所の移籍が発表されるなど、事務所関連のごたごたが続いていますが、早期の活動再開が多くのファンによって望まれている状況です。
当ブログでは音楽理論をメインテーマとしているため、彼女の楽曲の音楽的な傾向を解析していくことが当記事の目的となります。これまで、アニメ・声優関連では、ラブライブや水樹奈々の楽曲について、コード進行を解析しました。
http://makeo-blog.net/chord/lovelive/
http://makeo-blog.net/chord/nanamizuki/
これらのアーティストと声優という点で共通点があり、特に水樹奈々とは同じ声優兼歌手の大物アーティストとしてよく比較されることもある田村ゆかりですが、コード進行についても似たような傾向を見せるのでしょうか?
目次
集計対象曲および諸注意
集計対象とする曲は、田村ゆかり名義で2015年までに発売されたシングルの1曲目で、全26曲となります。キャラクター名義や神楽坂ゆか名義の楽曲は含みません。アルバム曲にも著名な曲がありますが、集計が偏るのを防ぐため、シングルの曲だけにさせていただきました。
コード進行の分類は、僕のブログで行っているオリジナルの方法である「サビの最初の2つのコードのみで、曲を分類する方法」により行っています。詳細は下記の記事で書いています。
サビの最初の2つのみに注目した方法であるため、「王道進行」や「カノン進行」といった用語の定義が他のサイトと若干異なることがありますがご了承ください。
田村ゆかりのシングル曲で使われたコード進行ランキング
1位 Ⅳ→Ⅴパターン(王道進行)8曲
- Lovely Magic
- Little Wish ~lyrical step~
- Spiritual Garden
- 童話迷宮
- Tomorrow
- Endless Story
- Fantastic future
- 好きだって言えなくて
田村ゆかりのシングル曲のサビで最も使われたコード進行は、Ⅳ→Ⅴと推移する王道進行でした。全シングルの3分の1近くがこの進行ということになります。この進行は、これまで集計を行った全てのアーティスト(といってもまだ8組だけですが…)において1位か2位にランクインしており、曲調に関係なく多くの楽曲で使われるパターンであることがわかります。
2位 Ⅰ→Ⅴパターン(カノン進行)7曲
- summer melody
- Baby’s Breath
- 恋せよ女の子
- バンビーノ・バンビーナ
- おしえて A to Z
- 微笑みのプルマージュ
- 秘密の扉から会いにきて
2番目に多かったのがⅠ→Ⅴと推移するパターン。「秘密の扉から会いにきて」のようにⅠ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅲmと進むパターンは、様々なサイトで「カノン進行」として紹介されており、極めて自然に心地よく聴けるコード進行のため、非常に多くのヒット曲で使われています。最近ですとAKB48関連の楽曲では特に多い傾向にあります。
水樹奈々の集計を行った時はほとんどなかったこのパターンですが、田村ゆかりにおいては他のアーティストと同様に上位になりました。
シングル曲以外では、「世界一かわいいよ!」のコールで有名な「fancy baby doll」はこのパターンです。
3位 Ⅰ→Ⅳパターン 4曲
- You & Me
- プラチナLover’s Day
- W:Wonder tale
- あのね Love me Do
3番目に多かったパターンはⅠ→Ⅳと進むコード進行。特に名前が付いたパターンではないのですが、多くの楽曲で使われている定番の進行と言えます。ここに挙げた楽曲はいずれも可愛らしくノリの良い楽曲ばかりです(このコード進行に限らず、田村ゆかりのほとんど楽曲がそうですが)。
シングル曲以外では、ライブの定番となっていて、独特のコールが含まれる「チェルシーガール」もこのパターンですね。
1曲のみのパターン
- Ⅰ→Ⅱmパターン・・・「眠れぬ夜につかまえて」
- Ⅰ→Ⅶm7-5パターン・・・「My wish My love」
- Ⅱm→Ⅲmパターン・・・「Beautiful Amulet」
- Ⅳ→Ⅰパターン・・・「夢見月のアリス」
- Ⅳ→Ⅲパターン・・・「Princess Rose」
- Ⅳ→Ⅲmパターン・・・「Love Parade」
- Ⅵm→Ⅴパターン・・・「星空のSpica」
上位3パターン以外は、全て1曲ずつのみしか使われていないコード進行でした。特筆すべきこととしては、マイナートニックコード(Ⅵm)から始まる楽曲が全体を通して1曲しかないという事です。そのような楽曲は、「カッコいい」「哀愁漂う」「暗い」といったイメージを持った楽曲が多く、田村ゆかりの楽曲はそのようなイメージとは正反対の「明るい」「カワイイ」といったイメージの楽曲が多いという事が、コード進行の傾向を見ることでも判断することができます。
同じくカワイイ系の楽曲が多かったラブライブ関連の楽曲ですら、マイナーコードから始まる楽曲が一定数あったことと、Ⅵmから始まる楽曲が非常に多かった水樹奈々と比較すると、この点においては大きく傾向が異なる、という事が言えます。
まとめ
田村ゆかりのシングル曲のサビをコード進行のパターン別に集計しました。王道進行やカノン進行が上位を占めたことは他の多くのアーティストの傾向と共通していましたが、マイナーコードから始まる進行がほとんどない、という独特な傾向をつかむことができました。今後もこのような集計をいろいろなアーティストで行っていきたいと思います。