本記事では、2016/11/16発売のAKB48の楽曲「ハイテンション」のコード譜と、音楽的な解説、および楽曲を聴いた感想を記していきます。
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「ハイテンション」の概要
本曲は、AKB48の46枚目のシングルで、楽曲のセンターは、今作が卒業シングルとなる島崎遥香が務めます。
作曲は、SMAPの「freebird」、中ノ森BANDの「Oh My Darlin’」等のヒット曲があり、ORANGE RANGEのプロデューサーとしても知られる、シライシ紗トリ氏(AKB48への曲提供は今作が初)で、編曲はこれまでもAKB48グループの多数の楽曲のアレンジを行っている佐々木裕氏。作詞はもちろん秋元康氏です。
「ハイテンション」のコード進行
●イントロ
|C#m|F#7/A#|C#m|F#7/A#|
|C#m7|C#m7|F#7|F#7|
|AM7|G#m7|F#m7|G#7|
●Aメロ
|C#m|F#7|C#m|F#7|
|C#m|F#7|C#m|F#7|
●Bメロ
|F#m7|G#m7|Bm7|G#7|
●サビ
|C#m|C#m|F#7|F#7|
|AM7|G#m7|F#m7|G#7|
|C#m|C#m|F#7|F#7|
|AM7|G#m7|F#m7|G#7|
|C#m|C#m|
●間奏
|C#m7|C#m7|F#7|F#7|
|AM7|G#m7|F#m7|G#7|
※Aメロ~サビ繰り返し
●Cメロ
|AM7|B|G#m7|C#|
|AM7|G#m7 C#m|F#m7|
|G# F#/A#|B G#/C|
|(N.C.)|×4
●ラスサビ
|Dm|Dm|G7|G7|
|B♭M7|Am7|Gm7|A7|
|Dm|Dm|G7|G7|
|B♭M7|Am7|Gm7|A7|
|Dm|Dm|
●後奏
|Dm|G7/B|Dm|G7/B|
|Dm|G7/B|Dm|Dm|Dm|
イントロ
ディスコ音楽のようなノリの良いダンスチューンの本曲。AKB48でこのようなアレンジの楽曲は非常に珍しい部類に入ります。AKB48は、3作前の「翼はいらない」のあたりから、王道アイドル曲とは少し異なる趣きのシングルを出しているように思います。
最初の4小節は比較的静かな部分で、この部分のコード進行はC#(Ⅵ)m→F#(Ⅱ)/A#(Ⅳ#)と判断しましたが、F#/A#の部分はF#よりもA#とC#の音が強く出ており、この2つを弾くコードであれば、A#dim5といったコードでも違和感はないと思います。
5小節目からは、本格的に伴奏が入ります。8拍に1度、指パッチンの音が入っており、それがとても良い味を出しています(あまりにもハッキリと聞こえすぎるので、もしかしたらMVのみで使用されている演出かもしれませんが…)。
ちなみに、ラスサビ以外はキーはC#マイナーで、楽譜では#が3つ必要な調です。
Aメロ~Bメロ
Aメロは、イントロと同じく、C#(Ⅵ)m→F#(Ⅱ)という進行がメインとなるパート。ディスコ曲のようなアレンジに、このようなコード進行のAメロの楽曲に、モーニング娘。の「LOVEマシーン」があります。メロディーが似ているわけではないのですが、(特にAメロやイントロで)アレンジやコードは比較的共通点が多い2曲なので、本曲を聴いた時に真っ先に思い浮かんだのがLOVEマシーンでした。
BメロではF#(Ⅱ)m7→G#(Ⅲ)m7→B(Ⅴ)m7と進行し、Bm7が「ドミナントマイナー」と呼ばれるノンダイアトニックコードに相当し、ちょっぴり変わった印象を与えます。
その次の「♪踊れ~」とシャウトする部分は、ベース音が聴こえないため、コードが判定しづらかったのですが、周りのコードとの関係から、おそらくG#(Ⅲ)7が適切かと思います。このコードは、次にC#mまたはAを強く誘導するノンダイアトニックコードです。
サビ
「♪テ~ンショショショショ」と、同じ文字を連呼する、非常にキャッチーなサビで、コード進行はイントロやAメロと同じC#(Ⅵ)m→F#(Ⅱ)7。AKB48およびその関連グループのシングル曲で、サビの最初の2つのコードがⅥm→Ⅱである楽曲は、これまで1曲もなく、アレンジだけでなくコード進行的にも珍しい楽曲と言えるでしょう。
ちなみに、以下の記事で書いているように、AKBグループではJ-POPの三大コード進行と呼ばれる、カノン進行、王道進行、小室進行の3パターンが非常に多いです。
上記の記事を見てもわかるように、Ⅵm→Ⅱというコードは1つも存在しません(ただし、これはあくまでシングルのサビのみに注目しているため、アルバム曲やカップリング曲、もしくは、サビ以外の部分も含まれば、使われている可能性はあります)。
Ⅵm→ⅡでなくⅥ→Ⅱmならば、AKB48グループの楽曲でも比較的多く使われていますが、これらの2つのコード進行は、感じる印象は全く異なります。Ⅵm→Ⅱmは哀愁を感じるコードであるのに対し、本曲のⅥm→Ⅱは、どことなく楽しげな感覚のあるコードです。
本曲のサビの最後の2つの小節(「♪最後の一瞬~」の部分)は、ベースラインをメロディーラインと同じにする手法が使われております。これを分数コードとして厳密に表記すると大変なことになるので、無難にC#m→C#mと表記しています。
Cメロ~
ここまでの8ビートにのったメロディーとは打って変わって、ラップに近い早口のパートになります。
ここで使用されているコード進行は、A(Ⅳ)→B(Ⅴ)→G#(Ⅲ)m7→C#(Ⅵ)という「王道進行」(最後のコードはⅥmではありませんが)。AKB48では比較的珍しいコード進行ばかりの本曲でしたが、ここにきて定番のコード進行が現れました。
続いて、7小節目~8小節目は、2拍ごとにリズムが強調され、ルート音がG#→Cまで順々に上がっていくコード進行になっています(この部分では分数コードの分子よりも分母の方が重要です)。
4小節ほど、「♪踊れ」というシャウトの部分をはさんで、最後のサビでは、キーが半音上がる転調が行われます(この部分は、耳を凝らしてみると、鍵盤系の楽器でG#のコードを弾いているように聴こえなくもありませんが、微妙なのでN.C.(コード無し)と判定させていただきました。
ヴォーカルの最高音は、ラスサビで使用されている「ラ」(コーラスは除く)、最低音はAメロの「シ」で、最高音はそれほど高音ではなく、音域も1オクターブに満たないため、キー的には歌いやすい部類の楽曲だと思います。ただ、AメロやCメロは節回しが少し難しいかもしれませんが。カラオケなどで歌えば盛り上がる楽曲だと思います。
冒頭でも述べたように、AKB48はここ数作品、これまであまり出されていなかったタイプ楽曲をシングルとしてリリースする傾向にあります。王道路線のアイドルソングもそれはそれで好きなのですが、今回のような(AKBにしては)変わった曲調の楽曲も大変良いと思いました。
AKB48関連では以下の記事も書いていますので、興味があればぜひご覧ください。