本記事では、2016年11月9日発売のAqoursの新曲「想いよひとつになれ」のコード進行と、音楽的な解説、および楽曲を聴いた感想を記していきます。
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「想いよひとつになれ」の概要
本曲は、アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」第11話の終盤で使用された楽曲です。アニメ内の設定で、Aqoursのメンバーの一人の桜内梨子が、とある事情により別行動をとっているため、本作は残りの8人による歌唱となっていますが、伴奏のピアノ部分は梨子が演奏しているように思える演出があります。
アニメで放映された箇所だけで判断すれば、ピアノがメインのバラードのような部分と、典型的なアイドルソングのようなアップテンポな部分が交互に登場する変則的な楽曲のように思えました。
作曲は「ユメノトビラ」や「Dancing stars on me!」など、ラブライブ!で使用された楽曲を手掛けている佐伯高志氏です。
※2016/11/12 フルコーラスを聴いたので、コード譜を追加し、本文の方も矛盾が生じないように修正しました。
「想いよひとつになれ」のコード進行
●出だしサビ
|A|E/G#|F#m|E|
|D|A/C#|Bm7|E|
●前奏
|A|E/G#|D/F#|E|
|B/D#|Bm/D|A/C#|C6|
|Bm7 C#m7|C D|
●Aメロ(1コーラス)
|G|G|G|G・・D/F#|
|Em7|Em7|Em7|Em7|
|Cm7|E♭ F|G|G D/F#|
●Bメロ
|Em|C|D|Bm|
|Am7|Bm7|C|A/C#|
|D|D|Esus4|E|
●サビ
|A|E/G#|F#m|E|
|D|A/C#|Bm7|E C#/E#|
|F#m|E|D|A/C#|
|Bm7|A/C#|G|E|
●間奏1
|A E|D E|A E|D|
|A E|D E|A E|D|
●Aメロ(2コーラス)
|G|G|D|B/D#|
|Em7|D|
|Cm7|E♭ F|G|G D/F#|
※Bメロ繰り返し
※サビ繰り返し
●間奏2
|G|F#m|F|A/E|B/D#|D|Esus4|E|
|A/C#|D|E|A E/G#|
|F#m|D|E|A|
|A/C#|D|E|A E/G#|
|F#m|D|E|Asus4 A|
●Cメロ
|A/C#|D|E|A E/G#|
|F#m|D|E|A|
|A/C#|D|E|A E/G#|
|F#m|D|E|A|
|Dsus4|D|
●ラスサビ(前半)
|G|D/F#|Em|D|
|C|G/B|Am7|D B/D#|
|Em|D|C|G/B|
|Am7|G/B|F|D|
|C G/B|Am G|F|Dsus4 D|
※サビ繰り返し
●後奏
|A|E/G#|D/F#|E|
|B/D#|Bm/D|A/C#|C6|Bm7 C#m7|C D|
|C|D|G|
出だしのサビ
出だしは(アニメにおいては)サビから始まっています。伴奏はほぼピアノのみで、メンバーによるコーラスと合わさったハーモニーがとても綺麗です。
コード進行はAメジャーキーにおけるいわゆるカノン進行。それも、ベースラインに注目すると、A→G#→F#→E→D→C#→B→Eとなっており、少しずつ下がりながら最後だけ4度上がるという、定番中の定番と言える進行と言えるでしょう。
ヴォーカルの最高音は、最後の方で使われる「ド#」です。
前奏
続いて、ピアノによる前奏が入ります。最初の主旋律はラ、ド#、シ、ミであり、このメロディーがカノンコードに載っているものは旋律も含めてJ-POPの定番とも言えます。たとえば、ミスチルの「Tomorrow never knows」のイントロ、「シーソーゲーム」のAメロ、それからWaTの「僕のキモチ」のサビなどで、同じ旋律を見出すことができます。(「旋律が同じって、まずいんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、たかだか4音くらいが同じという楽曲は確率的にも存在して当然なので、それが問題になることはまずありません)。
ただ、このイントロで僕がもっとも感動したのは、そのあとの4小節目です。ここまでピアノのしっとりとした楽曲を思わせるアレンジだったのが、4小節目の後半くらいから突然アップテンポなアイドル曲に変身するのです。
スローテンポからアップテンポに変わる楽曲は、ラブライブ関連でもあるにはありますが(たとえば「僕らは今のなかで」など)、ドラムなどでその前兆があることが多く、本曲のように小節の途中で唐突に曲調が変わるのは珍しいと思われます。この演出には、思わず圧倒されてしまいました。ライブ等でも大変盛り上がる部分になると思います。
ちなみに、このイントロの最終小節では、やや変わった響きがあるコードが入り、次のフレーズへの転調の伏線となっています。一応、C→Dと書きましたが、C→BmあるいはC→G/Bとも聴こえる不思議な響きでした。いずれにせよ、Aメジャーキーのダイアトニックコードでないのは確かです。
Aメロ
Aメロは、前半はピアノとドラムのみのアレンジで、伴奏の音は非常に少ないですがリズム感が感じられるアレンジになっています。なお、イントロまでのAメジャーから、Gメジャーのキーに転調しています。#が2つ減る転調で、「同主調転調(#が3つ増減する)」や「属調・下属調転調(#または♭が1つ増減する)」といった特別な名称は特についていないですが、ポップスではそれほど珍しい転調ではありません(サビでG→Aの転調をしているため、この部分は調を「元に戻す」意味が強い転調と言えます)。
後半からエレキや他の楽器も入りますが、ここで特殊なコード進行が登場します。Cm7→E♭→Fという進行がそれで、数字でいえばⅣm7→Ⅵ♭→Ⅶ♭で、3つとも非ダイアトニックコードです。非ダイアトニックがこれだけ続くため、部分的にGマイナーの調に転調していると錯覚するくらい、インパクトがある部分となっています。
ちなみに、2コーラスのAメロは、前半部分はメロディーもコードも全く異なる構成になっています。
Bメロ
BメロではⅥm→Ⅳのいわゆる「小室進行」と呼ばれるコード進行が使われています。この部分はいかにもラブライブといった感じのアイドルソングのノリですね。
最後の2小節で使われているEsus4→Eは、Dの直後に来ていることで、2半音(全音)上がる転調が行われることを示唆したコード進行になっています。Esus4→Eは、Aメジャー調のA,DもしくはAマイナー調のAm,Fのいずれかを強く誘導する性質があります(本曲の場合はAを導出しています)。
2コーラスでは、コード進行こそ同じですが、メロディーは1コーラスと大きく異なります。
サビ
前述のEsus4→Eが架け橋になって、再度Aメジャーの調に転調しています。アニメで流れた1コーラスのサビは、出だしのサビと同じく、コーラスとピアノのみのアレンジで静かな伴奏になっています。2コーラスではBメロと同様にアップテンポのままサビに入ります。
さて、この1コーラスのサビが、スローテンポからアップテンポに変わる境目の小節(♪「諦めない」の直後で、E C#と記載した小節です)で、ドラムやベースなどにより、ダダッダダッという強いリズムが演奏されています。このリズム、どこかで聞いたことがあるとは思いませんか?
ラブライバーの方ならピンときたかもしれませんが、μ’sの「Snow halation」のAメロで、スローテンポからアップテンポに変わる瞬間に入るドラムのリズムと同じなのです。スノハレのその部分では、ライブなどで独特なコール(ダダッダダッに載せて、「fu-fu ! fu-fu!」と叫ぶ)がされますが、本曲でも同様のコールが行われるのでしょうか。
間奏~
アニメでサビの後に流れたメロディーはフルバージョンにおける後奏に相当するものでした。フルバージョンでは、1コーラスの後の間奏や、Cメロ、そのあとの2キー下がったサビなど、アニメバージョンでは見られなかったパートが多数登場しています。
まとめ
Aqoursの「想いよひとつになれ」のコード進行を耳コピ採譜しました。サビはカノン進行、Bメロは小室進行と、定番コードが多くの箇所で使用されています。テンポが変わるところの入り方が、他の曲であまり経験したことがないものだったため、インパクトがありました。また、Aメロの音数の少ないアレンジから、Bメロのカッコいい感じのアレンジに変わって躍動感が出てくるあたりも大変お気に入りです。
本曲と同じCDに収録される「MIRAI TICKET」についても記事を追加しました。
ラブライブ関連では、他にもコード進行解析の記事を書いておりますので、興味があればぜひ読んでみてください。