当ブログでは様々なアーティストについて、楽曲のサビのコード進行でよく使われているパターンを集計しています。今回はいきものがかりのシングルに注目してコード進行の傾向を解析していきたいと思います。
いきものがかりは2006年に「SAKURA」でメジャーデビューした3ピースバンドです。壮大なオーケストラに吉岡聖恵のパワフルかつ透き通るようなヴォーカルが乗った楽曲はデビュー当初から多くの人に受け入れられ、発売されたアルバムに関してはそのほとんどがオリコン1位を達成しています。
また、ライブにおいては家族連れからお年寄りまで、様々な年代のお客さんが来場し、小中学校のブラスバンド等でも演奏されるような一般受けする楽曲も多くリリースしています。そんないきものがかりの楽曲を、コード進行に注目した時どのような傾向が見られるのでしょうか?
目次
集計対象曲および諸注意
集計対象とする曲は、いきものがかりが2016年8月までに発売したシングルの1曲目で、全32曲となります。アルバム曲やカップリング曲にも著名な曲がありますが、集計が偏るのを防ぐため、シングルの曲だけにさせていただきました。
コード進行の分類は、僕のオリジナルの方法である「サビの最初の2つのコードのみで、曲を分類する方法」により行っています。詳細は下記の記事で書いています。
サビの最初の2つのみに注目した方法であるため、「王道進行」や「カノン進行」といった用語の定義が他のサイトと若干異なることがありますがご了承ください。
いきものがかりのシングル曲で使われたコード進行ランキング
1位 Ⅳ→Ⅴパターン(王道進行) 9曲
- SAKURA
- 流星ミラクル
- 花は桜 君は美し
- プラネタリウム
- 気まぐれロマンティック
- ふたり
- ホタルノヒカリ
- キミがいる
- ハルウタ
いきものがかりのシングル曲で一番使われたコード進行はⅣ→Ⅴと進む「王道進行」でした。多くのアーティストがこの進行か、「カノン進行」のどちらかが1位となっており、いきものがかりにおいても例外ではありませんでした。
発売期間もまんべんなく分布していましたが(曲は発売順に並んでいます)、「ハルウタ」を最後に4年ほどこのパターンの楽曲がリリースされていません。そろそろこの進行の新曲が発表される頃なのかもしれませんね。
2位 Ⅰ→Ⅴパターン(カノン進行)6曲
- うるわしきひと
- 茜色の約束
- 歩いていこう
- 笑顔
- ラブソングはとまらないよ
- ラストシーン
2番目に多く使われたのはⅠ→Ⅴのカノン進行でした。楽曲は比較的新しい年代のものが多く、デビューから数年まではこのタイプの楽曲はほとんどなかったことになります。メジャートニックコード(Ⅰ)から始まる楽曲自体は非常に多いだけに、この偏りは意外に思いました。
3位 Ⅰ→Ⅲパターン 5曲
- なくもんか
- ノスタルジア
- ありがとう
- 笑ってたいんだ
- GOLDEN GIRL
3番目に多く使われたのはⅠ→Ⅲと進むパターンでした。このⅢは、ダイアトニックではない音(楽譜上で、臨時の調号を使わないと表すことができない音)が含まれているため、聴き手に大きな印象を与えることが多い部分です。
上記のカノン進行と同じく、デビュー当初はそれほど多くはなかったのですが、「なくもんか」~「ありがとう」まで3作連続でこの進行であったのが大きく、全シングル中5曲がこの進行という結果になりました。
4位 Ⅰ→Ⅲmパターン 3曲
- 風が吹いている
- 1 2 3 ~恋がはじまる~
- あなた
3曲のパターンは2つありました。このコード進行は、カノン進行やⅠ→Ⅲ進行と構成音が近く、これらの進行の中間的な響きを与えます。こちらもやはり新しめのシングルが多いですね。
4位 Ⅵm→Ⅱmパターン 3曲
- YELL
- 熱情のスペクトラム
- ラブとピース!
こちらはマイナートニックから始まり、哀愁漂う楽曲や暗い曲に多く使われる進行です。いきものがかりの楽曲でマイナートニックから始まるものはこの3曲だけで、一般的に非常に多い「小室進行」と呼ばれるパターンは1曲もありませんでした。明るめの印象を持つ曲が多く発売されていることがよくわかります。
その他のパターン
- Ⅰ→Ⅵmパターン…「いつだって僕らは」
- Ⅱm→Ⅴパターン…「夏空グラフィティ」
- Ⅳ→Ⅰパターン…「コイスルオトメ」
- Ⅳ→Ⅲパターン…「HANABI」
- Ⅳ→Ⅲmパターン…「ブルーバード」
- Ⅳ→Ⅶm7-5パターン…「帰りたくなったよ」
1曲のみのパターンは6つありました。珍しいのは「帰りたくなったよ」のⅣ→Ⅶm7-5パターンですが、Ⅶm7-5のすぐあとにⅢに遷移しており、Ⅳ→Ⅲの仲間と見なしても問題ないでしょう。トニック以外では唯一マイナーコードから始まる「夏空グラフィティ」の「Ⅱm→Ⅴ」は、王道進行(Ⅳ→Ⅴ)の仲間と言えます。
他のアーティストで多く使われていたのにいきものがかりのシングルでは全く使われていないコードとしては、Ⅰ→Ⅳという進行が挙げられます。メジャーコードから始まる楽曲が非常に多いにもかかわらず、この結果はとても意外でした。
まとめ
いきものがかりのシングル曲のサビをコード進行のパターン別に集計しました。王道進行のパターンがダントツで多く、カノン進行および、カノン進行によく似た系統のコードがそれに続きました。カノン進行系の楽曲は、デビュー当初はあまり見られず、比較的新しい楽曲に多く見られました。また、Ⅰ→Ⅲという非ダイアトニックなパターンが多いというのも他のアーティストにない傾向と言えるでしょう。
また、マイナーコードから始まる楽曲はかなり少数派であり、明るめの楽曲を多くリリースしているということがコード進行からも裏付けられます。
今後も様々なアーティストにおいて、このような集計を行っていきたいと思います。
2016年のシングル「ラストシーン」については個別の記事も書いておりますので、興味があればぜひご覧ください。