目次
はじめに
これまで、AKB48、B’zなど日本でヒットしている様々なアーティストの楽曲で、よく使われているコード進行を解析してきましたが、今回はMr.Childrenのシングルの楽曲で使われているコード進行をパターン分けし、よく使われているもの順にリストアップし、各々のパターンについて解説をして行きたいと思います。
Mr.Childrenは92年にデビューした4人組バンドで、4作目の「CROSS ROAD」がヒットしたのをきっかけに、出す曲出す曲全てがヒット。シングル売上200万枚超えを2作で達成したほか、レコード大賞も2度受賞し、カラオケでは今でも90年代のヒット曲が歌い継がれているなど多くの日本人の心を集めた楽曲を多数リリースしてきました。
そんなミスチルの楽曲を音楽理論の観点から眺めたとき、どのようなコード進行のパターンがよく使われているのでしょうか?また、それは一般によく使われたパターン(カノン進行、王道進行、小室進行等)と一致するのでしょうか?
コード進行・音楽理論に興味ある方はもちろん、そうでない方でも、単なる記号の羅列ではなく、それぞれの進行がどういった感覚を持つのかも併記することで、楽しく読んでいただけるように工夫しておりますので、ぜひ読んでいただければ幸いです。
集計対象曲および諸注意
集計する曲は、2015年までにMr.Children名義で発売されたシングルのうち、1曲目に収録された35曲、および、桑田佳祐とのコラボで発表された「奇跡の地球」の計36曲です。著名な曲であってもアルバム曲は除外しています。これは、アルバム曲を恣意的に選ぶことにより、結果が偏るのを防ぐためです。
コード進行の分類は、僕のブログで行っているオリジナルの方法である「サビの最初の2つのコードのみで、曲を分類する方法」により行っています。詳細は下記の記事に記載しています。
最初の2コードで分類する方法をとるので、他のサイトとパターンの判定が異なることがありえます。サビの後半と前半で異なるパターンが使われていても、前半のもののみを集計に含めています。
また、各曲のコード進行は、他サイトやバンドスコアからの転載ではなく、全て僕の耳コピによるものです。中には聞き取りが難しく、正しいかどうか自信が持てないものも存在しますが、その点はご了承ください。
他のアーティストで集計した結果は、こちらのサイトマップ内の「コード進行」のカテゴリの中のリンクからご覧いただけます。
ミスチルのシングル曲で使われたコード進行ランキング
1位 Ⅳ→Ⅴパターン(王道進行)7曲
- Replay
- youthful days
- Any
- HERO
- 未来
- フェイク
- HANABI
1位は7曲で使われたパターンが2つありました。これまで集計したアーティストはいずれも「カノン進行」が1位だったのですが、他のアーティストでいずれも2位であった「王道進行」(J-POP進行)がミスチルでは1位となりました。ただし、ここに挙げた曲のうち「Replay」は大ブレイクする前の曲で、その他の6曲は2000年以降の楽曲。ミリオンやダブルミリオンを連発していたころの90年代の楽曲で、「売れセン」と言われて他のアーティストにもたくさん使われた王道進行が1曲もなかったのは少し意外でした。
1位 Ⅰ→Ⅳパターン 7曲
- 君がいた夏
- 抱きしめたい
- Tomorrow never knows
- everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-
- シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~
- NOT FOUND
- 箒星
そして、王道進行とともに同率首位になったのが、Ⅰ→Ⅳと進むパターン。これまで集計したアーティストでは決して多いとは言えなかったこの進行が1位になったことは驚きでした。デビュー曲、2作目のサビがこの進行から始まっており、桜井和寿の好みの進行なのでしょうか(もっとも、「君がいた夏」の進行はⅠ→Ⅰ△7→Ⅳと進んでおり、このパターンに含めるのはもしかしたら微妙かもしれません)。
「Tomorrow never knows」は、イントロは典型的なカノン進行で、AメロとBメロが典型的な王道進行ながら、サビがⅠ→Ⅳ進行であり、あえてこの進行を選んだ楽曲がダブルミリオンを達成したといところは注目すべきだと思います。
3位 Ⅰ→Ⅴパターン(カノン進行) 6曲
- 【es】~ Theme of es
- 花 -Memento-Mori-
- Everything (It’s you)
- 終わりなき旅
- GIFT
- 足音 ~Be Strong
多くのJ-POPで使われているカノン進行ですが、ミスチルのシングル曲に限って言えば3位でした。とはいえ、1曲差の3位であり、今後のリリース状況によってはこの進行が1位になる可能性も十分にあるでしょう。日本でよく使われるコード進行であることは間違いないようです。
この進行が使用されている楽曲は、ゆったりとしたテンポの曲が多いのが特徴で、その特徴はB’zにおいても言えたことでした。
4位 Ⅰ→Ⅲパターン 4曲
- 口笛
- Sign
- しるし
- 祈り~涙の軌道
4位はⅠ→Ⅲと進むパターンでした。Ⅲというコードは、音楽理論的にはダイアトニックとして存在しない不安定なコードなのですが、あえてこのコードを使うことで深み、切なさといった独特の感覚を出すことができ、多くのヒット曲で使われています。楽曲はいずれも2000年以降のものばかりです。
5位 Ⅵm→Ⅴパターン 3曲
- マシンガンをぶっ放せ-Mr.Children Bootleg-
- ニシエヒガシエ
- 奇跡の地球
5位はマイナーコードから始まるⅥ→Ⅴmパターン。ミスチルの曲ではマイナーコードから始まるサビ自体がこれら3曲を含めて4曲しかありません。「奇跡の地球」は桑田佳祐が作曲しているため、桜井が作曲した楽曲としては、全体の1割もないということになります(アルバム曲も含めればどうなるかはわかりませんが)。
どのアーティストもメジャーコード(明るめなコード)から始まる曲の方が多いのは確かなのですが、これほど差が出るのも珍しいと思いました。
6位以下
- Ⅰ→Ⅲmパターン・・・「名もなき詩」「君が好き」
- Ⅳ→Ⅰパターン・・・「innocent world」「優しい歌」
- Ⅵm→Ⅳパターン(小室進行)・・・「掌」
- Ⅰ→Ⅰ7パターン・・・「I’LL BE」
- Ⅰ→Ⅱパターン・・・「光の射す方へ」
- Ⅰ→Ⅱmパターン・・・「CROSS ROAD」
- Ⅰ→Ⅵmパターン・・・「旅立ちの唄」
2曲以下のパターンは以上の通りです。他アーティストで多く使われた小室進行は、前述のとおりマイナーコードから始まる曲が極端に少ないことから、1曲しかありませんした。
CROSS ROADで使われたⅠ→Ⅱmは、サビ以外で使われることは多いものの、サビの先頭でこの2コードで始まるものは非常に珍しいです(Bメロは王道進行)。どちらかというと盛り上がりに欠けるコードと思われますが、この楽曲ではそんなことは全く感じられず、実際にミスチルはこの楽曲でビッグアーティストの仲間入りを果たしたわけです。売れセンのコード進行を追っかけずに爆発的なヒットを次々と飛ばしていったことは賞賛すべきことだと思います(もっとも本人はそんなことを意識して作曲していたわけではないと思いますが)
まとめ
アーティストごとのコード進行パターンの集計は今回が4回目となりましたが、初めてカノンコードが1位にならず、代わりに王道進行とⅠ→Ⅳパターンが同率の1位になりました。小室進行を初めとするマイナーコードで始まるコードもほとんど使われていないことがわかりました。
個人的には、ミスチルはどちらかというと売れセンの曲を多くリリースしてきたイメージがあったのですが、コード進行だけに着目してみれば、必ずしもそう言い切れない部分もあるわけですね。
今後も多数のアーティストで同様の集計を行って様々な傾向を解析したいと思います。