RADWIMPS「夢灯籠」のコード進行解析、楽曲の感想


本記事では、大ヒット映画「君の名は。」のオープニングとして使用されているRADWIMPSの「夢灯籠」(ゆめとうろう)のコード譜を耳コピにより採譜し、楽曲の解説と感想を簡単に記していきます。

「夢灯籠」の概要

本曲は「君の名は。」で使用されているRADWIMPSの4楽曲のうちの1つで、オープニングテーマとして使用されています。映画のヒットと同様、それらの楽曲が収録されたサウンドトラックもオリコン週間アルバムランキングで2週連続の1位を獲得するなど、これまでのRADWIMPSのファン以外の多くの層からも絶大な支持を集めています。

当記事ではその「夢灯籠」について、コード進行と音楽的な解説をしていきたいと思います。

「夢灯籠」のコード進行

●イントロ
|B♭sus4|〃|〃|〃|E♭|〃|〃|〃|
|A♭(add9)|〃|〃|〃|E♭|〃|〃|〃|

●Aメロ(前半)
|Cm7|A♭|E♭|E♭|Cm7|A♭|E♭|B♭/D|
|Cm7|A♭|E♭|E♭B♭/D|Cm7|A♭|E♭|B♭|
|Cm7|A♭|E♭|B♭|

●間奏
|A♭|A♭|Cm|B♭|A♭|A♭|Cm|B♭|

●Aメロ(後半)
|Cm7|A♭|E♭|E♭B♭|Cm7|A♭|E♭|B♭|
|Cm7|A♭|E♭|E♭B♭|Cm7|A♭|E♭|B♭/D|
|D♭|D♭|D♭|D♭E♭|

●サビ
|Fm|D♭|A♭|E♭/G|Fm|D♭|A♭|E♭/G|
|Fm|E♭/G|A♭|B♭7|D♭|E♭|Fm|Cm|
|B♭7|D♭E♭|

●後奏
|A♭|A♭|Cm|B♭|A♭|A♭|Cm|B♭|

解説、感想

イントロ

イントロはギターのアルペジオと、それからあと1種か2種くらい弦楽器?を使い(何の音色か特定できませんでした。。)、リズムと調性が曖昧にすることで、不思議で幻想的な感覚を引き立てています。

ギターやピアノで弾き語りをされる方は、単楽器だとこのような感じを出すのはなかなか難しいと思うので、この部分は原曲に忠実に行うよりは、若干のアレンジをした方が自然に聴こえると思います。

Aメロ

Aメロは、まず静かなメロディーが続き、間奏で一気に盛り上がって、今度はリズム感のあるAメロに移行する、という流れになっています。コード進行はⅥm7→Ⅳ→Ⅰと進む「小室進行」。これは「前前前世」のサビで使われたコード進行と同じものです。

キー(調)はCマイナー(E♭メジャー)で、最後の方で特殊コードが使われサビに転調して入ります。

サビ

サビは、AメロのCマイナー調からFマイナー調に転調することによって始まります。これは、♭が1つ増える「下属調」への転調です。

この転調には、Aメロの最後に出てきたD♭→E♭という進行が、大きな働きをしています。D♭というコードは、Cマイナーの調においては非ダイアトニックなⅦ♭で、ちょっとしたアクセントを出すために使われるコードです。その次のE♭はトニックコードです。
そのため、D♭→E♭という進行だけならば、「Cマイナーの楽曲でちょっとおしゃれなD♭を挿入して変化を加えた」という程度の印象にとどまることでしょう。

しかし、実際には単におしゃれ感だけを出すためにそのコードがあるのではないのです。D♭→E♭という進行は、Fマイナー調においては、「Ⅳ→Ⅴ」という、最も基本的なコード進行の1つであり、この進行を挟むことで、次のFmが来た時に、「Fマイナーの調に固定された」という感覚をはっきり認識できるのです。

もちろん、多くの人は、こんなことを考えながら楽曲を聴いているわけではありません。ですが、「調性が固定される」というのは非常に大事な概念で、逆に調性がはっきりしない部分というのは、うまく言葉に表せないのですが、着地点が見つからず、宙をさまよっているような感覚になります。そのような感覚があると、伴奏に意識が行ってしまい、肝心のメロディーがあまり頭に入ってこないこともあります(それが必ずしも悪いことではなく、例えば本曲の冒頭などは最初の数音を聴いただけでは調性が固定できないため、不思議な感覚を感じます。これはアレンジがまずいとかではなく、あえてそのような演出にしているのです)。

本曲は、転調による「違和感」を転調後ではなく、転調直前のD♭の部分に「前倒し」することによって、サビのFmから始まる部分は転調しているにもかかわらずスムーズに聴くことができ、メロディーが耳に残りやすくなっているのだと思います。

もっとも、転調は必ずこのようにしないといけないというわけではなく、何の前触れもなく突然サビの初めから転調をするような楽曲も多く見られます。ユーロビートやダンス系統、あとは小室哲哉がプロデュースした楽曲などは、そういう転調をするものも多いですね。

さて、その転調後のサビのコード進行ですが、こちらはAメロと同じく「小室進行」です。AメロはCm7→A♭、サビではFm→D♭。キーが違っても、同じパターンであるため、コードの奏でる響きは似ています。

途中にB♭7(Ⅱ7)という非ダイアトニックコードが登場しますが、これは「前前前世」のBメロでも登場したコードで、Ⅱmを使うよりも明るく砕けたような感覚になります。
なお、ヴォーカルの最高音はラ♭の音であり、「前前前世」の最高音+2の高さです。

後奏

後奏はA♭から始まっているため、サビのFマイナー調のままに見えますが、B♭の部分がドミナントの響きが大きいため、ここではCマイナーの調に戻っているとみるべきでしょう。

どのように転調したかというと、まず、サビの最後のD♭E♭が極めて自然にA♭を誘導します。このコードはサビのFマイナーにおいてはトニックコードです。

ところが、後奏のCm→B♭によって、実はこのA♭はCマイナーにおけるサブドミナントであることが判明するのです。同じコードでも転調前はトニック、転調後はサブドミナント。このように、1つのコードが、いつの間にか役割が変わっているような転調は、特に関係調で多く見られます。なお、この転調は先ほどの下属調転調の逆なので、属調への転調になります。

まとめ

RADWIMPSの「夢灯籠」のコード進行について解説を行いました。特に、転調が行われているところでは長々と書いてしまいました。転調の前後では1つ1つの細かいコード進行がとても大事になるので、どうしても語ることが多くなってしまいますが、「何かわけのわからんこと書いてるな」くらいの気持ちで読み流していただければと思います。

本曲も「前前前世」に負けず劣らず、キャッチーで耳に入りやすいメロディーだと思いました。「君の名は。」で使用されている他の楽曲についても解説を行っておりますので、興味があればぜひご覧ください。

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