本記事では、2016/10/5発売のAAAの新曲「涙のない世界」のコード譜と、音楽的な解説、および楽曲を聴いた感想を記していきます。
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「涙のない世界」の概要
本曲はAAAの52枚目のシングルで、日テレの「スッキリ!」で使用されている楽曲です。オーケストラやハーモニーが非常に綺麗なミディアムテンポなバラードとなっております。
「涙のない世界」のコード進行
|Fm E♭|D♭M7|Fm E♭|D♭M7|
|Fm E♭|D♭M7|Fm E♭|D♭|
|E♭sus4|E♭|
●Aメロ(下記4小節を計4回)
|D♭ E♭|Fm E♭/G A♭A♭/C|
|D♭ E♭|A♭|
●Bメロ
|G#m|D#m|B♭m|Fm|
|Cm|Gm|A♭|B♭|
|C D7|
●サビ
|G C|D B/D# Em・|
|C G|F#m7-5 B|
|Em C|D B/D# Em・|
|C G/F#|Bm CM7|
|Am7 D7|
●間奏1
|Em D|C|Fm E♭|D♭|E♭|
※Aメロ~サビ繰り返し
●Cメロ
|CM7|D|Bm7|CM7|CM7|D|Bm7|CM7|
●間奏2
|Am7|G/B|C|G/B|Am7|G/B|Cm|D|
イントロ
ピアノとストリングスによる優しい感触のイントロです。コード進行はⅥm→Ⅴ→Ⅳと進むパターンで、マイナートニックで始まるコードとしては比較的使用例が多いパターンだと思います。キー(調)はFマイナーで、イントロとAメロがこのキーです。
最後のE♭sus4→E♭は非常に良く使われるテクニックで、単にE♭とするよりも、次のコードをじらすような働きがあります。
Aメロ
ルート音がD♭→E♭→F→G→A♭と上がるコード進行が4度繰り返されます。1コーラスではピアノと少数の打楽器のみの伴奏ですが、2コーラスの後半ではストリングスや鳴り物も増え、同じメロディーでもだいぶ印象が変わる部分になっています。
Bメロ
本曲のBメロでは、コード進行において、特殊なテクニックが多数使われています。まず、Bメロに入った瞬間に、キーがFマイナーからG#マイナーに変更されています。この転調は3半音キーが上がるため「同主調」の転調で、比較的多く使われているものです。しかし、この曲のすごいのはこの後です。
G#マイナーキーにおけるコード進行(G#m→D#m)を2小節続けたあと、今度は、B♭マイナーキーのコード進行(B♭m→Fm)が登場し、更にその2小節後にはCマイナーのコード進行(Cm→Gm)が奏でられます。これらは、いずれかが非ダイアトニックコードと考えるよりは、2小節ごとに転調していて、Ⅵm→Ⅲmという進行が3度続いているとみるべきでしょう。
AメロまではFマイナー、そして、Bメロに入ってから、G#マイナー、B♭マイナー、Cマイナーと、短い間に4つのキーを遷移しているのです。更に、サビはGメジャーなので、本曲は1コーラスだけで5つのキーが存在していることになります。転調が行われる1,3,5小節目のところでは、グッとくるような響きがあります。
これだけ多くのキーを遷移している楽曲は、アップテンポな曲ならともかく、バラード調の楽曲では大変珍しいのではないでしょうか(ただし、このように2小節ごとに転調する楽曲は、本曲が唯一というわけではありません。似たような転調をする楽曲を、聞いたことがあるはずなのですが、思い出せないので、思い出したらその例も書いていこうかと思いますw)。
サビ
Bメロの後半で、キーはいったんCマイナーに落ち着きかけますが、それもつかの間、A♭→B♭→C→Dという誘導によりGメジャーキーに転調します。
サビのコード進行は前半がG→C(Ⅰ→Ⅳ)、後半がEm→C(Ⅵm→Ⅳ)(小室進行)と、同じメロディーですがコードが変わります。4小節目で使われているF#m7-5→B(Ⅶm7-5→Ⅲ)は、セットで覚えておきたいコード進行で、次にⅥmかⅣから始まるコード進行を誘導したい場合に使われることがあります。
続いて、7小節目~8小節目のC→G/F#→Bm→Cという部分は、非ダイアトニックコードを使っているわけではないのですが、F#というベース音が存在することで、あまり聴いたことがない響きになっています。
なお、ヴォーカルの最高音は、Bメロとサビで何度か登場する「ソ」。AAAの楽曲としてはそれほど高いキーではないと思います。
間奏~
続いて、サビ直後の間奏で、キーがGメジャー(Eマイナー)からFマイナーに戻っています。普通はサビに入る時にキーが上がって、それを間奏で戻すという転調が行われることが多いのですが、この曲では多段階の転調の結果、サビの方がAメロよりも半音だけキーが低いという珍しい事態になっていたので、間奏では「キーを半音上げて戻す」という、普通の曲とは逆のパターンの転調になっています。
本曲は、オーケストラやヴォーカルのハーモニーなどが綺麗で、それだけでも美しい楽曲であると言えるのですが、特に、Bメロからサビに至る幾度にもわたる転調が秀逸で、心にグッとくるものがありました。