amazarashi「虚無病」のコード進行解析と楽曲の感想


本記事では、2016/10/12発売のamazarashiのミニアルバム「虚無病」の同名の表題曲のコード譜と、音楽的な解説、および楽曲を聴いた感想を記していきます。

「虚無病」の概要

本曲は、青森県出身のバンドamazarashiのミニアルバム「虚無病」に収録される同名の楽曲です。彼らの他の楽曲と同様に、タイトルも歌詞も大変インパクトのある内容となっています。

「虚無病」のコード進行

●イントロ
|Am|Bm7-5/A|F7|F7|
|Am|Bm7-5/A|F7|F7|
|Am|Am|F7|F7|
|Am|Am|F7|F7|

●Aメロ(1コーラス)
|Am|Am|F7|F7|
|Am|Am|F7|F7|
|Am|Am|F7|F7|
|Am|Am|F7|F7|

●Bメロ
|F|F|Am|C/B♭|
|F|F|Am|C/B♭|

●サビ
|F|Am|Em|F|
|F|Am|Em|Dm|
|Am|C|F7|F7|
|Am|C|F7|F7|

●Aメロ(2コーラス)
|Am|C|F7|F7|
|Am|C|F7|F7|
|Am|Am|F7|F7|
|Am|Am|F7|F7|

※Bメロ繰り返し

※サビ繰り返し

●間奏
|Am|Am・B♭Gm|
|Am|Am (N.C.)|
|FM7|FM7|Am|Em|
|F|F|Am|Dm7 Em7|

●Cメロ
|Am|Em|F|F G|
|Am|Em|F|F G|
|F|F|Am|Am|
|F|F G|Am|Am|
|(N.C.)|(N.C.)|

※サビ繰り返し

●後奏
|F|Am|Em|F|
|F|Am|Em|Dm7|
|Am|Am|

イントロ

静かな感じのイントロから始まる楽曲です。本曲のキーはAマイナーで、楽譜で表した場合、#も♭もつかない調性です。全体を通して転調は行われていません。

本曲は、イントロからとても変わったコード進行が使われています。2つ目のコードのBm7-5/Aも珍しいと言えば珍しいですが、そのあとのF(Ⅳ)7がセブンスがつくことによってノンダイアトニックになったコードで、アレンジの巧さもあり、とても奇妙な感じを表現しています。イントロ以外でも、随所にこのF7というコードが存在しますが、このコードは単にF(サブドミナント)を弾くのとは全く異なる印象を与えるので、楽器で弾かれる際は、セブンスの音(ミ♭)は必ず演奏されるように弾いてください。

伴奏ではクワイアのようなコーラスも鳴っていて、コードだけでなくこのようなアレンジも、奇妙な感じを出すことに一役買っています。

Aメロ~Bメロ

Aメロでは特に後半8小節(「♪感染」から始まる部分)でスネアの細かいビートが刻まれ、スピード感は徐々に出していますが、コード進行はイントロと同じくF7が使われることで奇妙な感じはずっと保ったままでいます。
なお、AメロもBメロも1コーラスと2コーラスではアレンジが大きく異なっており、特に、Aメロの前半8小節についてはコード進行も異なっています。1コーラスと2コーラスで全く異なるアレンジをするのは、編曲の労力も相当のものであり、作り手の細かいこだわりが感じられます(どうでもいいことですが、僕はDTMをやるとき、2コーラスは、1コーラスをコピペして、ちょっとだけ音を追加するようなずるい方法を使ってるので、そういう人から見ると、本曲のように全く異なるアレンジをできるというのは尊敬します)。

BメロはAメロに比べると全体的におとなしめなパートです。4小節目と8小節目で、B♭をルート音とする特殊コードの響きが感じられました。C/B♭と表記しましたが、B♭もしくはB♭M7のようにも聞こえて、コードの耳コピが難しかった部分です。いずれにしても、B♭(Ⅶ♭)の音が、ノンダイアトニックコードの主役となっていて、インパクトを感じさせているのは確かだと思います。

ここまでの歌詞を見ると、文章の形というよりは、名詞を羅列している箇所が多く見られます。しかも、その内容はネガティブなものばかりなので、ずっと聴いていると怖くなりそうです。

サビ

サビは節回しが細かいメロディーで、前半のコード進行はF(Ⅳ)→A(Ⅵ)m→E(Ⅲ)m→F(Ⅳ)というものです。この部分にはノンダイアトニックな変わったコードは存在しませんが、サビの最初にこのコード進行が使われている楽曲は、J-POP全体で見ると、比較的少ないのではないかと思います(2つ目のコードがG(Ⅴ)ならば定番中の定番である「王道進行」になります)。

後半は、「虚無の犠牲者」というフレーズを連呼する部分で、この部分にノンダイアトニックコードであるF7が再登場します。「虚無の犠牲者」というワードが、本曲のテーマになっているものと思われますが、一体どういう意味なんだろうと考えさせますね。

Cメロ~

ここも「〇〇がない」とか「〇〇が嫌い」等、ネガティブな内容を連呼する歌詞になっています。コード進行はダイアトニックコードのみを用いたオーソドックスなパターンです。

Cメロからラスサビに至る部分は、リズムが変則的になっているように聴こえました。普通に4/4拍子でリズムを取っていると、1拍の半分くらい長さが足りないような気がするので、おそらくラスサビの最初の小節か、その前の小節のどちらかが、7/8拍子になっているのではないかと思います。

ヴォーカルの最高音は、サビの最初の他、数か所で使われている「ソ」で、最低音は「♪オーバーテクノロジー」という部分で使用されている、オク下の「ソ」。全体的にキーが高い楽曲ですが、音域は1オクターブちょうどで、近年の楽曲としてはそれほど広いわけではありません。

メロディー自体はとてもキャッチーで、音もとても綺麗で、大ブレイクを予感させる素晴らしい楽曲だと思いました。カラオケ等でも歌ってみたいと思いました。ただ、歌詞がものすごい内容なので、一人で歌って鬱にならないように気を付けたいと思います(笑)。

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