目次
はじめに
本記事では、B’zのシングルの楽曲で使われているコード進行をパターン分けし、よく使われているもの順にリストアップし、各々のパターンについて解説をしていきます。
これまでブログをはじめてから、AKB48、ラブライブ関連といったアイドル系、アニメ系のヒットソングでよく使われるコード進行をパターン分けしてきました。すると、驚いたことに、どちらの場合においても、良く使われるコード進行のパターンの上位3位まで全く同じ組み合わせであり、しかもその3つというのは、「三大コード進行」と言われる「カノン進行」「王道進行」「小室進行」の3つと一致したのです。
ただ、AKB48とラブライブは、ジャンルこそ違うものの、曲の傾向としては似ており、同じような結果になるのも、それほど驚くべきことでないかもしれません。
それならば、これらの音楽と音楽性が全く異なるようなジャンルで集計して見たらどうなるんだろうと気になり、できるだけアイドルソングとはジャンルが異なり、かつ、日本でヒットしているアーティストとして真っ先に思いついたのがB’zだったわけです。
B’zは1988年のデビュー以来、52枚のシングルを発売していますが、最初の4作を除く48作がオリコン1位を取得しており、1位の数や連続取得数などは日本記録となっています(いずれも2016年現在)。また、1990年代初頭にミリオンヒットを連発し、ミリオンの作品数としてもAKB48が登場するまでは日本記録を所持していました。デビューから25年以上経ってもシングル、アルバムとも出せば必ず売れる状況で、ライブも非常に人気があり、日本を代表するアーティストと言っても良いでしょう。
そんなB’zの楽曲のコード進行に注目した場合、果たしてどのようなパターンが多いのでしょうか?そして、それは一般のJ-POPで使われているパターンの傾向と一致するのでしょうか?
コード進行・音楽理論に興味ある方はもちろん、そうでない方でも、単なる記号の羅列ではなく、それぞれの進行がどういった感覚を持つのかも併記することで、楽しく読んでいただけるように工夫しておりますので、ぜひ読んでいただければ幸いです。
集計対象曲および諸注意
集計する曲は、2015年までにB’z名義で発売されたシングルのうち、1曲目に収録された計52曲です。著名な曲であってもアルバム曲は除外しています。これは、アルバム曲を恣意的に選ぶことにより、結果が偏るのを防ぐためです。かといって、発表されている全ての曲を調査するのはとても無理なので、シングル曲だけにさせていただきました。
コード進行の分類は、僕のブログで行っているオリジナルの方法である「サビの最初の2つのコードのみで、曲を分類する方法」により行っています。詳細は下記の記事に記載しています。
最初の2コードで分類する方法をとるので、「最初はカノン進行だけど途中から王道進行」という楽曲があったとしても、それはカノン進行として集計します。サビの最初の2つのコードのみに注目していることから、他のサイトとパターンの判定が異なることがあります。B’zの曲はサビに転調して入ることが多いので、必ずしも最初の2つだけがサビのインパクトを決めるものとはならず、同じパターンに属しても似ている曲でないこともありえます。また、各曲のコード進行は、他サイトで調べたものではなく、全て僕の耳コピによるものです。中には聞き取りが難しく、正しいかどうか自信が持てないものも存在しますが、その点はご了承ください。
他のアーティストで集計した結果は、こちらのサイトマップ内の「コード進行」のカテゴリの中のリンクからご覧いただけます。
B’zのシングル曲で使われたコード進行ランキング
1位 Ⅰ→Ⅴパターン(カノン進行) 14曲
- 愛しい人よGood Night…
- LADY NAVIGATION
- ALONE
- Don’t Leave Me
- Calling
- GOLD
- 野生のENERGY
- BANZAI
- ARIGATO
- 愛のバクダン
- OCEAN
- ゆるぎないものひとつ
- 永遠の翼
- さよなら傷だらけの日々よ
B’zシングルのサビで一番多く使われたコード進行は、カノン進行と呼ばれるパターンでした。邦楽、洋楽問わず非常によく使われたコード進行で、結果的にはこれまで集計したジャンルと同じ結果になったわけですが、曲の内訳を見てみると、B’zに詳しい方ならある傾向に気づくかもしれません。B’zがミリオンヒットを連発していたのは90年代ですが、その頃の曲は4曲しかありません(「LADY NAVIGATION」~「Don’t Leave Me」。ちなみに、曲の内訳は発売日順に並んでいます)。そして、しばらくカノン進行の曲は出ていなかったのですが、2003年に発売された「野性のENERGY」を皮切りに、「OCEAN」までなんと6作連続でカノン進行のサビの曲が続くのです。
他のアーティストに比べてそれほどカノン進行を多用していなかった彼らが、2000年代中盤に突如としてその進行の曲を連発したことにより、結果として全シングルの集計結果はカノン進行がダントツとなりましたが、2000年頃に同じような集計をしていたならば、全然違う傾向になっていたはずです。なぜこのような傾向が出たかはわかりませんが、このようなことを考察するのも面白いですね。
それから、B’zのシングルではバラード曲も多いのですが、バラードの中ではカノン進行がかなりの割合を占めているのも特徴です。集計対象にはしてませんが、非常に有名なアルバム曲である「いつかのメリークリスマス」もカノン進行の楽曲です。
2位 Ⅳ→Ⅴパターン(王道進行) 9曲
- 愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない
- MOTEL
- ねがい
- さまよえる蒼い弾丸
- HOME
- ギリギリchop
- RING
- 衝動
- MY LONELY TOWN
2位は王道進行の楽曲となりました。これもAKBやラブライブで集計した結果と同じです。(ちなみに、当ブログではサビの最初の2つのコードがⅣ→Ⅴと進行するものを全て王道進行と呼んでいますが、一般にはそのあとⅢmが来るもののみを王道進行と呼ぶケースが多いようなので、ここで挙げた楽曲のいくつかは他の方が分類した場合は王道進行とみなされない可能性があります。)
B’z最大のセールスを誇る「愛のままに~」や、ミリオンセラーを記録した「MOTEL」「ねがい」等、90年代のヒット曲も複数含まれています。「J-POP進行」「王道進行」などと言われるように、このコード進行で構成された楽曲が日本では多くヒットしており、B’zもその例外ではないことがわかります。(※「MOTEL」については、「♪ひとりじゃ、ないから」の部分はコードなしとして、その次のフレーズからの進行で判定しております)
3位 Ⅵm→Ⅴパターン 5曲
- Liar!Liar!
- 今夜月の見える丘に
- IT’S SHOWTIME!!
- SUPER LOVE SONG
- BURN -フメツノフェイス-
3位はⅥm→Ⅴと進むパターンでした。これまで集計した記事の中では、初めて3位以内に、「三大コード進行」でないものがランクインしました。
この進行はⅥm→Ⅴ→Ⅳと進むことが多く、これは「小室進行」の変形とみなすサイトも多くあります(「SUPER LOVE SONG」以外の4曲がこのパターンです)。
この後に挙げる小室進行と合わせると9曲あり、かつてTMNでサポートメンバーを務めていた松本孝弘が、TMNで多用された小室進行や本パターンに影響されて作った楽曲も、もしかしたら存在するのかもしれません。
4位 Ⅵm→Ⅳパターン(小室進行) 4曲
- 君の中で踊りたい
- BE THERE
- ZERO
- LOVE PHANTOM
4位が小室進行でした。明るいというよりはカッコいいイメージを持つ楽曲が多いコード進行です。J-POP進行全体でみると非常に多い進行ですが、上記のⅥ→Ⅴパターンと分散してしまったこともあるのか、予想より少ない結果となりました。上に挙げた4曲は、いずれも初期の楽曲ばかりであり、2000年以降のシングルでは全く使われていないというのが意外です。
5位 Ⅰ→Ⅳパターン 3曲
- Easy Come, Easy Go!
- 裸足の女神
- 熱き鼓動の果て
3曲のパターンが3つありました。まずは明るい感じを受けるⅠ→Ⅳパターン。このパターンは特に名前が付けられて呼ばれているわけではないのですが、J-POPのどのジャンルにおいても非常に良く耳にする進行です。
上記の3つの楽曲はコードのパターンだけでなく、キーがAであるという共通点もあります。つまり、コードはいずれもA→Dと進行します。同じパターンの3曲がたまたま全て同じキーであるというのは偶然とは思えないので(キーは全部で12通りあります)、この進行でギターを弾くと曲が作りやすいとか、このキーが気に入っている等の理由があるのかもしれません。
5位 Ⅵm→Ⅱパターン 3曲
- LADY-GO-ROUND
- FIREBALL
- SPLASH!
Ⅵm→Ⅱパターンの曲が3曲ありました。Ⅱというコードが登場するのは比較的珍しく、代わりにⅡmが使われることの方が多いのですが、そのパターンは非常に悲しいとか哀愁を感じるコード進行で、B’zの楽曲にはほとんど見られません。Ⅱを使うことで、楽しく砕けた感じの印象を与え、マイナーコードで始まる曲にもかかわらず明るい印象に仕上がっている楽曲が多いです。3曲とはいえ、このコード進行が上位に来るというのはJ-POP全般には見られない、B’zだけの特色であるといってもいいかもしれません。
5位 Ⅵm→Ⅰパターン 3曲
- May
- GO FOR IT, BABY -キオクの山脈-
- RED
カッコいい系の曲で使われることが多いⅥm→Ⅰパターンも3曲。クラシックでは「禁制」などと呼ばれることもありますが、J-POPでは割と頻繁に使わている進行です。3曲のうち最後の2つは2010年以降発売された作品なので、それまではほとんどこのパターンのシングル曲は存在しなかったことになり、少し意外でした。
2曲以下のパターン
- Ⅰ→Ⅵmパターン・・・「ミエナイチカラ ~INVISIBLE ONE~」「Don’t Wanna Lie」
- Ⅳ→Ⅰパターン・・・「Real Thing Shakes」「有頂天」
- Ⅰ→Ⅱパターン・・・「BLOWIN’」
- Ⅰ→Ⅲmパターン・・・「イチブトゼンブ」
- Ⅱm→Ⅴパターン・・・「love me, I love you」
- Ⅳ→Ⅵmパターン・・・「だからその手を離して」
- Ⅴ→Ⅱパターン・・・「juice」
- Ⅵm→Ⅱmパターン・・・「太陽のKomachi Angel」
- Ⅵm→Ⅲパターン・・・「ultra soul」
2曲以下のパターンは以上の通りです。「太陽のKomachi Angel」のⅥm→ⅡmはJ-POP全体で見ればかなり頻度は高い進行ですが(AKB48グループでは4位の進行)、前述したようにB’zの場合は代わりにⅥm→Ⅱを使うパターンの方が多いため、このパターンは1曲のみとなりました。「イチブトゼンブ」のⅠ→Ⅲmも決して珍しいパターンではないのですが、B’zでは珍しい部類に入るのですね。
逆に、「juice」のⅤ→Ⅱというパターンは、おそらく1000曲に1曲もないレアなケースです。前述のⅥ→Ⅱや、このⅤ→Ⅱ、および、「BLOWIN’」のⅠ→Ⅱなど、B’zの楽曲ではサビの2つ目のコードとして、通常あまり使われない(専門用語でいうと、ダイアトニックコードではない)Ⅱというコードを使用する曲が比較的多いと言えるでしょう。
まとめ
B’zの楽曲においても、カノン進行と王道進行が多いという点は多くのJ-POPと同じ傾向を見せましたが、カノン進行については、発売時期によりかなりの偏りがありました。また、僕のブログで集計したアーティストのうち、初めて小室進行が3位に入りませんでした(ただし、3位に入ったのは小室進行によく似たⅥ→Ⅴですが)。それと、通常はサビの2つ目までに使われる頻度は高いとは言えないⅡも、B’zにおいては結構な割合で使われていることも特徴といえます。
1位と2位はAKBやラブライブの場合と変わらなかったものの、細かい部分で傾向が違うところはたくさんありました。まあ、音楽性が全然違うジャンル同士を比べているわけですから、そのくらい異なってこないとおかしいわけですが・・・。今後も色んなアーティストやジャンルにおいて同様な集計を行ってその結果を記していきたいと思います。