私立恵比寿中学の新曲「まっすぐ」のコード進行解析と、楽曲の感想


本記事では、2016/9/21発売の私立恵比寿中学の新曲「まっすぐ」のコード進行と、音楽的な解説、および楽曲を聴いた感想を記していきます。

「まっすぐ」の概要

本曲は、女性アイドルグループ・私立恵比寿中学の記念すべき10枚目のシングル曲です。作曲は、アイドル曲を中心にヒット曲を数々生み出している杉山勝彦氏。彼の手掛けたヒット曲としては、SKE48「前のめり」や、乃木坂46の「制服のマネキン」等があります。

本作はアイドル曲の王道を行く、非常に前向きで明るい曲調の作品となっております。

「まっすぐ」のコード進行

●イントロ
|G D/F#|Em Bm/D|C G/B|Am D|
|G D/F#|Em Bm/D|C G/B|A|
|Dsus4|D|

●Aメロ
|G C|G・・D/F#|Em C|D|
|Em C|D G|C|Dsus4 D|
|G C|G・・D/F#|Em C|D|
|Em C|D G|C|Dsus4 B7|

●Bメロ
|CM7|Bm7|Am B7|Em Bm/D|
|CM7|B7 Em|Am7 Bm7|Cm7|
|Dsus4 D|Esus4 E|

●サビ
|A|E|F#m|C#sus4 C#|
|DM7|C#7 F#m|Bm7 C#m|Dm E|
|A|E|F#m|C#sus4 C#|
|DM7|C#7 F#m|Bm7 C#m|Dm E|

●間奏1
|A E/G#|F#m C#m/E|D A/C#|B|
|Esus4|C D|

※Aメロ~サビ 繰り返し

●間奏2
|A|C#sus4 C#|

●Cメロ
|D|E|F#m・・E/G#|A|
|D|D|E|E|
|A|A|D|D|F#m|F#m|D|D|
|E|E|E|

●間奏3
|A/C# D E|E F#m E/G#|
|A/C# D E|E F#m E/G#|
|A/C# D E|E F#m E/G#|
|GM7|〃|Esus4|E|

●ラスサビ
|A|E|F#m|C#sus4 C#|
|DM7|C#7 F#m|Bm7 C#m|Dm E|
|A|E/G#|C#sus4 C#|F#m|
|DM7|C#7 F#m|Bm7 C#m|Dm E|
|F#m|E|Bm7 C#m|Dm|Esus4/D|E|

●後奏
|A E/G#|F#m C#m/E|D A/C#|Bm E|
|A E/G#|F#m C#m/E|D A/C#|B|
|Esus4|E|DM7|D・A/C# Bm|A|

イントロ

イントロは典型的な「カノン進行」で始まります。更に、ベース音がG→F#→…Aと徐々に下げる定番テクニックも使われており、まさにアイドルソングの王道とも言えるようなコードのパターンと言えます。

8小節目にA(Ⅱ)という非ダイアトニックコードが初めて登場します。これはAm(Ⅱ)でも代わりが効くところですが、あえて非ダイアトニックコードにすることで、ちょっとおしゃれな感じを出すことができます。

キー(調)はGメジャー(Eマイナー)で、サビのみ転調する形になります。

Aメロ

イントロと同じく、スネアドラムを4拍全てに効かせたノリの良いリズムです。基本的なコード進行が続きますが、最後のB7(Ⅲ7)があることで、次にマイナー進行系のコードが来て、曲の表情が変化するかもしれない、という予感があります。

Bメロ

Aメロ最後のB7(Ⅲ7)によって、ドミナントのC(Ⅳ)から始まるちょっぴり切ないコード進行が始まります。調号が変わるような転調ではありませんが、AメロはGメジャー、BメロはEmが主体となった曲調になっています。リズムはアイドル曲に多く見られる「PPPH」的なリズムですね。

Bメロの最後で、Dsus4→D→Esus4→Eというコード進行があり、この進行がある場合は転調が行われるとみて間違いはありません。Esus4→Eは、Aメジャー(またはAメジャー系統のコード進行)を強く誘導する部分だからです。

サビ~間奏

前述のEsus4→Eに誘導されて、Aメジャー調への転調が行われます(というよりは、この転調をしたいがために、Bメロの最後にEsus4→Eを挿入したのだと思いますが)。#が2つ増える転調であり、「同主調」や「属調」のような名前がついてるわけではありませんが、ポップスでは非常に多く使われる転調です。

サビ自体のコード進行はイントロと同じくカノン進行ですが、4小節目のC#sus4→C#(Ⅲsus4→Ⅲ)は比較的珍しく、普通はC#mが使われることが多いです。C#mを使うよりもちょっと切ない感じが強調されていますね。

また、8小節目のDm→E(Ⅳm→Ⅴ)も細かいところで、D(Ⅳ)→Eとすれば平凡ですが、あえて「サブドミナントマイナー」と呼ばれる非ダイアトニックなDm(Ⅳm)を使用して、いい意味での違和感を出してメロディーを引き立てています。

サビで転調したキーは、そのあとの間奏の最後のC→Dという進行により、元のGメジャーの調に戻ります。Aメロで突然調が戻ってしまうと、大きな違和感を与えたままヴォーカルが入ってしまうことになるので、違和感を前の小節に押し付ける形で、Aメロが始まった時には既に転調が完了して、もともとGメジャー調の曲であったかのように聴こえるような作りになっています(ただし、突然調が変わることは決して悪いことではなく、その違和感をあえて出すことにより、インパクトを与えているような曲も、たくさんあります)。

Cメロ~ラスト

本曲は、比較的長いCメロがあるのが特徴です。特に、後半の9小節目からの「♪はじめて」からの部分は、この部分がサビである別の曲を作っても売れそうなくらいキャッチーな部分です。1拍ごとに1音が乗ったメロディーで、コーラスとのハーモニーも非常に綺麗に効いていますね。個人的にはこの部分が大変気に入りました。

Cメロ後の間奏は、ちょっと変わったリズムで入り、コード進行もコードそのものの響きではなく、そのルートコードが大事になりますので、単音かパワーコードでルートの音を弾き、あまり和音の感覚を出さない方が自然に聴こえるのではないかと思います。

後はラスサビですが、サビ後半の3小節目(「♪君の味方で」)という部分は、1,2コーラスとはメロディー、コード進行ともに異なり、聴き手に大きなインパクトを与える見せ場になっています。

なお、本曲のヴォーカル最高音は、ラスサビの最後の音で、高い「ミ」にあたり、これ以外の箇所でも高い音がたくさん続くので、原曲キーで歌うにはかなりきつい楽曲だと思います。

「まっすぐ」という言葉の通り、まっすぐで正統派なコード進行を多く使っていますが、決してそれだけというわけではなく、所々で珍しいコードも混ぜてアクセントを出したり、転調も行われたりで、作曲をする立場の方にも参考になる部分が多い曲だと思いました。

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