HKT48「最高かよ」のコード進行解析と感想


本記事では2016年9月7日発売のHKT48のシングル、「最高かよ」のコード進行を耳コピで採譜したものをもとに、その解説や感想を述べていきたいと思います。

「最高かよ」の概要


本作はHKT48の8作目のシングルです。HKT48は、デビュー作から全てのシングル曲でオリコン週間1位を達成しており、本作も1位を取る公算が非常に高いです。

作曲者は和泉一弥氏で、彼はこれまでカップリング曲などは何作か担当していますが、AKB48関連グループのシングル表題曲を担当するのは初めてです。過去には中森明菜のヒット曲「LIAR」「Dear Friend」といった楽曲も手掛けた経歴があります。

本曲は、掛け声が多く入ったアイドルポップスで、コード進行は素直なものが多いため、かなり採譜がしやすかったです。

上の動画は、HKT48の公式チャンネルによりYoutubeにアップされたものです。ワンコーラスのみとなっていますので、コード採譜もその範囲内で行わせていただきました。

「最高かよ」のコード進行

イントロ~最初のサビ

|B|B|B|B|
|E|E|G#m|G#m|Bm|C#|F#m|F#m・・G#m|
|A|B|G#m|C#|F#m|B7|A E/G#|F#m E|A E/G#|F#m EG#|

ドミナントコードで4小節分ほど、徐々に盛り上がりながらフィルインし、サビに突入します。サビのコード進行はⅠ→Ⅲmというパターン。これはカノン進行(Ⅰ→Ⅴ)と非常によく似たパターンであり、AKB48関連のシングルでサビがこのパターンから始まる曲は、他に「ヘビーローテーション」「鈴懸なんちゃら」「翼はいらない」「オキドキ」等があります。

特に、「ヘビーローテーション」とはコード進行、キー(Eメジャー)がともに同じであり、また、出だしのメロディーの数音が同じであったり、伸ばすメロディーが多いなど共通点が多く、この曲と雰囲気が似ていると思われた方も多いのではないでしょうか?

2段目の5小節目と6小節目は、Bm→C#(Ⅴm→Ⅵ)と、ダイアトニックではないコード進行が使われていて、やや変化を出しています(ダイアトニックでないとは、コードの構成音を楽譜で表すためには、臨時の調号を使わないといけない、という意味です)。

3段目からの進行は典型的な「王道進行」。サビの後半で王道進行が入るというのも「ヘビーローテーション」と同じ構成です。最後の方ではベースラインをA→G#→F#→Eと下げながら自然なコードを奏でるテクニックが使われています。

これらの部分はいずれも、最初のサビにおいてはヴォーカルのメロディーラインはなく、掛け声が入っています。

間奏の一番最後の小節の、最後のG#(Ⅲ)は、うっかりすると聞き逃してしまうかもしれませんが、1拍分だけこのコードで弾かれていて、これはAメロで自然に転調して入るための布石になっています(後述)。

Aメロ

|D♭|D♭|Fm|Fm|B♭m|B♭m|Fm|Fm|
|G♭|A♭|Fm|B♭m|E♭m|A♭|D♭sus4 D♭|D♭sus4 D♭|

イントロのキーはEメジャーですが、AメロではD♭メジャーに転調しています。この転調のテクニックについて述べさせていただきます。

前述したイントロの最後で使われているG#(A♭)というコードは、Eメジャー調におけるⅢであり、このコードは非ダイアトニックでありながら、比較的自然に使われることが多いコードです。

また、G#(A♭)は、D♭メジャー調ではドミナント(V)の役割を持ちます。したがって、G#(A♭)というコードは、前後の調のどちらでも自然に使うことができるコードであり、そのようなコードを架け橋として使うことで自然な転調を行っているのです。たった1拍だけですが、このコードにはこれだけの意味が込められているのです。比較的多くの曲でこのような方法によって転調を行っています。

なお、音楽理論的な転調の分類としては、キーが3半音変わる「同主調」への転調ということになります。

転調後のコード進行はここでもⅠ→Ⅲmの進行で、後半では「王道進行」が使われています。3小節目はA♭とすればカノン進行になりますが、どちらが良く聞こえるかは好みの問題でしょう。

Bメロ直前では、真ん中の音だけ変化するⅠsus4→Ⅰという進行が奏でられています。このあたりのヴォーカルのハモリはとてもきれいです。

Bメロ

|C#m|F#m7|B|E|A|F#m|B|B|B|B|

ここで再度Eメジャーに転調して元の調に戻ります。(厳密にはC#マイナーですが、調号の数は同じなので、ポップスにおいてはEメジャーと同じ調と見なしても構いません。)

C#メジャーのコードがいつのまにかC#マイナーに変わっており、ベース音は変えずにそれ以外の構成音だけを変える転調のテクニックです。このような転調方法もよく使われます。先ほどのイントロ~Aメロの場合は、転調の布石となるようなコードがあるため、「転調しそう」というところから実際に転調しましたが、今回はそのようなコードがないため、「いきなり転調した」というような感覚を持ちます。

この転調も先ほどと同じ「同主調」への転調。C#メジャーからC#マイナーに変わっているため、この言葉の意味としても分かりやすいのではないでしょうか?(「主」というのはルート音C#のことで、同じルート音のメジャーとマイナーが変わっただけの転調という意味です)。

「お~!」という掛け声は、PPPHの掛け声そのもので、ライブでも盛り上がりそうですね。それ以外にも掛け声が非常に多いのがこの楽曲の特徴の1つです。

サビ直前でB(Ⅴ)が4小節続くのは、本曲の出だし部分と共通していますね。

サビ

|E|E|G#m|G#m|C#m|C#m|A|B|
|E|E|G#m|G#m|Bm|C#|F#m|F#m・・G#m|
|A|B|G#m|C#|F#m|B7|A E/G#|F#m E|A E/G#|F#m EG#|

サビは、冒頭では見られなかったⅠ→Ⅲm→Ⅵmの進行のメロディーがワンフレーズ流れてから、2週目に冒頭と同じコード進行が流れるという構成になっています。ただし、冒頭では掛け声オンリーだった箇所は、この部分ではメロディーが入っています。

イントロのところでも少し述べましたが、2段目の5小節目のBmがあえて外した感じのコードを使用しており、非常に良い味を出しています。1巡目と同じように平凡にC#mが来ると思って聞いているので、「はっ」とする感じです。また、そのあとの3段目は、全音違いの音を交互に奏でるメロディーラインが「王道進行」の上に載ったキャッチーなフレーズで、個人的にも好みの部分です。

アレンジについて述べると、他のAKBグループの楽曲でもよく見られるように、全体的にシンセブラスが非常に目立っており、楽曲にいい味を付けています。

なお、この曲の最高音は、少なくとも1コーラスまででは「シ」の音になります。女性曲としてはそれほど高いキーではないので(前述の「ヘビーローテーション」よりも1音低い)、高い音が苦手な女性の方でも歌いやすいのではないかと思います。

まとめ

HKTの新曲「最高かよ」のコード譜を耳コピにより採譜しました。サビはAKB48の「ヘビーローテーション」と共通点が多いながら、Bm(Ⅴm)の特殊な響きであったり、転調であったり、掛け声の多さといった本曲独特の特徴も多く、聴いていて楽しい気分になれる楽曲であるという感想を持ちました。

今後も様々な楽曲のコード進行解析を行っていきたいと思います。

※HKT48を含め、AKB48関連曲のコード進行の傾向をまとめた記事も書いています。興味があればご覧ください。

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