本記事では、桑田佳祐の2016/11/23発売のシングル「君への手紙」および、2016/11/30発売のDVD/BD「THE ROOTS ~偉大なる歌謡曲に感謝~」に収録予定の楽曲「悪戯されて」のコード譜と、音楽的な解説、および楽曲を聴いた感想を記していきます。
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「悪戯されて」の概要
本曲は、桑田佳祐が出演したWOWWOWの番組「偉大なる歌謡曲に感謝 ~東京の唄~」で披露された楽曲です。上記の通り、映像作品およびシングルのカップリングとして収録される予定となっています。
「悪戯されて」のコード進行
●イントロ
|Cm7|A7|D7|D7|
●サビ
|Gm|B♭/F|Cm7|E♭/B♭|
|F/A|F|B♭|D|
|Gm|B♭/F|Cm7|E♭/B♭|
|Gm|D7|Gm C|Gm G・・|
●間奏
|Cm7|Gm|D7|Gm|
|Cm7|Gm|D7|Gm D・・|
●Aメロ
|Gm|A7|D7|Gm|
|Gm|A7|D7|D7|
|Gm|A7|D7|Gm|
|Gm|A7|D7|Gm|
●Bメロ
|E♭|E♭|B♭|B♭|
|Cm|E♭/B♭|A7|D7|
●サビ
|Gm|B♭/F|Cm7|E♭/B♭|
|F/A|F|B♭|D|
|Gm|B♭/F|Cm7|E♭/B♭|
|Gm|D7|Gm C|Gm D|
オーケストラ+コーラス隊と、昭和の香りが漂う歌謡曲調の楽曲です。Cm7→Aと入るので調性がわかりにくいかもしれませんが、キーはGマイナーで、楽譜だと♭2個の調です。したがって、イントロのコード進行はⅡm→Ⅶ→Ⅲという入りになっており、近年のポップスでは殆ど見ないパターンですが、歌謡曲においてはごくありふれたコード進行です。
特に、Ⅶというコードが強烈なインパクトを持ち、歌謡曲っぽさを出すのに一役買っています。Ⅶ→Ⅲ→Ⅵmという一連の進行は、歌謡曲ではおなじみの「ドミナントの二段モーション」ともいうべきでしょうか(僕が勝手に作った用語です)、Ⅲと自体がⅥmやⅣを誘導する切ない印象のコードなのですが、ⅦはそのⅢを誘導し、Ⅲ以上に切なく目立つコードなので、普通の明るいポップスなどではインパクトがありすぎて逆に使われないことも多いのです。本曲ではAメロ、Bメロ、サビともに、要所でⅦが登場し、大きな存在感を放っています。Bメロなどは、最初の4小節くらいはメジャー系統の明るいコード進行なのですが、このⅦが登場することで一気にマイナー調の切ない印象に様変わりしますね。
ちなみに、このⅦ→Ⅲという進行は、例えばサザンの「チャコの海岸通り」のイントロ、「HOTEL PACIFFIC」のサビなどでも使われています。
本曲ではⅦやⅢの他に、C(Ⅱ)、G(Ⅵ)といったダイアトニックコードもわずかながら登場し、Ⅰ~Ⅶまでのメジャーコードは7種全て使われていることになります。メジャーコードというと明るい印象を持つかもしれませんが、このようにコードの流れの中で使われると、むしろ強烈な切なさを出すメジャーコードも存在する、ということをわかっていただけるのではないでしょうか。
ヴォーカルの最高音はサビのラストの「ミ♭」、最低音はAメロやBメロの「レ」で、音域は1オクターブ+1音となっております。桑田佳祐特有の、溜めて歌う節回しや、サビの先頭では一旦低い音域を使って、ラストに盛り上がる部分を持ってくる構成など、「らしさ」が出ていると思います。
桑田佳祐やサザンの楽曲は、最近ではどちらかというとバラードや明るめのロック、フォーク的な楽曲が多く、ここまでコテコテの歌謡曲は久しぶりに聴いたという印象です。様々なジャンルの楽曲を作り上げ、かつ自身で歌い上げる桑田の音楽的な感覚は、毎度のことながら見事としか言いようがありません。
本曲が収録される作品のうちの1つ、シングル「君への手紙」の記事も書きましたので、興味があればぜひご覧ください。