当ブログでは様々なアーティストについて、頻繁に使われるコード進行の傾向を解析しています。今回は中森明菜について集計を行ってみました。
中森明菜は1982年に「スローモーション」でデビューすると、次の「少女A」が早くもブレイクし、それ以降出す曲出す曲がヒットを飛ばしました。80年代に活躍した他の多くのアーティストとは異なり、低い声、暗い楽曲といったイメージに特化した路線が大衆に受け、レコード大賞を2年連続で受賞するなど、80年代を代表する歌手の1人となりました。
90年代以降は女優としても大活躍。その後は数々のスキャンダルもあり、最近は長期の活動休止を行っていましたが、2014年の紅白歌合戦に出場したのを機に、それ以降は精力的な活動を続けています。当記事ではそんな中森明菜の楽曲で、どのようなコード進行の楽曲が多いのか、また、それは他のアーティストの傾向と同じなのかを分析してみたいと思います。
目次
集計対象曲および諸注意
集計対象とする曲は、中森明菜が2016年2月までに発売したシングルの1曲目で、全49曲となります。アルバム曲やカップリング曲にも著名な曲がありますが、集計が偏るのを防ぐため、シングルの曲だけにさせていただきました。配信限定のシングルも除外しております。
コード進行の分類は、僕のオリジナルの方法である「サビの最初の2つのコードのみで、曲を分類する方法」により行っています。詳細は下記の記事で書いています。
サビの最初の2つのみに注目した方法であるため、「王道進行」や「カノン進行」といった用語の定義が他のサイトと若干異なることがありますがご了承ください。
同じ順位での楽曲一覧は、発売日が古い順に並べています。
中森明菜のシングル曲で使われたコード進行ランキング
1位 Ⅵm→Ⅳパターン(小室進行)8曲
- 禁区
- 十戒 (1984)
- AL-MAUJ (アルマージ)
- 水に挿した花
- The Heat 〜musica fiesta〜
- 落花流水
- DIVA
- Rojo -Tierra-
中森明菜のシングルのサビで最も使われたコード進行は、8曲のものが2つありました。そのうちの1つは、Ⅵm→Ⅳと進む、いわゆる「小室進行」。小室哲哉が多用したことでその名がついた進行ですが、小室哲哉が活躍する前に発売された曲も多数あることからわかるように、小室哲哉が発明したコード進行というわけではありません。
上記の中に小室哲哉提供の楽曲はありませんが、小室哲哉が中森明菜に提供した「愛撫」という曲は小室進行です(シングルのカップリングのため、集計からは外しております)。
このコード進行は暗い曲やカッコいい曲で使われることが多く、逆に、明るい曲やカワイイ系の曲では使われにくいという特徴があります。この進行が多いという事は、中森明菜の曲調がそのような路線で売れていったことを裏付けていると思います。
1位 Ⅵm→Ⅴパターン 8曲
- 1/2の神話
- ミ・アモーレ
- DESIRE -情熱-
- MOONLIGHT SHADOW-月に吠えろ
- APPETITE
- オフェリア
- Trust Me
- 花よ踊れ
Ⅵm→Ⅴと進む楽曲も8局ありました。レコード大賞を受賞した2曲「ミ・アモーレ」「DESIRE」はともにこの進行です。この進行は小室進行と同様に、暗い曲、カッコいい系の楽曲で使われることが多い進行で、当ブログで集計したアーティストの中では、水樹奈々やVOCALOID楽曲で比較的多く使われています。ちなみに、「MOONLIGHT SHADOW」は小室哲哉の提供曲であり、小室哲哉の楽曲は小室進行だけでなくこのⅥm→Ⅴパターンも比較的多いと言われています。
3位 Ⅵm→Ⅱmパターン 6曲
- トワイライト -夕暮れ便り-
- 北ウイング
- SAND BEIGE -砂漠へ-
- ジプシー・クイーン
- BLONDE
- 今夜、流れ星
Ⅵm→Ⅱmと進むパターンが3位となりました。この進行は、哀愁漂う楽曲で多く使われており、70年代、80年代の日本の歌謡曲では頻繁に使われていました。近年のアイドルソングではメジャーコードから始まる楽曲や、王道進行の曲が増えたため相対的には少なくなっていますが、それでもAKB48関連でも使われるなど、多くの楽曲で使われています。「今夜、流れ星」以外はすべて80年代の楽曲です。
4位 Ⅵm→Ⅲパターン 5曲
- LIAR
- 原始、女は太陽だった
- Tokyo Rose
- 赤い花
- 初めて出逢った日のように
非ダイアトニックなコードであるⅢを含む楽曲が5位になりました。うち、後半の4曲は90年代以降の楽曲です。「ドミナントモーション」と言われるコード進行を逆からたどるもので、2つ目のⅢの響きが切ない印象を与えるコード進行です。
これで中森明菜のシングル曲で使われたコード進行の1位~4位まで、全て出だしはⅥm、すなわちマイナートニックコードから始まるコードであることはわかりました。水樹奈々で集計を行った時、マイナー調の楽曲が多かったことはありましたが、それでもここまで偏った結果になったのは他に例はありません。
5位 3曲のパターン
- Ⅱm→Ⅴパターン・・・「スローモーション」「セカンド・ラブ」「Days」
- Ⅱm→Ⅵmパターン・・・「少女A」「飾りじゃないのよ涙は」「TANGO NOIR」
- Ⅳ→Ⅴパターン(王道進行)・・・「サザン・ウインド」「I MISSED “THE SHOCK”」「帰省 ~Never Forget~」
3曲のパターンが3つありました。Ⅳ→Ⅴパターンは、多くのアーティストで1位か2位に来るほど人気のあるコード進行ですが、当ブログで同様の集計を始めていらい、初めて2位以内に入らないという結果になりました。Ⅱm→Ⅵmというパターンは、切ない印象ながら2小節目でいったん完結感を出すコード進行で、70年代くらいまでは比較的多く使われたコード進行ですが、最近の楽曲ではほとんど見ることがなくなったパターンです(乃木坂46の「バレッタ」がこの進行ですが、2010年以降のアイドル曲では大変珍しい進行です)。
2曲以下のパターン
- Ⅳ→Ⅲmパターン・・・「片想い」「とまどい」
- Ⅵm→Ⅲmパターン・・・「SOLITUDE」「Fin」
- Ⅰ→Ⅲmパターン・・・「Everlasting Love」
- Ⅰ→Ⅳパターン・・・「FIXER」
- Ⅰ→Ⅴパターン(カノン進行)・・・「夜のどこかで ~night shift~」
- Ⅳ→Ⅰパターン・・・「TATTOO」
- Ⅴ→Ⅰパターン・・・「難破船」
- Ⅴ→Ⅵmパターン・・・「Dear Friend」
- Ⅵm→Ⅰパターン・・・「unfixable」
- Ⅵm→Ⅴmパターン・・・「月華」
- Ⅵm→Ⅶパターン・・・「二人静」
2曲以下のコードは上記のようになりました。カノン進行やⅠ→Ⅳ、Ⅰ→Ⅲmといった、明るい表情を持つコード進行はわずか1曲ずつ、それも、楽曲のイメージが変わった90年代以降の曲しかありません。マイナートニックから始まる楽曲が多いのとは対照的です。
珍しいコード進行は、まずⅤ→Ⅵmの「Dear Friend」。ドミナントコードから始まるサビ自体が珍しく(Bメロ等なら珍しくはないです)、その中でもほとんどはⅤ→Ⅰと進むので、Ⅴ→Ⅵmという進行がサビの初めに登場する楽曲はほとんどないと言っていいでしょう。
また、「月華」のⅥm→Ⅴmや「二人静」のⅥm→Ⅶも、サビの最初としては極めて珍しいコード進行と言えます。いずれも2つ目のコードが非ダイアトニックなコードであり、インパクトのある響きになっています。
まとめ
中森明菜の全シングル曲のサビで使われたコード進行の傾向を解析しました。ほとんどの楽曲がマイナートニックから始まるコードであり、近年の多くのアーティストの楽曲がメジャーコードやサブドミナントコードから始まるのとは対照的な結果になりました。いかに「暗い」や「カッコいい」といったイメージの路線で売り出していたかという事が、楽曲のコード進行からも見て取ることができます。
今後も様々なアーティストで同様な集計を行っていきたいと思います。特に、80年代に人気を分け合った松田聖子について興味があります。楽曲のイメージから、おそらく中森明菜とは対照的な結果になるものと予想されます。近いうちに松田聖子についても集計を行いたいと思います。
2016/9/18 松田聖子も集計を行いました。予想通り、中森明菜とは対照的な結果になりましたので、興味があればこちらの記事もご覧ください。